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地の妖精ノームの大冒険  作者: 風 ふわり
みゅーちゃん編
13/97

くるくるり

 「はりゅ? お山に着いちゃけぢょ、ぢょっち(どっち)?」



 みゅーは、奥の方に進むことにして、とりあえず歩いたのだ。


 山裾のこの辺りは、草がまばらで、お日様は、今、真上からそそいでいる。


 みゅーは、大好きな大地の匂いを、思い切り吸い込んで、霊力を上げた。


 何処か、懐かしいような水音が聴こえてくる。


 流れる涼やかな音。


 まるで、羽根が生えたように、軽やかに走る体。


 『この感じ、みゅー知っちぇりゅ』


 ところが……。


 リーンリンリン


 「あ! 誰かこっちにくりゅのかな?」


 速度を落として、周囲を見渡せば!


 ドドドドの地響きとともに、「ブゴブゴ」と、穂先色した縞模様の猛獣が、こちらを目指して真っ直ぐに向かってきていた。


 もの凄い勢いに驚きはしたが、ガルーダで慣れたのか、余裕で眠りの粉を撒いた。


 が、疾風で霧散してしまったようだ。


 鼻を低くくして向かってきたので、みゅーのカバンが牙に引っ掛かってしまい、宙ぶらりんのまま、山の奥へ連れて行かれてしまった。


 「みゅー、しょっち(そっち)じゃないの。落ち着いちぇ? 牛しゃん?」


 「ブゴーッ!」


 みゅーの高い声が気に障ったのか、振り落とそうと、今度は、顔を振ったので、みゅーは、スッポ抜けて飛んで行った。


 「みゅみゅみゅっ! 今日は、ぢょうなっちぇりゅの?」


 くるくる回転して落ちた先は、茶色の毛の上。


 「痛くない。ぢぇもごわごわ」


 手触りが気に入らなくて、モソモソしていたら、大きな物に摘ままれた。


 「何だ、お前?」


 顔の前にぶら下げられたが、みゅーは、きちんと挨拶をした。


 「こんにちは。みゅーぢぇしゅ」


 「なんだ、食べられる虫じゃないのか」


 男は、みゅーを手のひらにのせた。


 「お前が、私の最後を看取る者か」


 力なく岩に凭れた。


 「みゅみゅっ! 目から血がぢぇちぇりゅ(出てる)。痛い?」


 「ああ、それより、腹が減った」


 みゅーは、カバンから非常食用の、果実を取り出そうとして、落とした。


 ゴトリ


 「ん? んーっ! これは、赤い実じゃないか……どっから……」


 男は、ゴクリと喉を鳴らして、みゅーをサッサと手放し、赤い実を両手で取ってシャリシャリ食べた。


 種も噛んで、芯をしゃぶっている。


 みゅーは、その様子をデカ目でジッと見ていた。


 気づいた男は、気まずそうに謝ったのだ。


 「すまない。あんたの大切な食料だったんだろう?」


 「みゅっ。まぢゃ、ありゅかりゃ(まだ、有るから)、大丈夫」


 「ははっ。もう駄目だなんて諦めてた筈なのに、食べ物見たら、がっついちまうなんてな」


 「しょりぇより、こりぇ、使っちぇ?」


 「今度は何だ? お前、小さいのに、マジックバックでも持っているのか?」


 「こりぇは、アシャトに貰っちゃの。素敵ぢぇしょ?」


 「お前、誰かに飼われていたのか?」


 「先に、こりぇを、痛い目に使っちぇ?」


 みゅーと、同じ位の容器に入った空の色した液体だ。


 男は、言う通りに、容器を持った。


 「どう使うんだ?」


 「アシャトの説明書に、怪我したら容器を押してつけるように書いてあっちゃ」


 「ポーションか? ありがたい」


 男は、身体をずらして仰向いて、その容器を目の傷に垂らした。


 が、みゅーサイズなので、霧吹きした一粒では良くわからず、半分使ってもいいかと確認して、蓋をあけた。


 慎重に近距離から垂らせば、カーッと熱くなったが、直ぐに視力が回復したのだ!


 「ま、こ、伝説、上級ポーション……」


 「ぢょう(どう)? もう、痛くない?」


 「……」


 「女神様、救いの妖精を差し向けて下さり、感謝致します」


 手を胸の上に組んで、泣いていた。


 「みゅみゅみゅっ! しょんな、アシャトの薬が効かないなんちぇ」


 男の目に駆け寄るみゅー。


 すると、瞼を上げた男は、美しい飴色の瞳をみゅーに見せた。


 「治っちぇりゅ?」


 「ああ、みゅーの姿が良く見えるよ。可愛い妖精なんだな」


 「みゅー、良かっちゃ。アシャトの作りゅ物は、世界一なんぢゃかりゃ」


 「ふふっ」


 男は暫く泣いていたようだが、そのうち、スースーと寝息が聞こえた。


 みゅーは、自分もお家を出して、冷庫から食事を出して食べたのだ。


 実は、これは、冷庫ではなく、転送装置だとは知らないみゅー。


 アサトは、心配で心配でしょうがなくて、こっそり、転送装置を使って、生存確認をしているのだ。


 減っていれば、兎に角、安心する。


 みゅーは、そんな事は知らないので、減ったら増える物だと、勝手に思っていたのだ。

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