話しは続く
「陛下、妖精を拉致した者達の取り調べが終ったようです」
「そうか。では、報告をするように」
「しかし、ここには……」
言い淀む大臣。
すると、竜王が口を開いた。
「先程、試させて貰ったのでな、この男は関わっていないと我が断言しよう」
デントラル司教は、己が疑いを掛けられていた事にしばし呆然としたが、この席から排除しない陛下の信頼に気づき、更に姿勢を正すのだった。
「竜王様に試されていたとは、不覚の致すところでございます」
「小さき者が、『海の神』を調べ巻き込まれたが発端でな、『海の儀式』『復活』『生け贄』『サーホエール』の用語が使われていたと聞いておる」
「『サーホエール』の『復活』! まさか、サーホエールは生きているとでも?」
カタカタ震えるデントラル。
「見よ、この男は、信頼するに値する男よ」
その場に居合わせた者全てが、竜王の言に納得がいった。
竜の優れた五感があれば、少しの汗の臭いも鼓動の音も見逃す事はない。
いるとすれば、竜騎士のフィンディアルぐらいだが、そうだとしても、最大の弱点のアサトがまるわかりなので、今のところ脅威にもならないのだが。
「では、ご報告申し上げます」
「申せ」
「今回捕縛した輩は、ほとんどの者が教会信者だと言う事が判明しました」
ガタッ。(椅子から立ち上かった音)
「何と言う事だ!」
「デントラル、落ち着きなさい」
返事も忘れて、フラフラと椅子に座り込む。
「残りの数名は、金になると思い加わったそうです」
「フム、指導者が誰かはわかったのか?」
「いえ、それが、サンドベルの教会職員である事は間違いないようですが、今、調べに向かわせているところです」
「他に、何かわかった事はないのか?」
「これには、我々の海への畏れが根底にある事が関係しているようです。それから、隣国に住まわる神子様や竜への恨み事も訴えておりました」
「竜への恨み事とは、聞き捨てならんな」
「竜王様、失礼は承知しております。ですが、隣国ばかりに出入りされる貴方様方を羨ましく思ってしまう『民』もいると言う事です」
チクリと痛いところを突かれてしまった。
「そうであったか。ご苦労、下がって良いぞ」
騎士達が退席すると、また四人になり密談は続いた。




