表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣は己を知り、己に成る  作者: 大饗ぬる
1/16

chapter 0

 空の色をいつから思い出せなくなったのだろうか。

 冷たい鉄格子から入る僅かな隙間に向かって、吠える吠える吠える。

 咆哮は誰にも届かず、闇の空間へと吸い込まれていく。だが、それでいいのだ。

 あの優しく、純粋な少女に聞こえたなら、きっと心を痛ませてしまうだろう。

 何の為に鳴いたのかわからないまま、重い首輪に繋がる悲痛な鎖をじゃらっと言わせながら、床に置かれた容器に口を付けた。

 犬用の首輪に、犬用の食事皿。

 俺は多分、獣なのだろう。そう誰もが信じて疑わない、少女以外は。いつか、遠い日に知った赤ずきんの物語のように、あの少女を腹に収めてしまうだろうから、俺はここで隔離されるのが一番なのだ。

 運良く猟師が通りかかるとも、形を残したまま丸呑み出来るとも限らない。

 お伽噺は現実には有り得ない。

 吠え続けて枯れた喉を潤す水は、カビ臭い味がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ