咲希
「どうしよう」
最近ぼーっとしては頭を振ってぶんぶん。
「ダメよ、だめだめ」
これには日○エレ○テル連合もにっこりな言い方をしてしまっている。
頭にちらついているのはまさとの顔なんともないふりをして誤魔化すのも最近喉に小骨が刺さって胸もつかえる気持ち。
どうしたものかと悩みは増していくばかり。
このままでは心が引っ張られて避けてしまいそう。
「なんとかしなければ……」
だから思いついたことやってこう。
そう決めた矢先にふりふりポニーテールを揺らし、外行きの服を着て口角の上がったまま歩いていく莉沙の姿を両目で捉えた。
これはデートだ!とビビッとアラートが反応した。匂う匂うなあ。
「よし決めた!尾行よ」
誰とデートするのか察しはついている、しかし身体の痒みからじっとしていることも出来なかった。
「ママースパイごっこしてる〜〜!」
「しっ!見ちゃダメよ」
子供の教育に悪い認定される咲希さん……。
それもそう、電柱から半身で顔を覗かせている様は不審者そのもの。
ちょうど立ち尽くす莉沙を見ているところ。
(初デート嬉しすぎて早くきすぎちゃったか)
流石親友というべきかドンピシャである。
まさとも後ろからやってきて互いに鳩が豆鉄砲くったような顔をしてかたまっている。
なんだかんだ似たもの同士の二人だなと思う。
そのまままさとに抱きついた光景をみてちくりと胸に痛みがあった。
呼吸も震えて息が干上がってくる。
ドス黒い鉛が腹の底に溜まった気がした。
無言で背を向けて人混みの中一度も振り返らずもときたみちをもどっていったのだった。