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第二話 危うい新米ちゃん

「お疲れしたー」


 ノリ軽いPのぞんざいな挨拶もそこそこに、吾輩は楽屋へ急いだ。吾輩は早く、弁当が食べたいのだ。もちろん特注である。悪魔……とりわけ吾輩は鰻が好物なのだ。従って局弁はずえったい鰻弁当。それも悪魔門屋(でいもんや)の特上鰻飯殿下仕様御膳弁当一択。これしかないのである。なのでとにかく一刻も早く、誰にも逢わずに楽屋へ……と思ったら、おろっ、誰か吾輩を楽屋待ちしておる。


 リクルートスーツを着た若い女の子である。それにしてもふわっふわの髪の毛であるな。ところどころ飛び出している。もしや、あれがよく言われるアホ毛と言うやつでわ。


「サンダー日暮閣下ですよねっ!デビュー前からファンでした!」


 んなわけねえええだろ!?


 危うくキャラ崩壊するところだった。吾輩が地上デビューしたのいつだと思っておる、いつだと。五万三千年前には、お前なんか生まれる予定すら出てないわ。


「んー君はどこから入ってきたのかなあ。ここはねえ、立ち入り禁止区域なんだけど……」


 ったくこの頃は痛いワンフーと言うのも、ネット上にしかいなくなったが、まだこう言う押しかけ系みたいなのがおるのだな。仕方がない、吾輩も神対応を心がけるしかない。なるべく、刺激せずに話しかけようと心がけたら、


「おっ、お初にお目にかかります!わたしっ、実は今日からお天気局へ配属になりましたハレノチ・アマネと申しますもので!」

「ん、なんだ新人さん?」


 吾輩の前に、社員のパスを見せつけてくるハレノチ・アマネ。や、近いって。だが、分かったぞ。この子、新人の『お天気ちゃん』である。


「そうか、吾輩のところへ一人で挨拶に来るとは良い度胸だ。誉めてやろう。お天気ちゃんの仕事は大変かね?」

「はいっ、まだ全然よく分かってないですけど、頑張りがいはあるです!」


 にこっ、と、天使のスマイルを見せる新人ちゃん。ま、筋は悪くない。天気局の新人が選ばれて務める『お天気ちゃん』は、下界に分かりやすく、次のお天気を報せる重要なお仕事なのである。


「でー……ですねえ!あのっ、ごめんなさい!さっきの閣下の出番、わたしのミスのせいなんです!」

「ほほう……」


 なるほど、吾輩は反応するより、納得してしまった。吾輩たち災害担当は、お天気局の失敗をカバーする仕事なのである。その日のお天気の進行になんらかの問題があったとき、次のお天気のタイムテーブルを組み直すための時間を作るために、吾輩たちは呼び出される仕組みになっておるのだ。


「そうか、新米ちゃんよ。謝ることはない。吾輩たち悪魔にとって、人間たちが困ると言うことはむしろ、喜ばしいことであるからな。つまらんことは気にせず、どんどんミスすると良い……いや、悪い」

「はいっ、逆に励まして下さってありがとうございます!」

 素直に頭を下げるお天気ちゃん。ふふ、中々、真っ直ぐな新米ちゃんではないか。

「今のうちにミスをしなくては後が困るからなあ。新米の貴様のうちはまだいい。が、後になるとだんだん責任が大きくなって失敗しづらくなるものだ。ま、そのためにだなあ、今は先輩の胸を借りるつもりで失敗してもバリバリ仕事してだなあ……ってあれ……?」


 吾輩がありがたい言葉をかけてやろうと思ったときには、新米ちゃんはいなかった。遥か遠くで、手を振っている。


「閣下ぁ、わたしっ、これからもどんどんミスしますね!」

「いや、だからそおゆうことじゃなくって……あっ、行っちまった」


 うーむ、現代っ子である。やたら笑顔だけはキマっておった。それにしても吾輩、説教臭かったかなあ。















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