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漆黒のディトランス  作者: アカイツキ
断切り編
4/5

第3話 終焉ヲ拒ム者

 「…………ッ」

 目が覚めた。どうやら、頭を抱えていたらそのまま寝てしまったようだ。

 振り返ると、ベッドの上にスマホが置いてあった。それを見て、あの事を思い出してしまった。

 「今日…渋谷に行かないといけないのか…?」

 ボソッと呟いた。

 僕が行くことで世界は救われる…。って、そんなアニメの主人公みたいな事、あるわけないよね。僕は主人公でもなんでもない。三次元という世界に住んでいるただのモブキャラだ。だって、僕は至って普通ひきこもりがちの高校2年生なのだから。

 すると、ベッドの上にあるスマホがにわかに振動しだした。

 椅子から立ち上がり、ゆっくりとベッドの上にあるスマホを手に取ってみる。

 「………!!」

 亜李架からメッセージが届いていた。しかもその内容は、今思った事が見透かされていたような文章だった。

 『今日、来てくれるよね』

 『あなたはこの世界の主人公、この世界のすべてを救うために立ち上がった主人公なんだよ。卓郎にしかできないこと』

 『お願い、世界を救って。そして、もう繰り返させないで』 

 僕が、主人公?

 「…はじめてだ」

 こんなに人に頼られたのは。

 僕にしかできないと言ってくれたのは。

 「頼ってもらえるのって、こんなに嬉しいんだ…」

 たとえ頼ってきた相手が悪魔であろうがなんだろうが。

 頼ってくれたのは、すごく嬉しい。

 湧き上がるこの感情を、ずっと大事にしていきたい。

 「こんなに頼られたら、行くしかないじゃないか…」

 涙を浮かべながら、卓郎はポツリと言った。




 「…………」

 ビルの屋上から、渋谷の街を眺める一人の少女がいた。

 「今回は成功するはず、きっと────」

 金色の髪をなびかせながら、少女は呟いた。

 今から始まるのは、世界の存亡をかけた戦い。

 負けて終焉を迎えるのか、それとも、勝って新しい起点を創るのか。

 この戦いを、私は幾度も見てきた。

 そして、何度も卓郎は負けていた。

 でも中には、卓郎は≪理想を現実にする者マジュツシ≫にならないことだってあった。

 卓郎が負ける度、もしくはハズレに当たるたび、私は世界線を移動して次の卓郎にかけた。

 何度も、何度も何度も。

 もうダメだとも思った。

 でも、今回はいつもと少し違った。

 今回は、きっと他の世界線とは違うはず。

 今回の卓郎ならきっと、やってくれるはず───




 107高層ビルの前で、卓郎は足を止めた。

 妙だ。

 ここは渋谷のはずなのに、ここらを歩いていた人が人っ子一人いない。

 「なんなんだ…これ」 

 信号も機能しておらず、スクランブル交差点にも人はいない。

 あるのは静寂だけ。

 妙な静けさの中、突然どこかから声が響いてきた。

 『ほう、あなたが≪理想を現実にする者マジュツシ≫ですね?私はエルメス、エルメス=フォン=レッゲンドルフ。今日はこの地球という惑星の活動に終止符を打とうと、私はここに来ました』

 この声の主は、いつの間にか目の前に立っていた、全身スーツに身を纏った男だった。

 「な…な、な…なんで…なんでそんな…」

 なんでここでコミュ障が発動するんだよ!!

 『なんでこんなことをするのか、ですよね?それはもう、"この世界が必要じゃなくなったから"ですよ。この"宇宙"という存在を安定、確立させる為にこの世界この惑星が創られたのですが、もうここは必要じゃなくなったんですよ』

 必要じゃないから消すって…必要じゃなくなったこの地球という惑星が存在しても、その宇宙自体に影響はないんじゃないのか?

 『そうですね…確かにそのままにしておいても、宇宙に何の影響もありません』

 「なら───」

 『ですが、人工的に宇宙に害をもたらす確率が高いのは、この地球という惑星の人類なのです』

 『人間は愚かです。自分達の為に自然を破壊したりと、随分とまぁ自己中な事をするモノですね』

 確かにそうかもしれない。

 …が、このままはいそうですかと認めるわけにはいかない。

 だって、僕はまだ消えたくないんだ。

 まだ三次元で恋愛なんてしてないし、気になるアニメもあるし、そして一番嫌なのは───

 ────"亜李架"という存在の消滅なんだ。

 三次元の女なんかに恋はしないと思っていたけど、やっぱり心の何処かでは、三次元の女、つまり亜李架の事が好きだったみたいだ。

 「それでも─────」

 右手を空に仰がせ、ディトランスを生成し───

 「この世界は、消させない」

 その言葉を言い放った瞬間、卓郎の心臓の鼓動は今までにないほど高まりはじめた。

 それは、恐怖や不安というよりも、自信や希望による鼓動だった。

 今、かつてないほどに希望を持てている。

 『やはり止めようとしますか。ですが、あなたに私は殺せません』

 エルメスは虚空から紫色の禍々しい剣を取り出した。

 その剣は、ディトランスと同じように、歪な形をしていた。

 『私が持っているこれは"カーディナル・ディトランス"あなた達が持っている物とは格が違いますよ』

 敵の言葉を聞き入れずに、卓郎はエルメスに向かって走り出した。

 『無謀ですね』

 エルメスは剣を回し地面に突き刺すと、こう言った。

 『√-153 EとNの境目 魔術名"エクスプロージョン"』

 そう唱えた途端、空気がピリピリと弾ける音と共に、エルメスを中心に爆発が起こった。

 渋谷中の空気を震えさせ、大地を揺るがす程の轟音が鳴った。

 「はぁ…はぁ…な…何が」

 爆発に巻き込まれたと思われる卓郎は、何故か無傷だった。

 『なぜ無傷なのです?魔術を使ったのですか?…あなたはまだ魔術名を知らないはずなのですがね』

 (そうだ…爆発が起きる瞬間…)

 


 (√-300 TとNの境目 魔術名"トリスタン")

 …と、爆発が起きる直前に頭の中で聞き覚えのある声が響いた。

 そして、僕は反射的にその言葉を口にしてしまったみたいだ。

 その魔術が、僕を守ってくれたのかもしれない。いや、きっとそうだ。

 …でも、周りの建物は守ってくれないみたいだ。

 107という数字は、さっきの爆発で破壊され、周りにある高層ビルも、信号も、なにもかもが残骸と化していた。

 『まぁいいでしょう、魔術が効かないなら剣で勝負ですよ』

 卓郎はゆっくりと身構えた。

 『私、本気でやったことないんですよね』

 『Japanese"チャンバラ"』

 エルメスの剣が軌道を描きながら、卓郎へと攻撃する。

 全て防ぐか避けるかしているのだが、これでは防戦一方だ。

 上品な剣術で卓郎を圧倒しているエルメスは、剣だけではなく、蹴りや殴打もいれてきた。

 「あぐっ…がゔっ…!」

 容赦なく叩き込まれる殴りに、卓郎は何もできなかった。

 『もう終わりですかね』

 そう言ってエルメスは、剣を卓郎に向かって振り下ろした。

 『…………!!』

 間一髪で卓郎は剣を避けることができた。

 『あなた、なかなか手強いですね。硬直しているのにも関わらず、無理矢理体を動かして剣を避けるとは』

 「だって…これに負けたら全部終わっちゃうんだ…全て僕にかかってる。なら、もう頑張るしかないんだ!!」

 ディトランスを握り直し、エルメスに向かって剣を振りかぶる。

 攻撃は弾かれ、避けられ、いつまでも決着はつかないのではないかと思うほどだった。

 鍔迫り合いが数秒続き、卓郎はエルメスの力に負け、後ろへ飛ばされた。

 地面を強く踏み込んで、そこで止まった。

 そして、休む隙も与えないように駆け出し、エルメスに向かって剣を振った。

 相手の攻撃に合わせて剣を振って防いだり、そして剣の軌道をずらした。

 そして、全力で剣を振った瞬間───。

 ガキンッ!!と、パリィの音が響いた。

 『ふん、剣を振るだけが戦いじゃないんですよ』

 「……!!!!」

 反動で上に上がったディトランスを勢いよく振り下ろす。

 エルメスはそれを避けるが、卓郎の狙いは別だった。

 振り下げ、地面にディトランスが突き刺さる。

 『まさかっ…!!』

 そして、卓郎はこう言い放った。

 「√-003 FとNの境目 魔術名"フリューゲル"!!!!」

 そう言った途端、強い風がエルメスに向かって吹き出した。

 エルメスは暫く飛ばされないよう粘っていたが、それも束の間つかのま

 風の力に負け、少し離れた定周期式の信号へとぶつかった。

 『が…ぎ…』

 激痛で声が出ないみたいだ。

 所詮コイツも人間。痛みには勝てないんだ。

 『や…ってくれましたね…!』

 (亜李架が使ってた魔術の名前、覚えてて良かった…)

 腰から何かを取り出したかと思うと、それを卓郎に向かって投げた。

 「………!」

 卓郎がそれを避けると同時に、それの正体を知ることができた。

 「トランプのカード…!?」

 そしてそのカードから火が発生し、数秒でカード全体を呑み込んだ。

 『≪火を司る神ウゥルカーヌス≫…!!』

 《ギガアァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!》

 卓郎の背後で、火の化物が創り出された。

 「な…なんだよこいつ」

 驚きで素っ頓狂な声をだす。

 化物は燃え盛る右手で、こちらへ殴りかかってきた。

 それを卓郎は間一髪で避ける。

 化物の右手拳が着地した場所は、そこそこの大きさのクレーターができていた。

 走って距離をとろうとするが、化物は炎の触手で卓郎を追いかける。

 (まずい…!!)

 ディトランスの刃で炎の触手をかき消した。

 (これ…勝てるのか…!?)

 そう思った瞬間────

 ブワァァと、炎が消え去る音がした。

 「な…」

 化物ではなく、見覚えのない少女が、化物のいた所に立っていた。

定周期式の信号→赤黄青のあれ

はい、自分で言うのもなんですが、今回の話が一番面白かったんじゃないかな?

…いや、やっぱりそうでもないですね

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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんか展開に着いてくのが大変です 出来ればしっかり幼馴染とかが説明してそれからバトル回に 入って欲しかったですね [一言] 設定自体は面白いと思うので構成をもうちょっと 詰め込みすぎな…
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