一人ポツンと
「みゃあ~、良く寝ちゃ。ん? みゅみゅっ!」
リーンリンリン
ウォー~ン
辺りは真っ暗で、虫や魔物の声が近くから聴こえる。
「みゅーっ!」
ガタガタ煩かった馬車は何処にもなく、風が草の濃い緑の臭いを運んできた。
どうして、地面の上にポツンといるのか、それよりも何よりも、心細さに震えが止まらない。
そんな時やっぱり思い浮かぶのは……。
「うえっ、うむゅ、アシャ……ト」
会いたくて寂しくて、一人泣いていたみゅーに、タッタッタッタ、ハッハッハッと、大きな獣の気配が近づいていた。
「どうしちゃら……(どうしたら)」
みゅーは、モコふわの布にすがりたくなって、思い出したのが、バックに入っている家だった。
何も考えずに、家の中に入って、ハンモックに載った。
いつもの、モコふわの布に包まれたら、それだけで、凄く安心してしまったのだ。
◇◆
静かになった外。
実は、これには理由があって、この家にはアサトが育てた竜の臭いが、タップリとすりこまれている。
なので、先程の魔物は、みゅーがこの家を出した途端に、驚いて逃げ帰ってしまっていた。
みゅーは、ふくふくのほっぺを、モコふわ布にすりすりと擦り付けて、ご機嫌だ。
「みゅーみゅー。安心しちゃりゃ、お腹しゅいちゃの」
みゅーが、ハンモックから下りると、すぐそばに紐が下がっていたので、何だろうと思って引っ張ってみる。
パチッと明かりが灯り、部屋の中が明るくなった。
「みゅみゅっ、灯りでしちゃ(灯りでした)」
明るくなった部屋の中を見回せば、屋敷にあった冷庫を発見した。
「アシャトが、良く食べ物を出しちぇいちゃ箱ぢゃ」
真っ白い箱を開ければ、瞳がキラキラに!
中にはプリンやサンドパン、果実水等が沢山入っていたからだ。
「みゅー」
テーブルにも運ばずに、その前で夢中で食べてしまう。
「おいちぃ」
しかし、いつしか夢中で食べていた手が止まり……。
「ボッチは、しゃみしぃ……」
本来なら仲間と過ごし、妖精の心構え等を教えてもらい、自立を促されるのだが、みゅーは、竜騎士の屋敷で愛されて育ったので、人間くさく育ってしまったのだ。
それでも、涙を堪えてきちんと片付けて、朝まで眠ったのでした。