デルタの帰還
「ふみゅ? ガリューヂャ様がいない?」
「そう言えば、見かけませんね」
二人は、キョロキョロした。
遠くからでも見える、クリスタルのお城。
その周囲には、飛竜が飛んでいる、黒い影が見えた。
「こちら側には、飛竜が多数飛んでますから、難しいかもしれませんね」
「みゅみゅっ! 向こうには、竜しゃんが沢山いりゅよ?」
「先日、この大陸に降臨されたのですよね。カーリング皇国の国民は、歓喜に湧いてます。それには、みゅーの大好きなアサト様と、雷竜様が関わっていらっしゃると、噂になってますよ」
「アシャトの家族ぢぇ海に旅行に行っちゃの。その時に、海竜しゃんと出会っちぇ、海竜しゃんが平和な国があるっちぇ話して、それを聞いて白銀竜しゃま達がきたんぢゃっちぇ」
「!」
平民のデルタには、驚く情報ばかりを口にするみゅーに、只、ただ、崇拝するばかりだった。
家族として雷竜と過ごしたみゅーと、カーリング皇国では、竜を神聖視しているので、概念が違うのである。
アサトなどは、神子扱いだ。
みゅーとしては、世間話しのつもりだが、デルタにしてみたら、雲の上の話しなのである。
みゅーは、デルタの凄い者でも見るような態度が、壁のように感じて、ちょぴり淋しく思っていることを、デルタは知らない。
◇◆
山を下りると立て札があり、サンドベルの町となっていた。
「帰ってきたあー~!」
デルタが叫んだその時だった。
向こう側から、数人の冒険者だろうか、ものものしい感じで、向かってくる。
みゅーは、ジーッと観察していた。
「お前、一人で下山したのか? まさか、デルタじゃないだろうな?」
三角耳のついた、筋肉ムキムキの虎男が、グイっとデルタの腕を引いたので、みゅーは、すかさず眠りの粉を撒いた。
虎男は、体をフラフラさせて、やがて座り込んだように眠ってしまった。
後ろにいたメンバーに緊張が走り、一触即発状態になる。
それなのに、デルタのポケットから、ヒョッコリ顔を出したみゅーは言った。
「みゅみゅっ! 初めましちぇ。みゅーでしゅ」
「……」
「……」
「可愛い!」
魔法使いの女性冒険者が、辛抱たまらず近づいて、みゅーに人差し指を向けたのだ。
みゅーは、アサトとの挨拶を思い出して、ぷくぷくほっぺを擦り付けた。
これに、魔法使いはきゅん死にした。(瞬殺)
「はわわわ」
と言っている。
それから、ポケットから飛び出したみゅーは、神官のもふもふ尻尾に飛び付いて、「モコふわなの」とご満悦だ。
「いや~、そこはやめて~」
神官の狐の冒険者は、自分の尻尾を追いかけて、くるくる回って目が回ってしまったらしい。
その様子を見せられて、デルタと冒険者のリーダーの剣士は、為す術べなく立ちつくす。
みゅー、恐るべし。




