一難去って
コツンコツン
「んみゅー、あ、朝ゃ~、ふみゃ~あ」
小さなお口を精一杯あけている。
ツンツン、コツンコツン
「みゅみゅっ。誰か来ちゃの?」
家を突っつく音がする。
扉を開けたら、長いクチバシで摘ままれそうになったのだ。
「みゅー! 危ないの! 食べ物じゃないから、はしゃまないぢぇ~」
「クワークワー(あら、虫じゃない)」
「んみゅ?」
見上げれば、灰色の大きな鳥が首を左右に振っている。
ーー以後、普通に喋りますーー
「ごめんなさい。良く見たら、あなた妖精ね? こんなところでどうしたのかしら?」
「みゅみゅっ。馬車に乗っちぇいちゃのに、起きちゃらここぢゃっちゃ」
クチバシで羽をチョチョイと鋤いた鳥。
「あなた、妖精の国に行くんでしょう?」
「うみゅ」
「山向こうの湖で、前にも小人に頼まれたわよ」
随分お喋りな鳥だけど、一人寂しかったみゅーには、力強さを与えてくれた。
「良かったらあなたも、乗せてあげましょうか?」
みゅーは、白い美しい竜に、アサトと乗った事を思い出し、うみゅと頷くのであった。
◇◆
親切な鳥に乗せてもらえて、飛び立ったみゅー。
首もとにシッカと掴まった。
「鳥しゃんの羽ふわふわあ」
これまで、竜やアサトが、風の抵抗を緩和する魔法を使っていたので、みゅーは、突風を知らない。
アサトの住む屋敷を見ようと、無理に首を上げたのがいけなかった。
風圧で、あっという間に飛ばされてしまったのだ。
鳥が気づいて、何度か拾おうとしたからか、魔物のガルーダに目をつけられてしまった!
ガルーダから逃げながらも、みゅーを救おうとしてくれた鳥だが、地上が近くなればそれどころではない。
「クワーー(ごめんなさい)」
と鳴いて、一目散に山の反対に飛んで行ってしまった。
尚も、みゅーを食べようとしていたガルーダは、地上に降り立ち、みゅーの落下地点で、口を開けて待ち構えていた。
「ふみゅーーー~」
このままじゃ、食べられてしまう……。