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地の妖精ノームの大冒険  作者: 風 ふわり
ハムタック編
59/97

激走

 「アサトはいねぇ……となると、お前ぇ逃げて来たんか?」


 「モヒッ!」


 この五月蝿い奴には、隙がないじょ。


 おいは、ソロリチョロリと距離を取ろうとしたんだじょ。


 「まあ、待てや」


 ズモモモーっとこの者が大きく見えたが、気のせいじゃろか?




 「いたいた。予想通りアサト殿が住んでいた店か」


 おいは、顔だけで真後ろを振り返ったじょ。プキッ?


 「なんだダルタンじゃねぇか。見廻りか?」


 「チッ」


 また、この五月蝿い奴の知り合いのようだじょ。


 「そっちこそ、山から降りて何しているんです?」


 「そりゃぁ、ちと子供に頼まれてな……」


 フィッと横を向いたじょ。あんまり仲良くはないんじゃろか?


 「グラドともあろう男が、娘のお使いですか?」


 「ふん。独身のお前なんぞにゃわかるまいよ。オレがどれだけ幸せかなんてな」


 「……」


 「ん? どうした? 具合でも悪いんか?」




 「どっち向いても幸せな奴ばっかりで、あてられっぱなしですよ!」


 どっち向いても幸せな奴とは、顔を前後に向けていたおいのことじゃろか?


 モヒモヒ、ここ数年、おいはあんまり幸せじゃ……。


 モキュモキュモキュ。(顔を擦る音)


 それもこれも、みんなあの者のせいじゃろか!


 「モヒーッ!」


 「うわっ、何だ急に」


 思わず歯を剥いてしまったおいに注目したじょ。


 おいは、尻尾をぐりぐり回して飛び出したつもりだったじょ。


 すると、「ハアッ!」と気合いを入れた五月蝿い奴のせいで、おいの体は動かなくなってしもうたじゃろか。


 「お前ぇ、アサトに会いに来たんだろ? あいにくアサトの奴は王都に行っちまったからここにはいねぇ。オレが後で手紙で知らせといてやるから、大人しく獣魔術師のとこで待っとけよ」


 「モヒモヒ?」


 「この先の王都に嫁に行っちまったんだよ。お前ぇも会いに来たんだろう?」




 「モヒーッ、モヒーッ!」


 「なんだ、放っとかれたから怒ってんのか?」


 「モヒモヒ」


 「許してやんな。アサトの頭ん中にゃフィンディアル様が独占してるからよ、その他の事がなかなか難しいんじゃねぇかな」


 あの者の番が拘束してるんじゃろか?


 それならおいが助けてやらなきゃじゃろ。


 テシテシテシ。


 「何だ諦めねぇのか?」


 「ちょっと、足止めしてくれたのは助かりますが、煽るのは止めて下さいよ」


 後から来たもっさい男が困っているじょ。


 「ウチューッ!」


 ドンドン、ボテン!


 おいの背中に突然、近くの屋根から石みたいに重い物が落ちてきたんだじょ!


 「モヒー~ッ!」


 驚いたおいの呪縛が解けたから、そのまま道を激走だ。


 「おお、何だ」


 「こらっ! 待ちやがれ」


 突然の出来事にオヤジ二人は慌てふためいたが、惚けた獣魔の走りは速い。


 あっという間にもう、見えなくなってしまっていた。


 「大変だ。ありゃあ王都に向かったぞ」


 「うわっ! 坊っちゃんに報告したら、オレは減俸か?」


 「そりゃあ、当たり前だな。オレ達二人が逃がしちまったんだからよ」


 「ハァー」


 ダルタンは、情けなくて呆然と立ち尽くした。 

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