聖堂
三つの山みたいな入口の木戸を開けたルーシェは、デルタを引っ張りながら、階段を降りて行った。
「司祭様は、いらっしゃいますか?」
広く掘られた地下には、女神と思われる像に向かって、祈りを捧げる者達が点在していた。
「みょぉ、地下に広い空間ぢぇしゅ」
「ここは、大昔に作られた大聖堂なんですが、地下を掘った土を、町中に盛っているうちに、いつの間にか地下に埋もれてしまったと言う建物ですから、補強するのが大変だったんですよ」
「ふみゅみゅ」
それから、良く見たら、丸い物が先に着いた、触角みたいな物が幾つも、垂れ下がっていた。
「リューシェ、あれは、なあに?」
みゅーが、小さな指を差せば、すぐにわかったみたいで、教えてくれた。
「シャダイン王国には無い物ですから、隣国から来た方は、皆さん不思議に思われるみたいですね」
笑うと、ふわふわの三角耳の先が下を向く。
みゅーは、ピョンとルーシェの鼻に張りつき、ふわふわ耳を目指したのだ。
「うぷっ」
デルタは、いつ怒りだすかと、ハラハラしていたのだが、ルーシェは、「引っ張らないで下さいね」と言っただけだった。
「ルーシェ、司祭様に何用ですか?」
「助祭様。突然すみません。どうしても、神子様と暮らされていた、ノームのみゅー様にお話しをして頂きたいと思いまして、こうして、お連れしたところでございます」
「神子? アサト様と同居されていたと?」
「はい」
「黒目黒髪の、乙女とみまごう程の美貌の主であるぞ?」
「あなたの暮らしていた方は、このような方なのでしょう?」
「うみゅ。アシャトは、黒くちぇ綺麗なお目目に、黒くてチュヤチュヤな髪をしちぇいちゃよ」
どや顔するルーシェ。
「おおっ。さあ、みゅー様。こちらにどうぞ」
更に、地下に連れて行かれたのであった。




