ついてきた
ゴロゴロゴロゴロ。
シャウロックのメテルは、アサトからイメージを受け取り変形する。
ゴーカートのような形にして、キャタピラのように枝を動かして進む。
王都民を驚かせないように挨拶をしながら進むアサトに、見かけた王都民は皆手を振ってくれている。
「みゅーちゃんの時も心配だったけど、ハム太も大丈夫かなあ」
「みゅみゅっ。アシャト心配かけちぇごめんなしゃい」
自分の髪の後ろにしがみついていたみゅーを発見して慌てるアサト。
「いつの間に?」
「みゅーは、アシャトのお手伝いしちゃいから着いちぇきちゃよ」
こんなに小さいのに、手伝ってくれようとしているのかと嬉しく思う反面、心配になるアサト。
「みゅーちゃん、飛ばされちゃうから、ここに入っていてね」
エプロンをつけたままだったアサトは、そのポケットに入ってもらってそのまま王都から出ようと門に向かった。
「アシャト、ハム太しゃんっちぇ?」
「ああ、みゅーちゃんは知らないよね。俺がランダル領に住むようになって、その時ダイネル領にある牧場まで良く乗せてくれた魔天竺鼠だよ」
「ふみゅ?」
「鼠の大きい魔物なんだよ」
「みゅみゅっ! ネジュミちゃん。みゅーのお友達にもネジュちゃんがいちゃよ」
「みゅーちゃんのお友達かあ。また会えるといいね」
「うみゅ。アシャトにも紹介しゅりゅね」
『鼠さんかあ……』
とりあえず愛想笑いをして誤魔化した。
門兵は、怪しい乗り物のメテルを発見すると、三人がかりで止めてきたのだ。
アサトは素早く降りて挨拶をした。
「皆さんお仕事大変ですね」
ニッコリすれば、女神の祝福(魅了)が働き門兵達はポーっとみとれたのだ。
「美しい黒髪だ」
「竜騎士様の奥方様に違いない」
「お綺麗だな」
「お、お一人で、ど、どうされたのですか?」
「ランダル領でお世話になった獣魔の魔天竺鼠が、単独で会いにきたみたいなんです。それで、今から迎えに行きたいと思っています。通していただけますか?」
「獣魔が単独でいるなんて危険ですね。奥方様一人では心配です」
「ご親切にありがとうございます。でも、ハム太はとてもなついていますから大丈夫ですよ。とにかく心配で急いでいるんですよ。ここを通して頂けませんか? あ、良かったらこれを皆様で召し上がって下さい」
焼きたての木の実入りパンを渡せば、快く通してくれてホッとするアサト。
「みゅみゅっ。アシャト、みゅーも食べちゃい」
焼きたてパンの薫りに誘われたみゅーが、ポケットから顔を出している。
「ふふっ、そう言えば夕食がまだだったね」
夕食を食べそこねたみゅーちゃんに果実をあげ、アサトはハム太を呼んでメテルにも探してもらいながら進んだのだ。




