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最悪の出会い

「ねえ!私の服どこ?」


「所詮家事やるだけの人でしょ?私たちにこれ以上干渉して来ないで。」


「晩御飯手伝おっか?」


「てめーにやってもらう筋合いねーから。」


「それくらい自分でやるよ。」


現役女子高生アイドルの寮母になったは良いけど…

既に先行きが不安なんだが。


「寮母…?」

「そうそう。今1番割の良いバイトがこれでさー。どうかなって。家事生かした仕事したいって言ってたじゃん。」


佐藤蓮、高校1年生。絶賛バイト探し中。

家事が得意だから、放課後や土日だけでできる家政婦系の仕事を探していた時に、姉の友人から寮母を紹介された。

なんでも、学生5人の住む寮だとの事で。

同居が必須条件らしいけど、雇い主も高校生だから朝、放課後、土日で働けば良いらしい。

日給7000円。

こんな割のいい仕事やらないわけがない。

「ぜひ、よろしくお願いします。」

高校生なら俺と同年代だ。実質ルームシェアだし、せっかくたったら仲良くなりたい。

今までまともな友達もいなかったから夜のあれそれにも憧れあるし、一緒に住むからできるかもしれないな。

木曜日の放課後、そんなワクワクした気持ちで俺は制服のままトランクいっぱいの荷物を持って新しい仕事場となる家へ向かった。

寮っていうからアパートみたいなのを想像してたけど、見た感じ綺麗な一軒家だ。

俺はドキドキしながらインターホンを鳴らす。

しかし反応は無い。

もしかして誰もいないのか?

紹介してくれた姉の友人に一回電話してみるか。

こういう時家の前で待ってたら不審者だと思われかねないし。


「何してんの…ここ私の家だけど…」


電話をしようとスマホを鞄から探していた時、正面から声が聞こえた。

顔を上げてみると、あどけない雰囲気で可愛らしい顔立ちをした小柄な女子が立っていた。目はくりっと丸く大きく、長い髪を下の方でふたつにまとめている。


「何?待ち伏せ?家特定されてる…?てか制服一緒じゃん…。同じ高校…?」


女子はぶつぶつ独り言を呟いている。

俺、家間違えたのか?


「どうやってここ見つけたの。こんな事して迷惑だと思わないの?制服着てるから高校生だよね。学生証出して、事務所に突き出すから。」


俺があたふたしている間にも女子は幼い顔に似合わずハキハキと早口で私に捲し立てた。

事務所?突き出す?どういう事?

全く頭は理解が追いついていないけど、あまりの剣幕に恐怖を感じそのまま俺は女子に学生証を渡した。

自分よりも一回りほど背の小さい女子にここまでびびるとは我ながら情けない。

スマホを耳に当てて誰かに電話をかけようとしているその女子は、学生証を荒っぽく奪い取り、険しい顔をしながらまじまじと見つめた。

え、もしかしてなんかやばいやつか…?

犯罪者と間違われてる?


「そうです。家の前に男子高校生がいて…早速寮バレてるんですよ…。学生証確認しました。佐藤蓮って人です…ってえ?女の子じゃないんですか?!」


恐らく事務所であろう場所に眉間に皺を寄せながら電話をかけていた女子は驚いたように急に大声を出した。

怖い。

何話してるんだよ。本当に。

電話が終わったのか、女子はスマホを耳から下ろして、無言で俺に学生証を返してきた。そして次の瞬間、全力で頭を下げた。


「ごめんなさい!」


…え?


「私、すっかり待ち伏せしてるファンだと…。寮母さんだったんだね。」

「え?」

「取り敢えず上がって。」

「はぁ…」


待ち伏せ?ファン?

怒られたかと思えば謝られ、思考が追いつかない。

言われるがままに俺は女子と家の中に入った。


「私、この家に住んでる坂上祐希。飛翔高校の1年生で、Princessってアイドルグループでアイドルやってるんだけど…」

「さ、佐藤蓮です…。飛翔高校1年。」

「同じ高校だね。」

「そうですね…?」


目の前にいる坂上さんの顔を俺はもう一度しっかりと見てみた。うん。確かにアイドルなだけあって整った顔をしている。だから、同じ高校なら知らないはずないんが…。こんな奴いた記憶がない。何かしら噂になってていいはずなのに。


「私、メンバーと一緒に明日転校する予定なんだ。昨日引っ越してきて、それで一緒に住む事になって。」

「はぁ…」


俺の疑問が筒抜けだったのか坂上さんが答えてくれた。

なるほど、転校生。だから知らなかったんだな。


「で、上がってもらってなんだけど佐藤くん。」

「はい」

「帰ってくれない?」

「え?」

「さすがに女子アイドルの身の回りの世話、男子に頼めないよ。ただでさえファンってそういうのに敏感だからさ。事務所の人には私から言っとくよ。ごめんね。なんか。」


そうして俺は坂上さんに背中を押されて玄関から外に押し出された。


「じゃあ、また学校で」


坂上さんはそう言って扉を閉めた。

えぇ…。

なんだったんだ一体…。

ていうか、女子の寮の寮母?しかもアイドル?

てっきり男の世話をするもんだと思ってたんだけど…。

色々情報が多すぎて、玄関でフリーズしてしまった。

そうしている間に、また声が聞こえる。


「何?男?」

「同じ高校じゃん」

「ストーカーじゃねーの」

「でかいトランク持ってるよ」


今度は4人。ゆっくり顔を上げると、4人のうちの1人と目が合った。

さっき坂上さんが言ってたメンバーだろうか。

左から緩くウェーブのかかったロングヘアのギャル(可愛い)、こんなに瞳がキラキラしていて良いのかいや良いわけがない、そんな訳の分からない事を思ってしまうほどキラキラした目を持つ明らかに陽属性の女子(可愛い)、地味目の顔だが整ってはいるヤンキー(可愛い)、飛び抜けて背が高くキリッとした目が特徴のショートカット(可愛い)。

どうしよう。囲まれてる。


「なにしてるの、こんなところで。」


そのうちギャルが俺と目を合わせながら聞いてきた。


ここははっきり答えておかないと、さっきみたいに不審者と間違われたら困る。

俺は意を決して、事の始終を4人に話した。


「寮母さんって男の人だったんだ。」


ギャルは肩に手を当てて驚く。

見た目はギャルだが所作はどこか上品で言葉遣いも柔らかい。


「とりあえず中入ってもらおうよ」


陽キャ女子は、しれっと俺のトランクを持った。


「でも、ゆうちゃんに追い出されたんでしょ」


背の高い女子は中に入ろうとする陽キャ女子を静止する。

ヤンキーは訝しげに俺を見ていた。


「このまま追い返すのも可哀想じゃん。この人だって仕事で来てんだから。中入ろう。」


そんな状況で陽キャ女子は静止を振り切って中に入った。

背の高い女子はやれやれ、と言った顔で続いて中に入る。

ヤンキーもそれに続く。

呆然と立ち尽くす俺の背中をギャルは優しく叩き、


「どうしたの?入らないの?」


と聞いてくれた。

いや、さっき追い出されたところだし…。


「入ろうよ。」


脳内で言い訳する俺をよそに、ギャルは俺の背中を押し、無理やり中に入れた。

さっきは無理矢理追い出され、今度は無理矢理入れられ…。


中に入ると、坂上さんが気まずそうな顔で俺の方を見ていた。


「佐藤さん、帰ってって言わなかった?」


怖い。


「まあまあ、そんなカリカリせずにさ。私たちが入ってって言ったんだよね?」


そんな坂上さんに対して、ギャルがフォローしてくれる。


「荷物ここで良い?置くよ」


荷物を運んでくれた陽キャ女子が俺が反応するよりも先に荷物を置いたところで、ギャルに座るように促され、俺はなりゆきで椅子に座った。


正面には綺麗な顔をした4人。遅れて陽キャ女子が加わる。くそ、顔面偏差値が高いな…。

左には坂上さん、真ん中にはギャル、右側にはヤンキーが座っていて、その後ろに陽キャ女子と背の高い女子が立っていた。


「とりあえず自己紹介しようか。」


ギャルの一言で自己紹介タイムが始まった。







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