山の方向
「みゅうみゅ、山がぢょっち(どっち)か知っちぇる?」
「ぷ~んぷん(知らん)」
草原に居る虫達に、どっちが山なのか訊いているだけで、日が暮れてしまった。
「ここは何処なの? ぢょっち(どっち)に向かえばいいの?」
また、一日が過ぎた。
このままじゃ、アサトに会うどころか、消えてしまうかもしれない。
焦る気持ちを抱えながら寝ようとしたが、眠れる訳もなく、朝が来た。
窓をあけて、眩しい日射しを浴びたみゅー。
『朝日……アシャト……名前が似ちぇるし……あっちゃかい』
「あの、日が沈む方向が隣国のある山だよ」
不意に、アサトと見た夕日を思い出したみゅー。
暗い顔が、パーッと明るく輝いた。
「お日様の沈む方向を探しぇばいいんぢゃ」
みゅーは、安心して二度寝した。
◇◆
毎日毎日、高いところに登って、日が沈む方向を探して、やっと歩き始める事が出来た。
それから、リーンリンリンと鳴いていたのが、虫ではなく、アサトがくれたカバンの花飾りだと判った!
何モノかが近づくと、教えてくれて鳴る。
ただ、それが、みゅーに危害を加えるモノだけとは、気づいていない。
野性味の欠片もないみゅーなのだ。
方向がわかれば、後は進むだけだ。
「ふみゅふみゅふみゅー♪」
と歩いていれば、テフテフやナナ星虫が、みゅーの周りを翔んで回る。
一緒に、花の蜜を舐めたりしながら、楽しく山を目指したのだ。