ガルーダの決断 番外編 ノーサスの結婚式
「さあ、みゅーちゃん帰ろう」
「うみゅぅ。ちょっちょ(ちょっと)待っちぇ(て)」
アサトに下ろしてくれるようにお願いするみゅー。
トテテとガルーダの前に立った。
「ガリューヂャ様。みゅーは、いちゅまぢぇ(いつまで)もガリューヂャ様の眷族ぢゃから、まちゃ(た)ここに来ちぇもいい?」
「……」
「んみゅ?」
「我に嘘をつくなど眷族ではない!」
ダン! と足を鳴らした。
「グシ」
みゅーのデカ目に涙が盛り上がり……。
ガルーダは、後ろを向いてしまった。
そして……。
「だが、楽しい夢を見せてくれた。お前は、我の友だ。だから、いつでも遊びに来るがいい」
「ふみゅみゅっ!」
みゅーは、ガルーダの美しい尾羽に飛びついて、涙と鼻水を擦り付けたのだ。
それまで、ハラハラしていたアサトは、照れ屋のガルーダを好きになった。
こうして、土の妖精改め、時の幼精ノーミュの小冒険は、終わりを迎えた。
おわり
最近のランダルの山は賑わしい。
数ヶ月前に、竜が飛来したばかりだと言うのに、今度は、妖精の里でノームと小人の結婚式があるそうだ。
アサトの養い親のオレ(グラド)は、妻のメイダ(兎人族)と娘のレイダ、息子のグラナンド(兎人族)を連れて安全を見守る役だ。
何故なら、第二王子様がお忍びで参加されているからだ。
シャダイン王に似た赤茶けた髪に、人懐っこい顔をしたやんちゃな王子。
今は、妖精の女王につかまっているなあ。
どうにも、込み入った事情がありそうで、ギャーギャー言っているようだ。
主催者のアサトは、花嫁の小人に付ききりで、支度にかかって忙しくしている。
ノームの妖精側では、アサトがいつも連れている「みゅーみゅー」鳴く妖精を囲んで、盛り上がっているぞ。
小人達は、妖精と戯れているか?
あの、竜の白銀王は、小さくなって、ルビと家の子供達と話している。大きさに関係なく、威厳がある存在だな。
フィンディアル様は、ユニコーンと久しぶりに再会して、話しをするでもなく、ただ傍に座って風に吹かれている。
そんな、夢みたいな光景の中、燃えるような羽をした魔物のガルーダが飛来して、皆が沈黙してしまったようだ。
オレも、アサトから聞いていなかったら、剣を抜いていたところだったぜ。
まず、みゅーみゅー鳴く妖精が跳ねてきて、ガルーダに飛びつき、次に、新郎のノームがやってきて、お礼を伝えていた。
その光景を見た妖精達は、安心したのかそれぞれ、好きなように喋り出す。
本当に、アサトの周囲には、人外が多く集まってきやがる。
それからやっと、花嫁の支度が出来上がったようだ。
手伝わされていたメイダがオレの所に戻ってきた。
「小さいから、中々難しかったわ。でも、さすがよ。アサト君たら、複雑に髪を結い上げたのよ」
「オレ達の結婚式を思い出すなあ」
「そうね。あの時もアサト君が準備をしてくれたのよね。まるで、昨日の事のようね。ブーケだって、全然色褪せていないもの」
「そうだな。そのぉ……今だって、メイダは……綺麗だけどな」
ソッポを向きながら、ボソボソ言うオレの手をそっとメイダは握ってきた。
アサトが思い出の貝殻を使って音楽を流せば、美しい花嫁の登場だ。
父親が腕を貸している。
白銀王の前で待つ新郎に、手渡された花嫁。
手を取り合う二人は、幸せそうだ。
白銀王が、厳かに宣誓をすれば、誓いの言葉を述べた二人。
それに、妖精女王が承諾すれば婚姻は成立するんだと。
花々が舞う中、お皿を交換し合った二人を祝って、宴に突入した。
アサトが振る舞う菓子を、家の子供達も楽しみにしていたから、暫くは、近づけそうもないな。
人外は、甘い物好きらしい。ルビが大口を開けて食べている。
第二王子様は、すっかり妖精女王と打ち解けているが、不思議な方だな。
日が真上に昇り、暑くなってしまい、クイナと呼ばれた鳥に乗って、新婚の二人は新居に旅立って行った。
シャダイン王国は、多種多様な種族がいて、こんなに平和で幸せな国なんだな。




