そこの一人称小説に言いたいことがある!
どうも、ギリシャ文字正義の五番目いぷしろんです。
正義なので勇者よろしく悪を成敗していきたいと思いますよろしくお願いします。
……冗談ですよ?
私は普段は一人称で現実ラブコメを執筆しているのですが、勉強のためにランキング上位の作品を漁りにいったりもします。まぁ、するとだいたいが一人称なんですね。理由は単純。書きやすいからです。私も書きやすいから一人称を採用しています。
ファンタジーだと世界観を語れる三人称も書きやすかったりすると思うのですが、現実ラブコメだとそんなこともないですからね。
さて、ここで本題に入るのですが、読み進めていると色々と疑問に思うことがあったりします。たいていの場合はちゃんと調べて、自分の成長の糧にするのですが、もうね、ひとつだけどうしても解せないものがあるんですよ。しかもよく出てくる。
それが何かっていうとですね。
ずばり「相手のセリフがあってそれを聞こえないとか言ってるやつ」です。
はい具体例。謎に気合が入ってますが気にしないでください。
彩夏の頭に手が伸びる。そして、はっと我に返って急いで引っ込めた。
ちらりと彩夏を見ると、何やら複雑そうな目で僕を見つめていた。
「触ってもいいのに……」
彩夏の口が小さく動いたようにも見えたけど、残念ながら僕には何を言っているのかわからなかった。おおかた僕に対する非難だろう。
はい。こんな感じのやつです。
これですね、本当に毎回毎回ひっかかりを覚えるんですよ。「彩夏」のセリフは「僕」に聞こえてないはずなのに書かれている。
読者が実際に「僕」になったときに知りえる情報しか表現してはダメなのではないでしょうか。一人称ですから、視点人物が実際に聞こえてないセリフは書いてはいけないのではないでしょうか。
いえ、もちろん“こんなん小説じゃねえ!”なんて言うつもりは毛頭ありません。ただ私は猛烈にこのことが気になるのです。
ちょっと言語化は難しいのですが、なんというか、ズルいと感じてしまいます。作者が物語を操っている、とでも言えばいいでしょうか。入れたいことを無理やり入れたみたいに感じるのです。
それに、「触ってもいいのに……」を「――――」のように変えても読者が意味を推察できるようにキャラを立てていれば、このようなことはしなくてもいいと思うのです。そのようなところもラブコメの面白さなのにそれを崩している感じすらしました。
では、このようなやつはどうでしょうか。
はい具体例。使いまわしです。
彩夏の頭に手が伸びる。そして、はっと我に返って急いで引っ込めた。
ちらりと彩夏を見ると、何やら複雑そうな目で僕を見つめていた。
「触ってもいいのに……」
……残念ながら僕には何を言っているのかわからなかった。わからないったらわからなかった。おおかた僕に対する非難だろう。うん。そうに違いない。
これは字面だけならさっきのと似てますが違いますね。本当は聞こえているけどそれを認めたくない、ということです。
これは全然いいです!
私はこういうのが一人称小説の醍醐味だと思います。事実と異なることを書いてもそれは視点人物のことなので、考察や想像、妄想の幅が広がるだけです。
あ、でもひとつだけ言うとすれば、ミスリードさせたいとかでないのならば読者が絶対にわかるように誇張とかされているとありがたいですけどね。
さて、二つの具体例ではだいぶ意味が違いますが、ともかく私が言いたいのは、「一人称小説では視点人物が知りうることしか書いてはいけない」ということです。
そうでないと、物語に水が差された気持ちになりませんか?