国境前の一時
山を登り、国境を目指すみゅー達。
「みゅーみゅー」
高山植物の咲き乱れる高原に到着だ。
高い空の下にある、踏み荒される事のない花畑。
辺りには、涼しい風が吹いて、二人は、谷底からの解放感を味わった。
ピンク色の小花を見たみゅーは、「みゅみゅっ! みゅーと同じピンク色しちぇりゅー!」
興奮度MAXで、大きく見開いた目は、こぼれ落ちそうになっている。
反対に警戒しているデルタは、羽虫達が舞い踊る中、発見したのは魔獣刺熊だ。
あわや、戦闘に発展するかと思いきや、可愛い触角と尻を振って、蜜集めに勤しんでいる様子。
「チュリチュル♪チュルチュリ」
「チュルチュリ♪チュリチュル」
美しいハーモニーは、魔獣刺熊達の鳴き声のようだ。
「楽ししょう」
「本当に」
デルタは、メルヘンの国(カーリング皇国)出身なので、妙に落ち着いた。
「みゅーも、お花しゃんの蜜を味見しゅりゅ」
デルタのポケットからピョインと飛び出し、ポテンと小花の上に載るみゅー。
頭なのか尻なのか……釣鐘草に突っ込んで、モショモショしている。
デルタは、色のない花の根を掘ることにした。
「確か、栄養が豊富だった筈」
コンビで、いったい何をしているのやら。
その後は、花粉まみれになったみゅーに、くしゃみが止まらなくなったデルタでした。
◇◆
「国境を越えると、風が強くなりますから、今のうちに、紐を着けておきましょう」
「みょお! しょんなに、強いの?」
「はい。シャダイン王国は、この山脈に守られていますから、この温暖な気候もあって、豊かな暮らしを営まれていますよね」
「みゅ? ヂェリュの国は、豊かじゃないの?」
「いえ、両国は、協力体制が整ってますから、こちらも潤ってますよ」
たまたま見つけた、フサフサの実を見つけて、仲良く食べていた二人。
ガルーダは、見当たらない。
まん丸の透明な実を剥いて渡せば、あむう、と噛りつくみゅー。
「みゅーは、本当に可愛いな」
「アシャトも、いちゅも言っちぇちゃ」
「そのアシャトさんって、何してる人?」
何気なく訊いたその人は、なんと、カーリング皇国でも、有名な人だった!




