地下の穴
「やっと、国境を越えました。後は、山を降りるだけです」
ビョォーー。
みゅーは、体に命綱をつけられ、今は、デルタの内ポケットに入っていた。
言われていた通り、凄い風なのだ。
さっきも、山の上から景色を眺めようとして、みゅーは飛ばされそうになっていた。
カーリング皇国側であれば、飛竜に乗った竜騎士が見回っているので、いざとなれば、助けを求める事が出来る筈。
『一安心です』
デルタがそう思った時、右足がズボッと穴に落ちたのだ!
「のわっ、いーーっ!」
したたか、又の間を打ってしまい、デルタは、声にならない叫びをあげる。
まだ、性別のないみゅーには、その理由がわからないので、クネクネ這うデルタに、不思議そうにする。
デルタの体を伝って、みゅーが、腰の部分まで到着すると、デルタが空けた穴から、六つの目と目が合ったのだ。
「みゅみゅっ!」
「ムキュキュ!」
そのまま、ズリズリと後退ったみゅーは、デルタの鼻の頭に飛び付いた!
「ヂェリュ! 穴の下から、むきゅむきゅ言っちぇりゅ!」
「ムキュ? あ、大変だ。小動物達の棲みかを壊してしまったかも」
「うみゅ。目が六ちゅこっちを見てちゃの」
「フゥー」
やっと、復活したデルタ。
「参ったなあ。修復してあげないと、山の動物達や小人が困ってしまうね」
「うみゅ? 小人?」
「そう。こっちでは、風が強いから、みゅーみたいな小さな妖精や小動物達は、木の洞から穴へ。穴から地下へと通路が出来ているんですよ」
ニッコリするデルタは、年齢より若く見えた。
「さて、木の皮を剥がして載せて、土を盛ればいいと思うんだ」
「みゅー、ちょっと小人しゃんに挨拶しちぇきちぇもいい?」
「いいですよ。私は、そこで、木の皮を剥いでいますから」
デルタは、紐をほどいて、みゅーを穴に降ろしてあげた。
穴の中では……。
「ノームだ」
「壊した」
「人族もいた」
ザワザワと騒ぐ声と、光る目。
「みゅみゅっ! 初めましちぇ。私、みゅー。もう一人は、ヂェリュチャ(デルタ)っちぇ言うの。今、木の皮を剥がしに行っちぇりゅから、ちょっちょ(ちょっと)、待っちぇ下しゃい」




