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地の妖精ノームの大冒険  作者: 風 ふわり
不思議な赤ちゃん編
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誰の赤ちゃん

巫や学校に行く子供達は、新大陸からアサトに着いて来たハイエルフ達です。

ローゼは呪術師の冒険者で、同じように着いて来て住んでいます。

 そしてそこから、みゅーちゃんと俺の大変な日々が始まった。



 たまの休みで、一人のんびりしていたのに……。


 テラスから食堂に入り、眠っている赤ちゃんを観察してみる。


 この大陸人特有の、茶髪茶目ではなくて、赤っぽい黄色の髪をしていて、酷く癖があるようだ。


 ぷっくりほっぺは、赤ちゃんらしく、アヒル口が特徴の大変愛嬌のある顔をしている。


 「瞳は何色かなあ?」


 藤カゴにわざと毛羽だたせた毛布をひいて、その中に裸の赤ちゃんを寝かせ、急いでオムツやらパンツやら産着を縫うアサト。


 出来上がった頃に、学校から帰って来た子供達とギルドから帰って来たみゅーちゃん達とが合わさって、皆がわいわい騒いでしまい、赤ちゃんがぐずるのは仕方ない。


 「よしよし、いい子だね」


 アサトが抱き上げて頬擦りするとパッチリ開けた瞳は黄色で瞳孔が黒だったのだ。


 「何だぁ、この世界にも黒色があるんだぁ」


 アサトが、慣れた手つきであやせば、「あ~だぁ~」と笑った。


 しかし、子供達も大人達も、この、突如として出現した赤ん坊に、思考停止して動きを止めている。


 朝、家を出た時には、存在していない者がいるのだから、そりゃあ驚いた。


 しかも、裸の赤ん坊だ。


 誰しも口にはしないが、まさかアサトが産んだのでは……と思ったから固まっている。


 「可愛いなぁ。お腹は空いているかな? ミルクを飲もうね」


 殺菌をする為に生乳を一度温め、砂糖をほんの少し入れて人肌まで氷で冷ましてから、調合用に作ってあった新品のスポイトでミルクを飲ませるアサト。


 まるで、母親のようである。


 そこに、そろそろおやつの時間だなと、家令のレスターが書庫から出て来て、棒立ちしている皆にハッとしたのだ。


 『今日は、確かアサト様がお休みで、一人で過ごされていた筈。まさか! また何か面倒を起こしたに違いない』


 皆を掻き分けてその姿を捉えたレスターも、一瞬思考停止に陥った。


 が、付き合いの長いレスターはすぐに持ち直し、主の伴侶に詰め寄ったのである。


 「アサト様! あなたって方は、皆に内緒で子供まで作ってしまわれたのですね」


 キョトンとしていたアサトはそれから徐々に赤くなり、微妙な内容に性急に訂正して説明した。





 「まったく、俺を何だと思っているのか」


 『レスターの言ったことが、微妙過ぎて困ったじゃないか!』


 「あー、んま」


 柔らかなお手てで頬を叩かれ、甘えた声で催促されれば、誰でも笑顔になってしまう。


 ちゅぱちゅぱとミルクを懸命に吸う姿に、たちまち魅了されてしまう一同。


 「良かったわん」

 と安堵するローゼ。


 「まぁまぁ、愛らしいわね」

 と巫。


 「みゅみゅーっ! ふみゅーっ!」

 と、何やら興奮気味なみゅー。


 女の子達は「「「可愛い」」」と大合唱だ。


 ようやくミルクを飲ませ終わり、背中をトントン叩いて、小さな「ケフッ」を聞いてから、女の子達に抱かせてあげたアサト。


 でも、眠くなってしまったのかぐずり始めて、すぐにアサトの元に戻ってきた。


 「よしよし」


 昔、フィンディアルの子守りで歌った曲を歌ってやると、キャッツアイの瞳を一瞬大きくしてから、しっかり抱きつくと言う不思議な行動をしてから寝たのだ。


 変わった赤ちゃんだなと思った瞬間、大事な事を思い出したアサト。


 「そうだ!」


 「「「シーッ」」」


 アサトが叫べば、見守っていた周囲に静かにするように言われてしまう。


 そこで、藤カゴに寝かせようとしたら、服をしっかり握られていて、離せなくなっている事に気付いたのだ。


 仕方なく、抱き抱えたままレスターを手招きしたアサトは、大至急フィンディアルに知らせてもらい、この子の親を探してもらうように頼んだのだった。


 今日は一緒に休みだったが、フィンは王宮に呼び出されて、馬車で登城していたのだ。

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