旅立ち
「明日、向かおう」
ようやく決心したみゅーは、緑の精霊に伝言を頼んで、旅立つ事にした。
みゅーは、キッチンに作ってもらった、自分用のミニチュアのマナーハウスを掃除した。
フカフカベッドのモコふわ布がお気に入りだから、置いていくのが躊躇われて……。
「しかちゃないの。諦めるの」
グッと我慢した。
明日は、みんなで朝食を食べたら、お手伝いをしている子供達の服にくっついて、外に出る事にしよう。
寂しくて、その晩は、枕をビショビショにしてしまったみゅー。
翌朝、枕をひっくり返して隠し、皆が食堂に集まるのを待っていた。
「おはよう、アシャト」
「おはよう、みゅーちゃん」
立ち止まったアサトは、みゅーを掬い上げて頬擦りした。
「みゅーちゃん、決心したんだね。寂しくなるよ」
「みゅみゅ! なんぢぇ分かっちゃの?」
「家族だから、分かることもあるんだよ」
そう言って、ソッと下ろした後に、アサトは、斜め掛けカバンを差し出した。
「みゅーちゃん、これを持って行ってね」
花の飾りが付いた可愛いカバン。
「これは、時間停止を付与したアイテムバックだから。この中に必要と思われる物を入れておいたよ。後で確認して使ってね」
「アシャト……ありがちょう」
今度は、お目目がビショビショになってしまった。
柔らかい布で、涙を拭ってくれたアサトは、「どうか、無事に帰って来てね」と言ったから、みゅーの心は揺れた。
なんとか、「うみゅ」と返事をして、そのカバンを肩から提げたのだ。
アサトは、振り返って、お手伝いの子供一人に頼んだ。
「プルト、お使いを頼めるかな?」
みゅーは、プルトの服に潜り込んで、ランダル領に向かう門まで連れて行ってもらった。
そこから、プルトが、ランダルの山に住む、管理人のグラドに宛てた小包を、届けてくれる商人を探したので、こっそりその馬車に飛び移った。
いつまでも手を振ってくれたプルトに、みゅーも手を振った。(多分、小さ過ぎて見えてない)
こうして、みゅーの大冒険が始まりを告げたのだ。