表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地の妖精ノームの大冒険  作者: 風 ふわり
ハムタック編
62/97

鳴き声

 おいは、このネズと言う奴とこの道を行く事にしたじょ。


 あの者はいつも「皆さんの邪魔になるから、奥を行こう」と、道から少し入ったところを歩くように言ったじゃろ。


 おいは、それを守って少し入ったところを歩いたのだじょ。モッヒ。


 「チュチュウ、そろそろ休みませんか? ハムタックさん」


 「モヒ。お日さまがポカポカで眠たくなったじょ」


 おいが、ヨロヨロしていたからじゃろ。


 ネズはピョインと降りて、居心地の良さそうな場所を探してくれたじょ。


 おいは、頬袋に入れていた種を食べて、ネズはどこからか木の実を拾ってきたんじゃろ。


 隣りでカリカリと旨そうに食ってるじょ。


 それから、少し横になっていたら知らないうちにスピスピ寝入ってしもうたじゃろか。




 「くっそう! せっかくあの飲んだくれから引き取ってやったってのに、おい! ほら走れよ」


 「……キュ……ン」


 「モヒッ?」


 懐かしい声が……空耳じゃろか。


 「キュオン!」


 おいは、跳ね起きて全速力で道の方に向かったじょ。


 「おい! 起きろよ」


 ドカバキと何かを蹴る音がしている。


 おいは、叫んだじょ。


 「モヒー~ッ! (トラジタ!)」


 「なんだ! 王都の近くで魔物か?」


 傷だらけで横たわるトラジタを蹴っていた大男は、おいの叫びに驚いたようだ。


 「お前は! コイツと一緒にいた獣魔じゃないか。ちょうどいいや、コイツが駄目になったからお前で我慢してやるよ」


 デッカイ武器を担いだ、上半身裸に革ベルトの目の鋭い男はそう言ったじょ。


 「モシャー~ッ!」


 こんな大きな男を乗せて走るなんて、どれだけ大変だったか……。


 弟分のトラジタがグッタリしているんだじょ。


 冒険者風の男は、縄を取り出しておいを捕まえようと投げてきたじょ。


 「おおっ? 意外に素早いな。コイツより使えそうだ」


 男は再度、おいに向かって縄を投げてきたんだじょ。




 暗がりの中、しかも灌木の多いところで縄を振り回すなんて、アイツは余り頭が良くないじゃろ。


 やはり、あちこちに引っ掛かってしまったようで、それを力ずくで枝葉ごと引き寄せているじょ。


 おいは、少し大きな樹木を探しそっちに誘導してやったじょ。


 それにしても、あの大男は獣魔を知らなすぎるじゃろ。おいは、魔天竺鼠(ジャンガルバラ)だじょ? 夜行性だと知らないんじゃろか?


 あんな投げ縄で捕まる筈ないじゃろが。


 ガサガサとわざと草木を揺らして、樹木のところまで誘導してやったじょ。


 「なんだ、そんな所で待っていたのかよ」


 冒険者風の大男は、おいを追い詰めたと思ったのか、縄を手に持ち近付いてきたじょ。


 おいは、わざと木を背にして待ってやった。




 「大人しくしていろよ」


 そう言って近付いてきて、おいの首に縄をかけようとしたんだじょ。


 おいは、溜めていた力で軽く木の枝に跳躍して駆け上がり、大男の背中目掛けて渾身の頭突きをかましてやったじょ。


 ついでにバリバリと爪で抉ってもやったら、「ギヤアー」と悲鳴を上げて逃げて行ったじょ。




 モヒモヒ、意外に根性無しじゃったじょ。


 そうじゃ! トラジタは大丈夫じゃろか?


 「モヒーッ!」


 全速力で戻ったじょ。


 「あ、ハムタックさん! 大変です」


 真っ白なネズが、トラジタの横に来ていておいに言ったじょ。


 「この魔物さんが起きません!」




 いやだじょ。


 トラジタは、あの者から貰う大金でマスターが何処かから連れてきたおいの弟分だじょ。


 いつだったか、あの者達と一緒に行った海は楽しくて、よくトラジタとはその話しをして「また行きたいね~兄さん」と言っていたんだじょ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ