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ドレス作りに夢中なので婚約破棄してください!  作者: 和泉


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第16話 ハンカチの男の子(1)

 口説きますと言われたが、その週の金曜日も、その次の金曜日もルーカスの態度は以前と変わらなかった。

 あれは夢だったのではないかと思うほどに。


「ソフィア、ちょっと」

「はーい」

 マティに呼ばれたソフィアは薔薇の刺繍を中断し、奥の部屋のソファーに座った。

 マティは綺麗な花のイラストが描かれた手紙をソフィアに手渡さずに遠くから見せる。


「ウィスロー公爵夫人からソフィアに依頼が来ている」

「依頼……ですか?」

「息子の卒業パーティ用のタキシード、そしてソフィアのドレスの製作依頼だ」

 何か聞いているか? とマティはソフィアに尋ねた。


「以前、ルーカス様に作ってほしいとは言われましたが、考えておいてくださいと言われただけでお返事は……」

 ソフィアが答えると、マティは大きく息を吐いた。


「費用は全部ウィスロー公爵持ち、期間も二年後と高条件。経験を積むにはこの上ない条件だが……。婚約、するのか?」

 思いもよらない質問にソフィアは驚いた。


「……婚約破棄したばかりで、父からも何も聞いていないのでわからない、です」

 貴族の娘に選択権はない。

 親がそうしなさいと言えば従うだけだ。

 いつか侯爵を継ぐ弟の助けになるように貴族同士の繋がりのためにどこかへ嫁ぐだけ。

 婚約破棄した傷物なので、後妻の可能性だってあり得る。


「……そうか」

 マティは手紙をテーブルに置くと、腕を組んでソファーの背もたれに身体を沈めた。


「依頼を受けようと思う。男の服は三ヶ月あれば作れる。それに成長期で今すぐ作っても着られなくなる。まずソフィアのドレスを一年かけて作る。……それでいいか?」

 自分のドレスを自分で……?


「で、でも卒業パーティには行かないのに」

 学園へ通っていないのに卒業パーティに出るのは変だ。

 それにニコラスとオリビアにも会いたくない。


「行かないのか? 卒業させてくれた親に感謝をするためのイベントだぞ」

 行った方がいいとアドバイスをくれるマティにソフィアの視線は泳いだ。


「すぐに決めなくていい。ただドレスは作る。着る・着ないは自由だ」

 ドレスを作らせてもらえるのは嬉しい。


 でも、ウィスロー公爵にお金を出していただいて良いのだろうか?

 ルーカスと婚約前提なのだろうか?

 婚約しなかったらドレスはどうなるのだろうか?

 スカートをギュッと握り、俯いてしまったソフィアを見たマティは、ソファーから起き上がり前のめりになった。


「ソフィア、俺の嫁になるか?」

 突然の言葉にソフィアは驚き、顔を上げた。


「ドレスを作って、もしウィスロー公爵に支払ってもらうのが心苦しい状態になったら、俺の嫁になるというのはどうだ? そうすれば支払わなくて済むだろう?」

「そ、そんな」

 揶揄われているのはわかっている。

 マティのような素敵な大人が子供の自分に求婚するはずがない。


「とりあえずデザインを自由に考えてみろ。作り方がわからなくても良い」

「ありがとうございます、マティさん」

 ドレスに挑戦しろと背中を押してくれているのだから本気にしちゃダメだ。

 ソフィアはソファーから立ち上がり、頑張りますとお辞儀をすると奥の部屋から作業場へと戻った。


 自由にデザインして良い。

 そう言われたソフィアは悩んでしまった。

 ふわふわ系? スラっと系?

 ソフィアはお店が閉まった後、たくさんのドレスが並ぶ店内へ降りた。

 どのドレスも綺麗。

 やっぱりマティは天才だ。


『俺の嫁になるか?』

 急に思い出し、ソフィアは真っ赤になる。

 冗談……だよね?

 ピンクのふわふわドレス。緑の妖艶なドレス。赤の煌びやかなドレス。

 金髪青眼の自分に似合うのは何色なのだろう?

 薄いピンクは似合わない。

 赤が似合うほど色気もない。

 緑も違う気がする。

 白を着るほど清楚でもない。


「ソフィアか?」

 急に聞こえた声にソフィアはビクッとした。

 マティはお風呂の後なのだろうか。髪が濡れていつもと雰囲気が違い、なんだかセクシーだ。


「どうだ? イメージは湧いたか?」

「色さえ決まらなくて」

 自分に似合う色がわからないと言いながらソフィアはたくさんのドレスの方を見た。


「デザインする時は考えすぎてはダメだ。悩んだらもうその日はおしまい。悩んだドレスは美しくできない」

 マティはソフィアの頬に両手を添え、上を向かせて目を覗き込む。


「綺麗な色だ」

 マティに見つめられ、どうしたらよいかわからないソフィアは固まった。

 目の色? 綺麗? もしかして青が似合うってこと?


「失敗したっていい。たくさん描いてみればいい」

 一枚目からうまくデザインが描けるのなら、俺の今までの苦労は何だとマティは肩をすくめる。


「ソフィアらしいデザインを待っているよ」

 マティはソフィアのおでこに口づけをすると、何事もなかったようにそのまま階段を上がって行ってしまった。

 ……今、口づけされた……よね?

 でも、おでこだから子供にする感じ?

 でも口づけ? なんで?


『俺の嫁になるか?』

 違う、違う、誤解しちゃダメ。

 ソフィアはおでこを押さえながら真っ赤な顔のまま自分の部屋へと戻った。

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