白銀王(プラチナキング)のお見舞い + みゅーの日記 part2 + その後のカーリング皇国
数日後、すっかりもとの日常が戻ってきた。
「みゅーちゃん、ネズちゃんを呼んで来てくれる? 白銀王様のお見舞いに行くからね」
「みゅっ、わかっちゃ~」
ピョイーンと元気よく庭に飛び出して行った。
あれから、ノーサスは、迎えに来たコルネラに鞄を取り上げられてしまい、泣かれてとても反省したみたい。
人騒がせと言うか、何と言うかだ。
それから、カーリング皇国は、『魔王』様の存在をシャダイン王に話したみたいなんだ。
今回のことは、白銀王から家のみゅーちゃん達、それにフィンが絡んでいるし、サンドベルの住人に沢山被害が出た事もあって、キチンと説明するしかなかったんだろうね。
これで、『魔王』様も魔族も地上で暮らせて、ダンジョンが出来るかもしれない。
『フーリ』の卵はどうしたかと言うと、最初、俺に押し付けようとするからビックリだよ。
だから、俺は、「卵を引き取ったら育てるからね」と言ってやったら、みんな戦いていた。
だけど、そんな心配は要らなかったよ。
海竜が、なんと! 本物の猫鯰を連れて来て預かってくれたんだ!
どうも、ルビの話しだと海中のダンジョンに住んでいたらしい。
小さくなって、海竜の口の中に入ってダンジョンに入ったルビが見つけて来たみたいだよ。
まったく、家の雷竜もチョロチョロして、あっちこっちに知り合いを作ってくるんだから困ったもんだ。
これから行く白銀王は、久々に全力で魔法を使ったから、制御できなくて倒れちゃったんだって。
あんな物騒な魔法は、ずっと封印しておくに限るよね。
見逃した事をフィンが残念がっていたけど、第二の大陸からも問い合わせが来たぐらいだから、見なくても想像がつくと言うもんだよ。
「みゅみゅっ、アシャト、ネズちゃん連れちぇ来ちゃあ~」
「じゃあ、エプロンのポケットに入ってくれる?」
チョロチョロ。
ピョイーン。
「風神、ローちゃん行くよ」
◆◇◆◇◆◇◇ みゅーの日記 part2
アサトが地図作りの旅に出てしまった時には、置いていかれたみゅーは荒れた。
荒れたと言っても、小さな『幼精』の身だ。『人』や『魔物』のように暴れたり何かを壊したりは出来ない。
が、その小ささと素早さを生かし、誰にもバレずに出来る事がある。
そう、イタズラをしまくったのだ。
ーーみゅーの日記ーー
ぶみゅーっ、今日は、リェシュチャー(レスター)しゃんのパンを食べちぇやっちゃのぢゃ。
◇◆
朝食の時だ。
転送装置から届く手紙を開封して、次々と指示を書き留めるレスター。
忙しいのか、片手間にパンを取りあげ塗ってあったジャムとともにパクリパクリと……。
普段は、アサト等に行儀が悪いと注意する厳しい執事だが、主が不在となればダレたものだ。
しかし、パンの反対側に食らい付いていたみゅーは大変だ。
降ろしてもらえると思っていたら、そのまま大口で食べ進められて、危うく食べられてしまうところだったのだ。
それが、どうして助かったかと言えば……。
ビシュンッ!
白銀の毛並みがレスターの前を横切り、食べていたパンを横取りした事に気づかず、自分の指に噛みついたレスター。
ガリリッ。
『うん? ガリリとは?』
「ワーッ! 痛い」
噛んだ指をフーフーするレスター。
辺りを見回すが、パンは見当たらない。
素早いスフィナは、テーブルの下に隠れていて、みゅーだけ握ると食べかけのパンは放り投げてしまっていた。
「みゅみゅー、にゃあにゃ」
「ぶみゅみゅ、ぐりゅじぃー~」
みゅーは、赤ちゃんのスフィナにぎゅっと握られ、頬擦りされると言う受難に遇っていた。
一方レスターは、自信の行儀の悪さを反省し、サッサと食事を済ませてから書庫に向かったのである。
ーーみゅーの日記続きーー
みゅみゅっ。スフナに邪魔しゃりぇちゃけぢょ、リェシュチャーしゃんを改心しゃしぇりゅ事が出来ちゃ。
「ふみゅう?」
重たい頭を傾げ過ぎて、椅子から落ちそうになり、慌ててテーブルに掴まったみゅー。
そのまま、テーブルをパンパンと叩き。
「みゅみゅみゅみゅみゅっ! しょうじゃないの。みゅーは、悪い子になりゅちゅもりなの!」
今の動作で、テーブルと紙が真っ黒になってしまい、アサトが作ってくれたミニチュアハウスを汚したくないみゅーは、自分の洗面所で手を洗いテーブルを拭いたのだ。
結局、いい子のみゅーなのだった。
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『その後のカーリング皇国』
偉大な竜王様と神子から送られた『小さき英雄』達の活躍で、永きの禍根を絶つことの出来たカーリング皇国。
『フーリー』を封印し、猫鯰により深海で管理されるようになってからは、一日たりとも止むことのなかった暴風が、嘘のようにやんでしまったのだ。
「このように、穏やかな晴天を迎えられる日が来ようとは、まるで、奇跡のようではないか? のう、妃」
「そうですわね、カール(愛称)」
翔竜の発着所でもある水晶宮の最上から、カーリング皇国を一望していた皇王夫妻。
そして、その隣りには、皇王に良く似た者も立っていた。
「日の光りが、これ程眩しいとは」
ここ暫く、幾度も浴びているというのに、感動が納まらないのか、何度も口にしている。
その様子を仲睦まじい夫妻が、温かく見守っていた。
「そなたの願いが叶うて、これからは、自由に何処へでも訪ねて行けるのだ」
「素敵ですわね。初めに何処へ行かれるのでしょう」
心から喜ぶ兄夫妻に、少々、面映ゆい気持ちを感じながらも、耀く日に煌めく自国の大地から目を離す事が出来ないでいた。
『我が護り続けたカーリング皇国』
「飽きる迄、ここに……」
朝の爽やかな風にのって、二人には、魔王(弟)の囁きが聴こえた。
終




