発端
「先程の質問に、まだ答えてませんでしたね」
「ふみゅう」
「あれはですね、伝説の海の聖獣様が残したお身体の一部と言われています。それを真似て作られた代用品です」
「しょりぇを、こんなに沢山吊りゅしちぇりゅの?」
「はい。私達地下に住む物達に危険をお知らせ下さると、皆は、信じているのです」
「アシャトがくれちゃ(くれた)、この花飾りみちゃいなんぢゃ(みたいなんだ)ね」
「アサト様が作られた、花飾りって何ですか?」
「みゅーの、このカバンにちゅいちぇりゅ(付いてる)コレが、誰か近付くちょ、リンリン鳴るの」
「まあ!」
「本当ですよ。私達が下山するまで、とても助かりましたから」
デルタは、みゅーの話しを肯定した。
「流石は、神子様」
うっとりするルーシェ。
ここから、更にアサト崇拝が酷くなり、騒動に発展してしまうのだが……。
この時点で、今の二人は、想像もしていなかった。
◇◆
更に地下に案内された二人。
そこは、洞窟のようになっていて、光る胞子のような物がふわふわと浮いていた。
「そろそろ帰って、みゅーとゆっくり休みたいんですが?」
デルタが問えば、ルーチェは冷たく言った。
「貴方は、帰っていいですよ。私達が招待したいのは、みゅー様だけですから」
それを聞いたみゅーは、ふわふわお耳をモフるのを止めて、デルタにダイブした。
「わわ、わっ」
デルタが危なっかしくみゅーをキャッチして、胸ポケットに入れるのを悔しそうに見るルーチェ。
「では、後日お迎えにあがります。私も配慮を欠いた行いでした。深く反省致します」
そう言って、ニッコリしたのだった。
やっと解放されたデルタは、みゅーを自分の家ではなく、ギルドに連れて行ったのだ。
「ヂェリュ、お家は?」
「みゅー、良く聞いて。なんだか、いやな予感がするんだ。みゅーは、ここから山に向かった方がいい」
意味がわからないみゅーは、デカ目でジッとデルタを見詰めた。
「私は、決心したんです。何の取り柄もない私を助けてくれたみゅーの、従者になる事を」
「従者?」
みゅーの重い頭で、ポケットから落ちそうになるくらい頭を傾げた。
「ぷっ。兎に角、今は、私を信じて山に向かって下さい」
「うみゅう。ヂェリュの事は信じちぇりゅかりゃ(信じてるから)、旅を続けりゅね」
うふふと笑ったみゅーに、満足したデルタは、薬草や木の実等をギルドの店で仕入れてもたせ、職員に山に行く手立てがないか訊いてみた。
すると、今では、神子様の作られた転送装置があるので、暇を持てあましている配達鳥が沢山待機しているそう。それに乗せればいいと教えてくれた。
しかし、料金が、銀貨三枚すると聞いて支払いに困った。
すでに、捜索費用を払い、今もなけなしのお金でみゅーに薬草を買ったばかりだった。
みゅーは、カバンに入っていた金貨をデルタに渡した。
「他にも、キラキラした石がありゅけぢょ、ヂェリュいりゅう?」
「い、いいえ。これで充分です。ありがとうございます」
◇◆
それから、デルタは、ポケットに話しかけながら帰ったのだ。
みゅーとは、ギルドで別れたが、気のせいだったかな? と、思うデルタ。
「シャダイン王国で待ってますね」
みゅーとの別れ際には、そう伝えたが、果たして再会出来るかどうか。
みゅーのいなくなったポケットに、やる気を詰め込む事にしたデルタだった。




