夕食の風景
「私も、結構、経験を積み重ねたと思ってましたが、世の中は広いんですね」
あの後も、岩盤兎や極尾獣樽なんかに二人は、襲われていた。
デルタに、布で、眠り粉を吸わないようにしてもらい、隙を見て、みゅーが粉を撒き、それを、デルタが何とか倒したのだ。
それで、今夜の夕食は、極尾獣樽を焼いている。
デルタが持っていた魔道具コンロを使用してだ。
ガルーダも降りてきて、ちゃっかり、肉を千切って食べている。
極尾獣樽の肉は、山のご馳走と言われていて、甘い脂肪のところが、人気なのだ。
横で食事するガルーダに、おっかなびっくりしながら、デルタは、自分の焼けた肉を少し切って、みゅーに渡した。
「みゅー、ありがちょう」
アサトのところでは、甘く煮た豆やシャリシャリした野菜を食べていたみゅー。
だけど、デルタがくれた肉は、甘くて柔らかかったから、みゅーは、ムニムニと頬張って食べたのだ。
「美味しい」
「もっと、切りましょうか?」
デルタは、小さなみゅーが、頬をパンパンにして頬張ってる姿に、顔が弛んでいった。
「ありがちょう。ぢぇも、もういいの。お水飲んぢぇくりゅね」
出してあった家に入って行く。
ガルーダは、みゅーがこの家を出してから降りてきたのだが、デルタは、魔物の近づかない理由を、ガルーダが居るからだと思った。
そもそも、この二国しか存在しない、小さな大陸には、ガルーダは、唯一の固体なのだ。
だから、竜と同じくらい、幻の存在と言われている。
殺気を感じて横を見れば、食べ終わったガルーダがデルタを見ていた。
「ヒィー」
ちょっと仰け反る情けないデルタ。
鋭い睨みに、残っていた肉を、おずおずと差し出せば……鋭利な刃物のような硬いかぎ爪で、ガバリと空を舞い掠め取って行った。
「フゥー」
冷や汗を拭っていたら、みゅーが出てきたのだ。
「みゅー、もう、寝りゅね。おやしゅみなしゃい」
ヌッと、ガルーダが嘴でみゅーを捕まえる。
「みゅみゅっ! ガルーヂャ様、何しゅりゅの~」
みゅーを目の前に降ろしてから、「あれをやれ!」と命令する。
「ありぇ?」
ない首を傾げるみゅーに、和まされるデルタ。
「ふみゅ! 粉をかけちぇ欲しいの?」
驚くみゅーに、今更なんだ? と言う感じのガルーダ。
変わった関係だなあ。
そう思いながら、デルタは、興味深く観察するのだった。
その後、ガルーダが、肉を食べ終わるのを待たされたみゅー。
眠りそうになると、嘴で小突かれていた。可哀想に。




