湧き水の広場
ここからだと、里の方が遠いことがわかって、帰りに寄る事にした。
「ノーシャス、噺鳥しゃんは置いてきちゃの?」
「さっきまで一緒だったさ。多分、コルネラの所に行ってる」
「しょう」
「今日は、この先の地下水の湧き水が出ている場所で、休むとしよう」
「うみゅ」
◇◆
水があるところには、様々な小動物が集まっていた。
「みゅみゅみゅっなの! ふわふわ、モフモフが一杯」
子供みたいに、興奮している。
色の薄いのや縞模様したモフモフ達が、追いかけっこしたり、ふわふわの塊が丸まって寝ていたり、夢の光景が広がっていた。
みゅーも、縞の尻尾を追いかけて、すっかり溶け込んでいる。
ノーサスは、みずを飲んでから、隅に倒れている子ネズミに近づいた。
他のネズミに比べると、体つきが小さく発育が悪い様子だ。
息も細い。
水を葉にくんでやれば、飲んでいる。
「お腹すいてるんだな」
ノーサスは、木の実しか持っておらず、こんな場所では、煮炊きもできない。
そこから、また少し離れた場所には、前足を挫いたのか、しきりに舐めている木鼠が踞っている。
壁に背を預けたノーサスは、どちらも秋までもつだろうかと、暗い気持ちに沈んでいった。
「ノーシャス、もう疲れちゃ?」
黙って首を振り、視線を先程の子ネズミに向けた。
「ふみゅう?」
みゅーは、テテテと近づいて具合が悪いのかと訊いていた。
そこからノーサスは、驚きの連続に目を見張ることとなった。
その場に居た皆を下がらせると、小さな家を出したのだ。
竜の気配を感じる。
そこに入ってから出てくると、緑の飲み物と、綺麗な器に盛られたプルプルの食べ物を手に持ってきたのだ。
子ネズミに、ゆっくり食べさせている。
緑の飲み物を飲ませた後には、暖かそうなかけ物をかけてあげていた。
そして、やはり、近くにいた木鼠にも気づき、カバンから薄い草色の塗り薬を出し、挫いた足全体に塗っていた……少し光っている。
「キュキュー」
みゅーは、足を舐めようとするのを止めて、小さな三角の布を巻いていた。
さっきまで、暗い気持ちでいたノーサスは、今では興味津々だ。
「数々のこの品は、君が作ったのかい? 是非、里に戻るべきだよ!」
「うみゅ? こりぇは、全部アシャトがくりぇちゃんぢゃよ。ぢゃから、みゅーは、早く帰りちゃいの」
「君は、里に寄るべきだ」
「うみゅ。帰りには寄りゅね」
「それでもいいから、忘れないでくれよ」
「うみゅ。大丈夫」
『ノーシャスしゃんは、真面目なノーム。まるで、竜騎士しゃんみちゃい』
みゅーは、遠い屋敷を思い出した。




