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恋は虹色に光輝く  作者: 治崎 龍也
7/7

虹色に光輝く

完結です。

光輝が死んでから既に一週間が経った。

彩花は光輝の死のショックから判断できる色が白黒に戻っていた。

リハビリを何度も何度も繰り返しても色が戻ることは無かった。


「彩花ちゃん。大丈夫?」


「……はい。」


彩花は食べる量も減り。

人付き合いができなくなり。

全てにおいて悪化していた。


「彩花ちゃん。今日、光輝くんの部屋の掃除なんだけど。一緒に行く?」


「……。いいえ。遠慮しておきます。」


「そう。わかったわ。」

そう言って月姫花は彩花の病室を出た。


「あれは。かなり、深刻ね。私がなんとかしないと」

月姫花は一人強く決意した。


「私は今。なにをすればいいんだろう。」

彩花は誰もいない病室で一人呟く。


「そうだねぇ。出来る事をすれば良いんじゃないのかねぇ。」


「美津子おばちゃん?!?!」


返事はない。


「なんだ。気のせいか。ほんとまいっちゃうな。」


彩花は誰もいない病室で一人咳をした。


「私は尾崎放哉(おざき ほうさい)ですか??」

一人でクスッと笑うが。その笑みに輝きはない。


「咳をしても一人。私はなにをしてももう一人。」

儚い二つの糸は。片方がほつれ。切れた。

もう片方はボロボロにほつれていて。

既に切れる寸前だった。



月姫花は一人。光輝の病室を掃除していた。

亡くなった患者の病室掃除は患者のものは基本的に遺族に渡すんだが。光輝の意向により全て捨てることになっていた。


「あら?ここのロッカー鍵かかってる場所ね。」

ベットのすぐ横。一つの鍵穴付きの引き出しに目がいく。


「ここは確か。」

前に一度見たことがある。光輝が熱心に書いていた。

この中には。きっと。光輝の闘病日記がある。


「開けないと。」

月姫花は合鍵で開ける。

―ガチャ。

開いた。

中から出てきた一冊の少し太い本。

その表紙にはしっかりと書かれていた。


「闘病日記。駿河光輝。」

月姫花は少しだけそれを見る。

そしてある事を思う。


「これは。捨てたらダメだわ。彩花ちゃんに渡さないと。」

そうして。月姫花は光輝の病室を飛び出しあやかの病室へ向かった。



「もう。やることもないし。寝ようかな。」

彩花は一人呟く。そこへ来客。


「彩花ちゃん!!!!」


「月姫花さん。?どうか、したんですか?」


「これを読んで!!」

その渡された本で彩花の表情が変わる。


「これ…は。光輝の。」


「えぇ。そうよ。あなたに渡すべきだと思ったの。」


「ありがとうございます。読みます。」

そして。彩花はページを一枚開いた。


――2018年。5月。10日。

はじめての入院。今日から闘病日記を書こうと思う。

検査でガンが発覚。正直めちゃくちゃ辛いけど。

必ず直してみんなとまたサッカーをやるんだ。


「光輝…。」

日記は一ヶ月ほどで止まっていた。

そうして白紙の見開きを挟みページをめくった。


――2018年。7月。10日。

一ヶ月くらい、日記をサボっていたけど。

今日から書こうと思う。

今日はとてもいい事があった。

喉が渇いて自販機にジュースを買いに行ったら

ちっこくてめちゃくちゃ可愛い女がいた。

単純に一目惚れした。めちゃくちゃ可愛かった。


「これ。私のこと…?」


「多分そうだよ思うわ。」


――2018年。7月。11日。

昨日のすげぇ可愛い子に会いたかったから。

月姫花さんに頼んだらまさかの

同じ専属看護師だった。まじでびっくりしたけど。

会ってトランプをしてめちゃくちゃ嬉しかった。

病室に入った時前にいるおばさんと喋ってて。

俺に会いたいって言っててくそ恥ずかしかったけど。

頑張って隠してた。


「そうだったんだ。可愛いなぁ。光輝。」

彩花から笑みがこぼれる。


「彩花ちゃん…。」


――2018年。8月。11日。

世間では夏休みの時期に入った。

彩花は三色見えるようになったらしくて。

海で告ろうかと考えたけど速攻でやめた笑

俺のガンはステージ3まで進行しちまった。

抗がん剤とかちゃんと考えないとまずいなって思った


「告ろうって思ってたんだ。私と同じじゃん。」

彩花は闘病日記を笑いながら読んでいた。


――2018年。8月。12日。

今日は優香と彩花が会って生きた心地がしなかった。

けど、彩花が海をバックに告白してきて。

めちゃくちゃ可愛くて。断る余地なんて無かったし。

これからしっかり大事にしようって思った。


「おい。光輝。恥ずかしい事を書くなばか。」

彩花は一人で呟く。


月姫花はそれを見て微笑んでいた。


――2018年。9月。12日。

今日は一ヶ月記念日。それなのに優香のせいで

彩花にガンの事がバレた。終わった〜と思ったけど。

彩花は受け入れてくれた。すごい嬉しかった。


「光輝。私もだよ。私も一ヶ月いって嬉しかった!」


「彩花ちゃん。」

そして今。次ののページを開く。

――2018。10月。11日。


「あ。倒れる前の日。」


どうやら。俺は長くないらしい。だから。

彩花に手紙を書くことにした。


「手紙?どこ?」

日記はそこで終わっていた。


「彩花ちゃん。最後のページを見て。」


「え。はい。」


彩花は最後のページを開いた。


虹ヶ丘 彩花へ。

と書かれた手紙のようなものがあった。


「読んでも。いいですか。」


「ええ。もちろんよ。」

泣きそうな声で呟く彩花に月姫花も呟く。


虹ヶ丘 彩花へ。

これを彩花が読んでる時。多分俺は死んでる。

ごめんな。最後まで一緒にいてやらなくて。

多分、俺の予想だと月姫花さんがこの日記を見つけて

彩花に渡して日記読んだと思うんだけど。

確かめる方法がないからここら辺はいいか笑

彩花は今。俺が死んで、絶望してるだろ。

それでまた見える色が白黒に戻ってるはずだ。

それくらいわかる。

まぁ、外れてたら恥ずかしいけど。

それで彩花に言いたいことが一つ。絶望するな。

ひたすら前見てろ。前見て進むんだ。

辛いのはわかる。俺が悪いから。

俺が偉そうに言えることじゃない。虹の7色。

黄色以外は見えてたんだ。思い出せ。

彩花なら出来る。黄色はこの手紙を読んだ後。

もう一度初めから日記を読んでくれ。

そうしたら黄色見えるはず。受け取ってくれ彩花。

俺からの最後のプレゼントだから。

幸福をたった一つの幸せを受け取ってください。

俺は。駿河光輝は。


いつまでも虹ヶ丘彩花を愛してます。


「光輝。ずるいよ。いっつも美味しいとこばっか。」


「彩花ちゃん。もう一度初めから読んでみたら?」


「はい。そうします。」

さっきの日記を初めから読み直す。

すると見えてくる。色が。

あの時の赤色。あの時のオレンジ色。

あの時の緑色。あの時の青色。

あの時の水色。あの時の紫色。


「月姫花さん。見えます。色が見えます。」

彩花は泣きながら訴えるように言った。


「よかったわね。彩花ちゃん。」

そして彩花は裏表紙を見る。そこに書いてあったのは


()()()()()


と黄色のペンで書かれていた。

「私の一番好きな色。これが黄色。」


「ええ。そうね。これが黄色だわ。」


「これが。幸福の黄色。」


「彩花ちゃん。」


彩花が外を見る。外には虹が架かっていた。


「月姫花さん。」


「どうかしたの?彩花ちゃん。」


「今。今この瞬間。私の世界は。」

ここで言葉が詰まる。けれど止めない。

光輝にしっかりと伝えるために。

その虹と空を見上げて。


「虹色に光輝いてます!」


「彩花ちゃん。よかったね。よかったわね。」


「はい。これも全部。光輝のお陰です。」


二つの儚い糸は交じり合った。

片方がほつれ。きれた。

そうしてもう片方もほつれていた。

しかし。いま。ほつれ。切れた。儚い糸が。

ほつれていた儚い糸を包む。


「これが本当の幸せなんだね。光輝。」


―――1年後。

彩花の病気は完全に完治した。

彩花はいま学校にも通っている。

彩花の世界は間違いなく。虹色に光輝いている。


「光輝。私の恋は。私の世界は。あなたのお陰で。」

「彩花。俺の恋は。俺の世界は。おまえのお陰で。」


「「虹色に光輝いた。」」




「恋は虹色に光輝く」END

「恋は虹色に光輝く」第7話(最終回)

「虹色に光輝く」を読んでくださり

ありがとうございます。

作者の治崎 龍也です。

なんとか終わらせることができました。

次からは二作同時進行していきたいと思っていますので学業が落ち着くまでもうしばらくお待ちください。

感想・アドバイスなどあったらよろしくお願いします。

ちざきりゅうやでした。

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