決着 1
「フィン!」
悠々と腕を組んで立っていたのは、暗闇でも光る金髪の麗しい旦那だ。
「アサト! こんなところにどうしたんです?」
「髪を追いかけて……そんなことより、この人達生きてる?」
「え、ええ、なんとか」
『アサトが来なかったらわかりませんでしたが』
フィンは、心の中で続けた。
「なら、訊いて! 本物のみゅーちゃんが何処に居るのか」
「本物って? ……まさか、騙したのですか?」
「うん、渡されたのは、みゅーちゃんじゃなかった」
アサトは、倒れている二人に近づいて、起こしてみたが、白目を剥いた男達は、崩れてしまった。
「フィンンン……」
涙目で睨まれて、ドキッとしながらフィンは、二人をサッと縛ってしまい、ポーションを一二滴垂らしてからカツを入れた。
山頂に取りに来た者ではない方が、目覚めたようだ。
冷静に状況を把握してから喋り出した。
「噂の竜騎士様が相手では、かなう筈がありませんな」
「みゅーちゃんは、みゅーちゃんは何処?」
上品な男は、アサトを目にしてこう言った。
「どうですかな? 大事なものを奪われる痛みは?」
『まさか!』
アサトは、悪い想像をしてしまい、よろけた体をフィンディアルに支えられた。
「みゅーちゃんに何をしたの……」
「ふっ、何もしていませんよ。こう見えて、私は、紳士ですから」
のらりくらりと、アサトの反応を楽しんでいるようだ。
「じゃあ……騙しただけ?」
「捕まってしまいましたから話しますが、私どもも探していたんですよ。確かに、乗っていた鳥を打ち落とせた筈なのに、影も形もなかったですからね」
「じゃあ、あなた達がクイナに矢を射たんですか!」
「ええ、取り引きに使いたかったものですから」
「どうして……」
「どうして? ふっ、呑気な方だ。私から、大切な切り札を掠め取って行きながら、挨拶がないばかりか、金を取りに来いと呼びつける」
『お金を取りに来いなんて、そんな無礼な事言ったことは……』
アサトが思い出そうとしている時、フィンが相手の名前を呼んだ。
「元、フォックス商会会長のフォックス・ダリル」
「フォックス商会!」
アサトは、遠い昔の義弟の過去を思い出した。




