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地の妖精ノームの大冒険  作者: 風 ふわり
みゅーちゃん編
11/97

懐かしい話し

 それから、暫くの間、ガルーダは姿を見せなかった。


 みゅーは、地道に歩いて、やっと草原(くさはら)を抜けたのだ。


 そうして、ビュービュー言ってる崖に近づけば、ふわっと谷風に煽られて拐われた。


 今度は、強い風に乗ったみゅー。


 「みゅみゅーっ!」


 危険だと言うことも分からず、風に乗ってご機嫌だ。


 「くりゅくりゅくりゅり、くりゅくりゅりゅ」


 すると……。


 「くりゅくりゅくりゅり、くりゅくりゅりゅ」


 誰かが返したのだ。


 「一緒に歌っちぇくりぇちぇりゅ!」


 「誰しゃんなの~? 私、みゅー」


 「誰しゃんなの~? 私、みゅー」


 「誰しゃんなの~? オレ、ドッペンー」


 「ヂョッペンしゃん! ぢょこ(何処)~?」


 「ヂョペンしゃん! ぢょこ(何処)~?」


 「ドッペンさん! ここ!」


 みゅーは、硬い物にふいっと掬い上げられた。


 「ここ」


 「ここだね」


 「ここだよ」


 みゅーが目をあけると、真っ白な大きな猿が、自分を見詰めていたのだった。


 「ヂョッペンしゃん? 私、みゅー」


 「みゅー、来た」


 「来たね」


 「来たよ」


 みゅーには、別々の声に聞こえて、とても面白いのだ。


 「みゅみゅっ! 楽しい」


 「楽しい」


 「楽しいね」


 「そうだね」


 ふんわりした雰囲気が広がる。


 「ここで、何しちぇりゅの?」


 「退屈」


 「退屈だね」


 「してたね」


 「みゅーね、山に行きちゃいの」


 すると、ドッペンは、腕を組んで考え始めたのだ。


 「んー、どうする?」


 「どうしようか?」


 「どうしよう?」


 ◇◆


 「うん」


 「そうしよう」


 「それがいい」


 「連りぇて行っちぇくりぇる?」


 「駄目」


 「それは駄目」


 「駄目だね」


 みゅーは、しょんぼりした。


 「泣いちゃうよ」


 「泣いちゃうね」


 「泣かせたくないね」


 「遊ぶ」


 「遊ぼう」


 「それがいい」


 突然駆け出したドッペンは、みゅーを胸の毛の奥に突っ込んで、崖を横走りしたり、岩を跳んだりした。


 「一緒に駆けっこ」


 「駆けっこ」


 「一緒だね」


 みゅーは、ぎゅっとドッペンの毛を握って、頑張って顔を出せば、あっという間に山裾まで近づいていたのだ。


 「みゅみゅ、速~い、竜しゃんみちゃ~い」


 「竜しゃんみちゃ~い」


 「竜しゃん?」


 「竜!」


 ドッペンは、ピタリと止まったので、見上げたみゅーは、目が合った。


 「竜を知ってる」


 「竜の知り合い」


 「まさか……」


 「ぢょうしちゃ(どうした)の?」


 急に震えたドッペン。


 「黒髪」


 「黒い目」


 「竜に乗ってた」


 黒髪、黒い目と聞いたみゅーは、驚いて歓喜した。


 「みゅみゅみゅっ! アシャトを知っちぇりゅの?」


 「アシャト?」


 「アシャトか」


 「魔王だよ」


 「アシャトは、魔王ちぇ違うよ? 優しい女神様ぢゃよ?」


 「女神?」


 「違う違う」


 「魔王」


 深く頷いている。


 「もしかしちぇ、アシャトに怒られちゃの?」


 「アシャト恐い物くれた」


 「突然割れた」


 「我等、とても驚いた」


 みゅーは、いつも不思議な物を作り出す、アサトの姿が浮かんで懐かしくなってしまった。


 「アシャト、会いちゃいな……」


 「「「うへ!」」」


 「会いたくない」


 「会いたくないね」


 「そうだね」


 みゅーがアサトの事を考えている間に、岩の上に置かれていた。


 「お別れ」


 「お別れだね」


 「仕方ないよ」


 恐ろしいものには関わらない。


 みゅーは、ドッペンが聖獣だと言う事は、何となくわかっていた。


 だから、こう言った考えは、理解出来たのだ。


 「ありがちょう。ヂョッペンしゃ~ん!」


 背中はもう見えないが、きっと聞こえただろう。

  挿絵(By みてみん)


 ドッペン・ゲンガ【聖獣:山彦の精。山で聞こえた声を返すが、何分暇なので、普段はイタズラばかりしている。竜を誘き寄せては、竜騎士に遊んでもらっていたが……。】

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