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獣は己を知り、己に成る  作者: 大饗ぬる
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chapter 3 獣の餌食になった末路③

 病院って真っ白。それに退屈。待ち時間が長すぎ。また思考に逃げちゃう時間が出来ちゃうじゃないの。ってもう考え始めちゃってるんだけど。

 たまにテレビで見たりすることがあったりするアメリカの医療ドラマとかホラー映画とかで病院って真っ赤なイメージだっただけに拍子抜け。わかってるけどさ、そんなことないってことは。病院やホラーで赤っていえば血の色なわけだし、血に染まった病院が普通にあったら怖すぎるし。でも、壁とか天井の色を他の色とか柄にしてもいいと思わない? 不謹慎? どうして? 部屋のすべての色が白だとヒトを狂わせると思うけど……、ううん、こんなんじゃ問題から上手く逃避できないみたい。


 うーん……勢い余って来てみたものの、あたしの名前は呼ばれませんようになんて可愛いこと考えちゃってる。何思ってんだろ、そんなら来た意味ねーじゃん。バカだったわ。そんなこと思うぐらいなら京姫に付き添ってやれってんだ。京姫、うまくいってるかなぁ。初日は大丈夫だと確信していたから一人で行かせたんだけどもさ。

 プロデュースなんてやらなきゃよかったかな、ゴメン、京姫。

 あたし、あの時は、何かこの世に傷つけておきたくて、残しておきたいと思ってたから。あんたを使っちゃったよ。京姫には言えないなぁ、こんなこと。京姫のイメージのあたしはきっと自信に溢れてかっこいい存在だろうしね。自意識過剰な訳じゃなくちゃんと判断してるつもり。そう見られるように演じて成りきっちゃってる部分があるから。人の記憶に残る自分でいたい。

 叶里奈に応じて屋上にわざわざいったのもそういうところがあったからだと自分でそう分析してる。叶里奈に対してキス、したのも、嫌われるっていうカタチでいいから、今のあたしを覚えといて欲しかったから、それに……って!


「貴様は!」

「はぁ。久しぶりにあったお兄様に向かってお前は……。元気?」

「愛情溢れてああなっただけですー。それより病院で元気? なんて聞くかフツー」


 此処におわすお方は何を隠そう我らが兄貴です。見るからにモテそうな外見で、バンドで歌ってる時とかとのギャップが多すぎるのが玉に瑕なお兄様です。青く染めた髪を今日は一つに括って、病院でも変わらず蒼のカラコンを入れているバカな兄貴です。バンド以外であたしの前に姿表すな! 汚れる! あたしの中のイメージが汚れる。兄貴の前だと調子狂うんだよなぁ、気を緩めないようにしないと素に近くなる。って、本当は兄貴にお世話になりっぱなしで、相談にものってもらってたりして頼りがいある身内なんだけどね。兄貴がいなかったらあたしはここにいないだろうから……。でも、素直になれないお年頃っていうか。


「ここの看護婦さん、可愛い娘多いって知ってた?」

 こういうところがね。

「知ってるよ。初日にチェック入れた。兄貴こそなんでここに?」

「ちょっとレコーディングで違和感感じてさ、診てもらいにね」

「ま、兄貴ボーカルだししかたないと思うけどね。ポリープ? あれ、そういえば……今日は、ええとあの女の人は……」

「カオリか? フってやった」

「ふられちゃったか、寂しいヤツ」

「なんだと、お前こそ恋人は?」

「……できると思う? 空夜兄は」

「あ、お前呼ばれてないか? へー、迷羽『カヨ』ね。お前の名前便利だな~。それとコレ、俺の携帯番号。プライベート専用に新しく契約したからさ」

 右手に番号が書かれているらしいメモを握らされる。

「さんきゅ。また電話するから。あ、こっちのはそん時教える、あたしの方も番号変わったからさ」


 兄貴は片手をあげて、ナースを――見つけると一目散に近づき――ナンパしに行った。確かにあの人ほんわかなごみ系でかわいいよなぁ……じゃなくて、あたしも呼ばれていたわけだしいかなきゃ。いい加減、自分、見つけないと。

 診察室は思っていたよりは白くない。パソコンの画面が青いからかな、ぬいぐるみがあるからなかな。なんで今日はこんなに白いか白くないかが気になるんだろ。


「今日は確か前の検査の結果を聞きにきたんだったね」

「はい」

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