お出かけの支度
”今日は待ちに待った水族館の日だ!やったあ〜〜,,を表すようにポニーテールもふりっふりっ!
ポニーテールの波打つリズムに合わせてお出かけ前の支度も進んでいる。お祭りに行く子供のような明るい表情で元気いっぱいだ。
「そろそろかな〜〜♪」
莉沙は待てをする犬の如くもう今すぐにでも餌に飛び付かんとする心境で時計を見てしまった。
「まだ、これだけ……」
じょうきして赤くなった頬はいっぺんして頬骨の浮き出るげっそりした顔へ変わった。
先程までのキラキラして花が咲くエフェクトは消え去り、縦線が上から下へ伸びている状況。
沸々と沸騰したものが腹からグワっと昇ってきて身体を突き動かされるまま家をでていった。
「ついちゃった……後1時間もあるし」
立ち尽くす莉沙の後ろから声がかかる。
「あれ?早いな」
まさとの声だった。待ち人の声を聞き逃すはずもなくみやれば目を見開いて驚きをあらわにしている。
一瞬でほおをじょうきさして幸せいっぱいの乙女へと変身、そのまままさとに抱きついた。
その光景をみて周りの通りがかりも暖かく目元を緩めて二人へと視線を送っている。
その状況にまさとが耐えられなくなり耳まで真っ赤になって恥ずかしがっている。
「り、莉沙周りの視線もあるし……」
「あ、ごめんなさい!つい私ったら」
そのままバッ!と離れ耳まで赤く染めて恥じらう。
「仲良しさんだー!」
「そうね〜〜」
見知らぬ子供が指差しながらそういって、周りの通りがかりもうんうんと初々しさにほおを緩めながら頷く。
「行きましょう!」
「そうだな!」
生暖かい視線を背中に突き刺しながらそそくさとその場を去っていく二人。
視線の感じないところまで来たところで二人はゆっくりとだが『最近どんなことハマってる?』から口数も増えて心地よいラリーと共にだんだん良い雰囲気になってきた。
《流れでいけるのでは?》とピンと頭で電流が流れ口元を引き結び口にした。
「手をつなぎましょう?」
「え、ああ繋いでなかったか」
まさとはキョトンとした顔をして足を止めてからなんといこともなく自然に莉沙の手を取った。
流石のリード力だと後方腕組み親友もそういっているに違いない。
話は戻り。
その自然さからなす術もなく手を繋がれ肩を少し跳ね上げさせ一瞬驚いたものの段々と手の温もりが心地よく胸も温かく瞳も一層輝く。
どこからどうみてもラブラブなカップルで、周りを見ると同じ様なカップルが沢山いた。
一抹の淋しさから解放されて幸せそうな人を見ても心がちくっとしない。
幸せってこういうことかと腑に落ちたのだった。