箱には……
「みゅーちゃん、今助けるよ」
アサトは、震える手で箱のフタをなんとか開けた。
覗けば、グッタリしている小さな姿が見える。
手のひらに寝かせて確認しようとしたが、辺りが暗くなってしまったからなのか、涙が溢れて止まらないからなのか、顔が良く見えない。
ほんのり温かい体温が手のひらに伝わってきて、生きている。とやっと安心したのだ。
少し落ち着いてきたアサト。
「灯りを出して、怪我とかしてないか確認しよう」
魔道具の灯りを出してから、ゆっくり小さき者を確認したら……。
「みゅ、みゅーちゃんじゃない!」
アサトの手のひらで、震えて涙していたのは、ノーミードだった。
フィン達も、アサトに知られないように、浅く掘った砂利の中に隠れていたのだ。
まさか、敵も穴を掘っていたとは知らず、アサトの動きを悔しい思いで傍観させられた。
だが、フィンは、穴の中にいた者の魔力量で、そいつを特定する事が出来たのだ。
「思った程魔力はないな」
泣いている様子のアサトを慰めたいが、我慢して敵を追うことにする。
「くっ、こんなにアサトを悲しませた罪は、許しがたい!」
フィンは、風魔法の風に乗って、微量な魔力を追って行ってしまった。
残った者達は、フィンディアルの奥方の元に向かい、岩の下を調べる者と、奥方のアサトを送り届ける者とに分かれたのだ。
アサトは、弱っているノーミードに薬草エキスを飲ませて、柔らかい布で包んであげてから、フィンの部下達に、ノームの里に届けるように頼んだ。
そして、切っておいた髪を一本取り出して、魔石の粉を撒きながら、半分(髪の毛)を探せと念じたのだ。
青白く光ったその様子は、部下達には魔女に見えたようだ。
それから、アサトは、その青白く光る髪を追いかけて、山を下りて行ってしまった。
「何をしている、早く追いかけろ!」
その中の年長の者が、指示をしたようだ。
『こっちの方向は、シャダイン王国のダイネル領の方かな?』
風魔法を使って、いつもの動きとは思えない動きで、髪の毛を追いかけるアサト。
すると、行く手の先にボンと言う炸裂音がして、木の葉が舞い上がり、鳥達がざわめいてるのが見えた。
「あそこに違いない」
木々の中に突っ込んだアサトが見たものは……二つの倒れる影と。




