みゅーの意志
ノーサスから話しを聞いたアサトは、そんな恐ろしいモノに、家のちっちゃい子達は立ち向かって行ったのかと、背筋の凍る思いがした。
「みゅーちゃんもネズちゃんも、もう、危ない事はしないでね」
と、言い聞かせてみる。
「アシャト、みゅーね、武闘大会に出てみちゃい」
みゅーは、今度の事で『小さき者』でも戦える事を証明したいと思ったのだ。
「みゅーさん……」
ネズは、二度とこんな恐い目には遇いたくないと思っているのに……。
「ぢゃかりゃ、みゅーにも杖を作っちぇ欲しいの」
そこからは混沌。
僕も私も出場したいだの、武器を作って欲しいだのと、ハイエルフの子供達も騒がしい。
まさか、そんなに言ってくるとは思っていなかったアサトはひっくり返りそうになってしまったのだ。
「巫、どうしてみんな戦いたがるんでしょう」
「あら、それは、アサトやフィンディアルが手本を見せているからでしょう?」
「見せてませんよ。俺はいつだって地味に物作りをしていると言うのに」
『まぁ、困った可愛い人ね』と巫は思う。
「最近、僕は学校で、みんなに訊かれるのです」
「何を訊かれるの?」
ロリエンに載せられるアサト。
「フィンディアル兄様とアサトお兄ちゃんのどちらが強いのかって……」
「そりゃあ、フィンに決まっているじゃないか?」
「私は、アサトだと思いますよ。何と言ってもオーディーンの弟子ですからね」
巫は言った。
「私もアサト様だと思います。主は、アサト様に捨てられたら生きていられないでしょうから」
「ちょっと、レスター君! それは意味が違うでしょう、意味が!」
「私は、フィンディアル様です。先日の武闘大会では、美しい魔法の連続に武器と魔法の併用。とにかくとても素敵でした。(ポーッ)」
「もしもし、デイジーさん?」
話しがズレて勝手に盛り上がっているうちに、得意の姿消しで二階に逃げた。
「ローちゃん、上のソファーでのんびりしようねぇ」
「あぷあぷ」
愛嬌のある笑顔に癒されていた筈が、髪をモソモソするこの感じは……。
「ふみょー」
「みゅーちゃん、着いて来ちゃったの?」
肩に掴まってチョンと顔を出した。
「うみゅっ。まぢゃ返事をきいちぇないみゅっ」
「もお~、それじゃあね。フィンの目を盗んで朝、俺を起こしに来れたら許可するし、杖も作ってあげるよ」
「みゅみゅっ! 本当?」
「約束するよ」
「みゅっみゅー、みゅー頑張りゅ」
可愛いみゅーちゃんの笑顔が、今は眩しい。
だって、絶対に無理だと思うから。
フィンが見逃す日なんて永遠に来ないからね。
『ごめんね、みゅーちゃん』




