表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地の妖精ノームの大冒険  作者: 風 ふわり
ハムタック編
61/97

閑話 子ネズミのネズちゃん

 ネズは、あまりにも発育が悪く見込みもなかったので、親にあの空洞に置き去りにされたのだ。


 産まれた時に小さく生まれつくと、それだけで競争に負ける。


 自分でもわかっていた。そう長くは生きられないのかもしれないと。


 母親の乳を飲む時に、胸に詰まってしまってよく飲むことが出来なかったのだ。




 置き去りにされた時点で、かなり弱っていたから水も飲めずに横たわっていた。


 もう長くないのかも。それがわかっているのに、どうして最後ぐらい家族は一緒に居てくれないんだろう。




 心が締め付けられるほど、哀しくて淋しくて痛い。凍えるような気持ちを抱いて自分の命はこのままここで消えるんだ。


 そう観念して諦めた時、水の匂いが鼻を刺激する。


 うっすら開けた目の前には、葉に汲まれた水の玉が差し出されていた。


 最初は、綺麗だな……こんなに綺麗なのって生まれて初めて見たかもしれないと思ってボンヤリしていたんだ。


 けれど、すぐに夢中で飲んでしまった。


 だけど、それでかな。


 お腹がとてもとても空いていることに気づいたのは。


 何も刺激しなければ良かったのかもしれない。と後悔するぐらい飢えとは苦しいものだった。


 この割れるように痛い頭も食べたら治ると思うのに、体中の渇きに負けてお水を飲んでしまったから、空腹が飢えが苦しくて涙が出る。




 でも、その辛い苦しみはそう長く続く事もなく、究極の幸せが私を待っていた。




 花色したノームさんが、口に入れてくれた透明な水の塊は、夢かと思うぐらい甘く口の中でほぐれていったのだ。


 甘~い。美味しい。チュー~。


 葉っぱの色した飲み物は、少し苦かったけどそれを飲んでからは、体がポカポカして久しぶりにぐっすり深い眠りに落ちた。


 ゆっくり眠る幸せな気持ちに浸れた。


 でも、また置き去りにされるんだろうと覚悟していたら、毎日毎日、元気になるまで美味しい物を食べさせてくれて、面倒をみてくれたから心の中は感謝で一杯になった。


 「みゅみゅっ。ネジュちゃんおはよう」


 変わらない明るい笑顔が、今も心に焼き付いている。


 何て、どうやって返したらいいんだろう。


 こんなに元気にしてもらって、病気が無くなり代わりに詰まった胸一杯の感謝。


 多分、産まれた時から食道が細かった気がする。


 だけど、葉っぱ色の飲み物を飲んでからは、詰まった感覚が無くなってしまった。


 欠陥を治してくれたから、今は食事を沢山摂れてとても元気で動ける。


 結局、助けてくれたみゅーさんとは途中で別れる事になってしまったけど、準備して押し掛ける事にしたんだ。


 だって、あの時あそこで消えてしまう筈の命だったんだから、助けてくれたみゅーさんの為に使いたいと思ったとしても、決しておかしくないと思うから。






 ここに来るまでも本当に幸運で、山を降りたところで出会った女の子が、みゅーさんの大好きなアサト様が住んでいた隣りの家に行くところだったんだ。


 しゃがんで何かを掘っている隙に、背中を登って襟の裏に隠れていたんだよ。


 それで家の近くまで来たところで、見えない何かに弾かれてしまって、落ちたところを気付かれてしまった訳なんだ。


 でも、女の子はとても優しくて丸い水の玉の服を着ていたから、きっとアサト様のお遣いの人なんだろうなと、偶然じゃないのかもしれないなと思ったんだよ。


 みゅーさんに会う前にも水の玉があったからね。


 「まあ、何処から着いてきたのかしら。可愛いネズミさん。でもね、アサト様が結界を張っているから制限されてしまっているの。ごめんなさいね」


 その女の子は、お水とチーズを分けてくれて、それがまたとても美味しかったんだ。


 アサト様の周囲には優しい人が沢山いるんだな。みゅーさんもそうだったから嬉しくなって、近くの家の屋根に登って、また女の子が来るのを待っていたんだ。


 そしたら、恐ろしい男の人が「ハァッ!」って魔法をかけたから体が動かなくなっちゃって、それで屋根から落っこちてしまったんだよね。


 チューチュー。


 でも、お陰でハムタックさんと知り合えて、もしかしたらみゅーさんの居るアサト様のところに行けるかもしれないから、何だかついているなと女神様に感謝したんだよ。




 みゅーさん、私の事覚えてくれているかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ