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決壊


 月が顔を覗かせるふけった夜に公園のベンチで横並びに座り語らう二人の女がいる。



 「ねえ、咲希。私まさとと結ばれることになったの」



 親友として報告しておきたくて、親の次に報告したことになる。



 とうの咲希は眉を八の字にしてから口元を着たくゆい結んで、後に涙を堪た顔をして……酷く不恰好な作り物だと分かる笑顔をした。



 

 口を開けたまま時が止まったかの様にビタっと固まって動けないでいる。



 何故そんな顔をするのか聞こうと思ったが、遅かった。



 「ごめんね、祝福してあげられればよかったんだけど……あぁっ!ぅうっ!」



 ダムが決壊したかの様に溢れ出した涙を流し嗚咽する親友の姿に二の句を告げない。




 察してしまった分かってしまった、つめがくいこむほどにぐっと手のひらを握り歯を食いしばり鋭かなら目つきを抑えようとしても鋭くなる。



 「どうして何もいってくれなかったの?私は咲希の為なら出来る限りしてあげられた!!」



 抑えようとしたがムカムカして息が詰まりそうで最後は語気が荒くなっている。




 「莉沙に幸せになって欲しくってぇぇ!うわぁぁぁんっっ!!」



 子供の様に目がしらに両の小指を添えて泣きじゃくるので呆気に取られてしまい逆に冷静になってしまった。



 本当にこの親友はどうしようもない程に私に甘い。しかしそれも現状を見るに私の予想した以上だった様だ。



 「咲希のバカ!親友を不幸にして幸福になったら私は親友失格になるじゃないの!!」




 恥の多い人生など真っ平御免であるのでもって、親友が不幸ならそれは自分も不幸であると考えている。



 少なくとも、親友に遠慮されたという事実は莉沙の矜持に傷をつけるにたるもの。



 だから、咲希の本心を語ってもらいたいと口を開こうとしたその時。



 「あれっ?莉沙と咲希じゃん!どしたん話……聞きましょうか?」



 下心丸出しのT○itterに生息する生物の様な語り掛けキャンセルをしてなんとか場の雰囲気を察して合わせる努力は素晴らしいが、残念イケメンに変わりはないようだ……。




 咲希の顔を見てまさとも表情を固くしていく。ため息をこれでもかと大きく誇張して吐く。



 「はぁーー(クソデカため息)、あんた覚えときなさいよ」


 「ヒッ!ご、ごめんなさいっ!!


 何故だろうか、熟練した印象を受けるやり取り。


 まさとさんおいたわしや……。



 咲希は目を丸くしてまさとの登場から何も言わずにじっと見て固まっている。咲希をほったらかしていたことに気づき今は残念イケメンの相手をしている場合ではなかった。残念イケメンより傷ついた親友のケアが最優先だ。霧散してしまった熱い想いをかき集め口を開こうとした。



 (咲希になんていうか忘れちゃったじゃないの!)



 焦って思い出そうとすればする程言葉が掌で水を掬う様にこぼれ落ち形にならない。そうこうしているまに咲希は笑いっていた、涙を流しているが顔色がよくいつもの活発な雰囲気で笑っていた。



 「アハっ!まさとは女の人に弱いね!あははっ!」



 莉沙としては咲希が頭でもあったのではないかと情緒の乱高下にもやもやとしたわだかまりがある。



 「はぁ〜〜、あんた達二人を見てたらお似合いすぎてどうぞお幸せにってなっちゃったわ。悩んでたのが不思議なくらいスッキリした〜〜」



 言いながら背伸びしてぐーーっと気持ちよさそうに……あっ!脇腹がチラッと見えた、まだ上がる……まだ……結構際どいぞ?!となればすかさず嫁のチェックが入る!まさとは『星が綺麗だなーー』とか言いながら空を見上げてサムズアップしている。


 色々不安がある関係性だがさておき。


 「どったのふたりとも」


 ひょこっと軽い感じで莉沙の頭右横から顔を覗かせる咲希。


 「いーやなんでもない、それより咲希こそ大丈夫か?何があったんだ?」



 おふざけを引っ込めて真面目な面持ちで両目を逸らさず咲希をしっかりと見据え言う。



 (カッコいい)

 


 あっさり絆される莉沙も大概だが、返す咲希の艶やかな大人びた美しさはそのイケメンオーラを吹き飛ばす程でまさとも目を大きく見開いた。



 「ひ・み・つ!知りたければ我が親友から聞けば良い!それとも乙女の秘密あばいちゃう?」



 「それはご無体な」



 言いながら両手をあげて降参のポーズ、それを見て莉沙も流石に今は言うべきではない、お互いに感情に整理をつけてからにしなければいらぬ疑いをまさとに持たれそうだと考えた。



 (まだ、私も未消化で上手く説明できる自身がないわ)



 そう考え納得していたところにナイフが放たれた。



 「あっ、ちなみにどしたんは普通に無理。鳥肌立ったから二度と口にしないでね」


 

 「ぐっ!!」



 胸を抑えてうずくまるまさと、莉沙も自業自得だと背中を撫でたりさすったりもしない。



 「莉沙!あれは冗談だからな!」


 「面白くなかったわ」



 ツンと、顔を背けられ痛烈なダメ出しにまさとは愕然とした表情になりさらにはだんだん青くなってきた。



 すわ離縁か!と大学校内新聞サークルで一大ニュースとして一面を飾ることになるのかと想像が膨らんでいるまさとへ二人の美女が振り返る。



 顔を見合わせて頷き合い、いたずらを仕掛ける小学生の様な悪い顔をして言い放つ。



 「「女たらし」」



 二人の美女から揃って半目を向けられてまさとの困惑は深まるばかり頭の上に「?」が浮かんでいるのがみてとれる。



 「ちょっと待ってくれ!オカンみたいな説教受けてから友達の距離感保つ様にしてるぞ??!」



 「あれ?今オカンって言った?ねえ今言ったよね?莉沙も聞こえたよね?」



 グリンッと莉沙へ顔を向ければ『わ〜〜星が綺麗だな〜〜』と言っている。



 ちなみに星は全く見えない。



 咲希は諦めた様に首ヤレヤレと左右にふり。



 「まさともやるわね」


 

 「ふふっ、じゃあ3人で帰りましょ!」



 「久しぶりだな!」



 「うん!」



 3人の元気な声を月だけが聞いていた。



 


 



 

 






 



 

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