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ライフ?ロール!  作者: 緋月夜夏
13/23

第13話

 早足で歩く笹木につられて、少し後ろを歩く俺。送ってくれるとは何だったのか。

 そのまま校舎を出て、校門の方へ向かう。


「あの、先生?何か急いで」


「…やっぱりか」


「はい?」


 笹木はただ前を見つめている。つられて目線の先を見る。


「あんたのせいで、宇川君は!」


「だから、しらねぇって言ってんだろうが!」


 少し先にいて聞こえづらいが、大声で叫んでいるのか内容まで聞き取れる。


「あんたが誑かすから!くそ女!」


「しらねぇよ!こっちはあんなやつ初めて見たわ!」


「嘘つき女!どんな風に宇川君を騙したのよ!」


「だから今まであったこともねぇよ!」


 中途半端な時間なので帰宅途中の生徒は少ないとはいえ、これだけ騒いでいれば目立つ。特にグラウンドで練習している陸上部の一部には練習を止めて2人を見ている人もいる。


「早く止めるぞ」


「はい」


 2人に近づいていくと先に気がついたのは紅葉だった。


「あっ、継野!遅かったな」


「あっ、ちょっと!」


 怒鳴り合いをやめてこちらに来ると手を引いてくる。


「さっさと帰ろうぜ?なんか絡まれてるんだよ…」


「なっ、あんた!」


 掴みかかろうとした亀梨さんを笹木が抑える。


「離して、下さい!」


「いいから、落ち着け。水月も煽ってるんじゃない」


「別に煽ってねぇよ」


「とりあえず、亀梨と水月は話を聞くから付いて来い。継野は帰っていいぞ」


「はぁ?オレは関係ないだろ!」


「あるわバカ。ほら、さっさとついてこい」


 笹木は駄々をこねる水月を引っ張っていき、その後ろを亀梨さんがついていく。俯きながら歩いていく背中を見ると罪悪感が再燃してくる。


「…帰るか」


 仕方がない。そう自分に言い聞かせるようにしながら帰途についた。






***





 家に帰ると、リビングのテーブルで未来が勉強をしていた。


「ただいま。珍しいな」


「…別に。なんとなくだから」


 一切視線を合わせることなくペンを動かしている。


「…さっさと部屋行けば?」


「いや…」


 未来の隣に座る。


「な、なに?」


「今日はここでやろうかと思って」


「邪魔だから!いつもはそんなことしないじゃん!」


「未来だっていつもは部屋でやるだろ」


「だからって真似しないでよ!


「ペンが止まってるぞ」


「…すっごいむかつく」


 そういうと未来は勉強を再開した。俺も教科書を開く。

 合間に未来に視線を向けるが黙々と勉強をしていて気づく様子はない。


 復習を続けていると外が暗くなってきた。ちょうど区切りがついたので未来を見ると、未来もこちらを見ていた。


「どうした?」


「別に。なんでもない」


 手が止まっているので、覗き込む。


「やめて」


 未来は隠そうとしたがもう遅い。一面真っ赤に染まったノートが見えた。


「未来…」


「ち、違うから!まだ習ってないだけだから!」


 書かれた式を見えなくするかのように塗りつぶされている。


「…間違えたとしてもそこまでやることないんじゃないか?」


「だって…全然わかんないから」


「もしかして公式とかも何も見てないのか?」


「自分がどれくらいできるかの、確認?」


「…教科書持ってこい」


「えっ、でも…」


「いいから」


 開かれた問題集を遡ってみると同じ様に塗りつぶされた場所が多かった。一部は公式などを考えずに力ずくで解いたのか文字が小さくなっている。


「持ってきたけど…」


「今やってたところのページ開いて」


 問題集は閉じておく。

 未来はパラパラと教科書をめくり、目的のページを探す。


「ここ?」


 問題集に書かれていたグラフと似たものが書かれているページを見せてくる。


「そうだな。それで、そのページのうえになんて書いてある?」


「…発展」


「基礎を抜かして発展なんて出来るわけないだろ」


「だって…問題集が」


「問題集だって公式とかが書かれてるページあるだろ?ちゃんと読んだか?」


「読んでない」


「だったら教科書の方を読んでおいた方がいいぞ。そこまで覚える必要はないけどなんでその公式になるかとか書かれてる時もあるし」


「うん」


「習ってないところはさっきと同じようにやってたんだよな?」


「見たの?」


「放っておくわけにいかないからな。仕方ないから最初からやるぞ。授業はちゃんと聞いてるか?」


「…うん。眠くても我慢してる」


「よし。なら、復習からな。今からやり直しても全然間に合うから」


「ノート持ってくる」


「教科書に直接書き込んだらどうだ?」


「やだ」


 教科書にはマーカーや小さい文字で補足していたりと授業で習った場所かどうかがすごくわかりやすくなっている。


「持ってきた」


「なら、最初からな。ここは習ってるみたいだし、練習問題から始めるか」


 言われた通りに解き始める。


「字綺麗だな」


「うるさい。茶々入れないで」


 数問だけなのですぐに終わる。答えを確認すると全問正解だった。


「ちゃんとできてるな」


「この前習ったばっかりだし…」


 習った部分の問題は全て正解していた。


「復習しっかりやってるんだな」


「そんなの当たり前でしょ」


「習ってないところは基礎も全くできてないんだからちゃんと教科書を読んだ方がいい。最初は公式見ながら解いて、徐々に見なくても解けるようになるから、発展はその後。問題集を解く時も隣に確認用の教科書置いた方がいい」


「うん…」


「じゃあ、ここ解いてみて」




***




「よし。ちゃんと出来てるぞ」


「やった」


 教科書の問題から始めて、間違えた時には指摘することを繰り返しているうちに、最終的に問題集も解けるようになっていた。

 頭を撫でても払われないことから機嫌がいいのだろう。


「というか、母さんは」


「あっ、終わったー?ご飯にしてもいい?」


 母さんがキッチンから顔を出した。言われてみれば匂いも漂ってきていた。


「いつの間に帰ってきてた?」


「ちょっと前。それにしても…仲よさそうにしてたわね」


「ち、違っ」


「否定しなくてもいいのにねぇ」


「〜っ///」


 未来は顔を真っ赤にして教科書や問題集を掴んで階段を駆け上がっていった。


「だから、ご飯だってば〜!」


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