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まさと



 

 歯磨きと水を飲んで着替える。靴を履き玄関を出た。



 朝日の中を走ると気分が良くなる。モヤモヤした気持ちも晴れた空のように変わっていく。



 胸の高鳴りに任せて今日は公園を走ってみよう、そんな気分だ。

 

 

 

 公園に着くと1人走っている女が居た。ショートパンツのランニングウェアを着た年の近い女が綺麗なフォームで走っていた。食い入るようにその人を少しばかり見ていた。


 

 でも失礼だと考える理性で走るかと視線を外したその時胸にちくりと感じた。そのまま無視した、したかったのにその人はズルっと勢いよくこけていた。それはもう、バタンキューよろしくポケットのハンカチがあるので貸そうと思った。近付いて声をかけると、一瞬体が跳ね上がった後誤魔化したいのだろうか変な顔をしていた。



 心臓がまた勢いよく脈打った。



 普段なら間違いなく変な人だと思うだろう。



 しかし、不思議なことに俺の胸は高鳴ったままなのだ。


 

 雑談話もはずみどうやら同じ大学に通っているよう。


 

 これもなにかの縁なのか、運命的ななにかを感じけたたましく頭の中で憧憬を鳴らす。



 気になる、仲良くなりたい、もっと知りたい。

 


 だけど、時間は嘘みたいに早く過ぎ去っていって、気付けば綺麗なフォームで走り去っていく背中をぼんやり見つめていたのだった。



 ☆☆☆☆☆


 

 莉沙と出会った後いつもなら走っているところだが、俺はいつもより早く切り上げて家に着いた。玄関を開けて靴を脱いで台所で水を飲み一息つく。

 そのまま、目を閉じると朝出会った莉沙の顔が瞼に蘇る。



 

 感じいること1分程。



 「はっ、なにやってんだ」


 

 自分らしくもなく女々しくなっていた事に気づいて思わず自嘲してしまう。


 


 でも本当にどうしてしまったのだろうか、なんとなく自分が今まで抱いたことのない強い衝動だと分かっている。



 しかし、この胸の高鳴りは、頭の中で響く憧憬は一体なんなのか。


 それがわからない。


 

 「まあ、分からなくても不快じゃない」



 そう、よく分からない自分の状態に困惑しているのだが、不快感はなく、むしろ幸福でさえある。

 幸福そう幸福で―――

 「―――これって、もしかすると・・・・」

 


 恋ではないのか、はたと思い至る。

 そう自分は恋しているのだ。誰へ?明白だ、朝出会った莉沙へ。



 

 軽薄とも思いこそすれど、恋していると一度認めてしまえば納得と安堵が込み上げてくる。



 どうやら俺こと『柏木 まさと』は見事恋に落ちてしまったらしい。


 俺はようやく自分自身に起こっている事を理解したのだった。

 




 

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