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獣は己を知り、己に成る  作者: 大饗ぬる
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chapter 2 爪研ぎはマーキングの一種③

 もう少しで迷羽さんとの約束の一週間が過ぎそうです。

 迷羽さんと一緒に暮らしていることで自分のことを少し好きになることが出来ました。迷羽さんは良いことも悪いこともはっきりと言ってくれるので疑わなくてすむからかもしれません。褒め言葉も迷羽さんの言うことならちゃんと信じられます。


 でもやっぱり、一週間も学校を休むことになったのは心配でした。授業に遅れるんじゃないかとか両親にはなんて説明したんだろうとか。でも私一人いないところで誰も困ることはないと思うと悲しい反面、安心も出来ました。

 勉強のことは悩む必要はあまりないことがわかりました。授業を聞いていなさそうな迷羽さんなのに、私が勉強でわからないところや、休んでる間の勉強を教えてくれたりしました。多分、教えてくれていることはでたらめじゃなくあっているんだと思います。


 迷羽さんはひょっとしたら私やクラスメイトや先生が思うほど勉強が出来ないわけじゃないのかもしれません。それ以上に迷羽さんは頭の回転が速く、今ではとても賢い人なんだと思うようになりました。ただ私の頭では迷羽さんの聡明さをうまく表現できません。それが残念です。私はますます迷羽さんのような人間になりたいと憧れるようになりました。

 教育熱心な両親には勉強合宿があると先生になりすまして電話したそうです。わざわざそれっぽいプリントまで作って送ったそうです。ちゃんと話を合わせるようにと注意されました。それよりも、いつ私の家の電話番号や住所を知ったのか……、迷羽さんなら何でもできそうな気がします。


 実は最初は迷羽さんの言ったようなプランでしかも一週間で変われるわけがないと懐疑的なところがありました。自分で自覚できるほど変わっていってることに一日目にすでに気づき始め、二日目も三日目も自分に変化があるのが分かり、疑ってしまったのを悪かったと思い直しました。

 そんなに日数が経ったわけじゃないのに自分の話し方も随分と変わった気がしています。前よりも迷羽さんの目を見て話せるようになってきたと思いますし、口を大きく開けて喋れるようにもなってきましたし、言いたいことも伝えられるようになってきました。

 これも運動やお化粧の効果なのかもしれません。軽い運動をすることでダイエット効果も少し期待できるし、何よりもストレスが無理なく解消されて良い精神状態でいられる気がします。迷羽さんの受け売りですが。

 お化粧をしたことで人に見られるのがほんの少し怖くなくなりました。これがきっと自分に自信を持てるようになったことの表れなんだと思います。ぼさぼさで伸びっぱなしだった髪を切ったことで気分も雰囲気も明るくなったと自分でも感じます。それもプラスに働いてるのかもしれません。


「京姫、今日はもう寝ようか」

「はい」

「おやすみ」

「おやすみなさい」


 まだ眠れそうになかった私は迷羽さんのことを考えました。どうして迷羽さんは悪く見られることが多いんだろう。それにこうして一緒に暮らすことになっても迷羽さんは距離をとっている感じがします。ずっと外から人のつながりを見ているだけだった私はそういうことには敏感だったりするので、そんな私から見た迷羽さんは寂しそうに見えるんです。そういえば迷羽さんが着替えているところって見たことないな、いつも私より早く起きていたりしてもう着替えていたりするから……。なん……で……かな? ………………。


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