落ちてきたモノ
「チュッチュゥー~」
モヒー~ッ! モヒッモヒッ!
《激走中》
「モヒッ?」
疲れてきたじょ。モヒッ? ここはどこじゃろ?
キョロッ、キョロッ。
ガラガラガラ、ゴロゴロゴロ。
モヒッ、あれは人が乗る箱じゃろ。
よけよけ。おいはちゃんと道の端っこに寄ったじょ。
おいを横目に急いで走らせて行ったじょ。
モヒモヒ。おいのお行儀良さに驚いたんじゃろか?
いい気分になったおいは、尻尾をぐるんぐるん回したんだじょ。
「チュー」
ポスン。
あ、何かおいの尻尾から……。
「モヒーッ!」
もしや、おいの尻尾が千切れたんじゃろか!
草むらに鼻面を突っ込んで探したじょー。
おいのおいの尻尾。
あれがなくては、あの者がガッカリするかもしれないじょ。
最後に別れた時も、おいのこの尻尾に頬擦りしてくれたんだじょ。
それがなかったら、おいのことわからないかも知れんじゃろ。
「モヒモヒモヒ」
「ウチュー」
ん? そう言えばさっきからチューチュー聞こえていたじゃろか?
尻尾が飛んだと思った辺りには、真っ白い腹の膨れたネズミが目を回していたじょ。
ああ、何かおいの上に落ちてきたのはコレじゃろか?
両手で持って鼻息をかけたじょ。
「ん……」
「起きないじょ。おいの頬袋にでも入れておいてやった方がいいじゃろか」
「チュー! 起きてます。起きてますから食べないで下さい」
涙目で震えられると、何か良からぬ気持ちが湧きそうになったじょ。
モキュモキュモキュ。(頬を揉む音)
おいは、ネズミを下ろしてから頬を揉んだじょ。
「おいは、草とか種とかしか食べないじょ。んっ? あの者は、美味しい肉を食べさせてくれたじゃろが。忘れていたじょ」
テシテシテシ。
ビクッとしたネズミ。
しばらくの間、お互いに探りあっていたんだじょ。
「モヒッ! おいは、あの者に会いに行く、違う違う。苦情を言いに行くんじゃろが」
行こうとするおいに小さな声がしたじょ。
「あの……」
「モヒッ?」
フルフル。
また、行こうとすると今度ははっきりと話したじょ。
「あの、アサト様に会いに行くのですか?」
「モヒッ。勘違いしたら駄目だじょ。おいは、苦情を言いに行くんだ。あ、もしや、苦情を言いにきた仲間じゃろか」
「苦情? いえ、アサト様と一緒に住んでいるみゅーさんに会いに行きたいんです」
「あの者に用事ではないんじゃろか」
「あ、はい。でも、お訪ねするのはアサト様のお家です」
「モヒモヒ。じゃあ、同じじゃろ」
「はい」
おいが、行こうとするとまた話し始めたじょ。
「あの! お願いがあります」
「モヒッ、おいにお願い?」
「はい」
何じゃろかと待っていたじょ。
「あの、一緒に連れて行ってもらえませんか?」
「モヒモヒ、一緒にじゃろか?」
おいは、それを聞いて仲間のトラジタの事を想ったじょ。
いったいどこに行ってしまったんじゃろか……。




