終わり
二つの儚い糸。
片方がほつれる。
そして、終わりを告げる。
光輝と彩花が付き合ってから二ヶ月が経った。
光輝のガンは全身に転移していて
既にステージ4であった。
「光輝。無理しちゃダメだよ?」
「ああ。ありがとう。彩花。大丈夫。だから。」
喋るのもままならない。そんな状態で光輝は自室のベッドに横たわっていた。
「飲み物とかいる??買ってくるよ??」
「大丈夫だ。自分で。行かせて。」
「光輝。最近無理しすぎだよ。怖いよ。」
「大丈夫だっつーの。」
光輝は痩せ細くなった顔の口角を吊り上げて笑った。
「うん。じゃあ、一緒に行こう?」
「そーするよ。肩貸してくれ。」
光輝は情けなさそうに彩花の肩を借りる。
「いいのいいの。病人さんは元気がある人を頼ってください!」
「ああ。ありがとう。彩花。」
光輝の病状が進行していく中で彩花の病状は回復していた。
彩花は虹の7色のうち、赤。オレンジ。緑。青。水色。紫。が見えるようになっていた。
「ほら!ついたよ!自販機!」
「ああ。ありがとう。彩花。」
ここは二ヶ月前、彩花と光輝が出会った場所。
そうしてこの場所で物語は再び交錯する。
「彩花。コーラ買ってくれ。」
「はいはい、コーラね。コーラは赤いラベルっと。」
そう言いながら彩花は自販機のボタンをポチッと押した。
「ああ。ありがとう。あや…。」
――ガタンっ!!!
「ん?光輝くん!!!!!!」
「…………」
光輝から返事はない。
「急いでナースコールをしなきゃ!!」
彩花はすぐそばにあったテレフォンを手に取る。
「はい、こちらナースコールセンターです。」
「すいません!!6階の自販機前なんですけど!!」
「わかりました。今すぐ看護師を向かわせます。」
―――5分後。
「彩花ちゃん!」
「月姫花さん!!光輝が!光輝が!!」
「大丈夫!!落ち着いて!担架に乗せるから手伝って」
「はい!!」
光輝は担架に乗せられ緊急処置室へ送られた。
神様お願い。光輝を。光輝を救って。
彩花の祈りは実った。
とは言い難いかも知れない。
緊急処置室に入ってから一時間が経過した。
緊急処置室の扉が開く。
「月姫花さん!!光輝は!光輝は!!!!」
「彩花ちゃん。光輝くんは脳は生きているわ。」
「え?それって。」
「えぇ、光輝くんは植物状態になったわ。」
「そんな。そんな、光輝は頑張ってたのに。」
「彩花ちゃん。落ち着いて。頑張って現実を受け止めて。」
「けど、こんなの。こんなの理不尽すぎますよ。」
光輝の一命は取り留めた。
しかし、彼の瞳は開かない。
光輝の植物状態が始まってから一週間が経った。
「月姫花さん。光輝の体拭きますね。」
「お願いするわ。彩花ちゃん。いつもありがとうね。」
「はい。大丈夫ですよ。」
彩花は光輝の上着を脱がす。
点滴で栄養は取っていても光輝の体やせ細っていた。
光輝。戻ってきてよ。光輝がいないと寂しいよ。
そんな彩花の声も今の光輝には届かない。
はずだった。
「あ…やか。ごめ…な。」
「え?光輝!!!」
「彩花ちゃん!?!」
「いま!光輝が喋ったんです!!たしかに喋りました!!」
「先生に診てもらいましょうか。」
そう言って月姫花は担当医を呼んだ。
「今までと何ら変わりはない。」
「そんな、けど。たしかに声を聞いたんです。」
「うむ。その声は最後の声と思った方がいいかも知れない。」
「どういうことですか。」
「光輝くんは今日が峠だろう。」
「そうですか。わかりました。」
「彩花ちゃん。大丈夫?」
「少し、光輝と二人にさせてください。」
「えぇ、わかったわ。」
彩花は生まれてからすぐ病院生活だった。
目が白黒しか判断できず。
日常生活に支障があるかも知れないためだった。
以前、彩花は絶望とは何かと考えたことがあった。
それはまさしくまで色が判断できない自分の状況だろう。そう思っていた。
しかし、今が絶望だと確信した。
好きな人が植物状態に陥り。今日には死ぬかも知れない。本当に絶望しかなかった。
「あ…やか。な…におわっ…た。みたい…な。かおしてんだよ。」
「光輝、、、?」
「ばー……か。おれがい…なくても。」
「なに言ってるの!!」
光輝がゆっくりと彩花を抱きしめる。
「おま…えは大丈…夫だ。」
「光輝。」
「彩花。愛し……。」
その続きを書くことは無かった。
「うん。私も愛してるよ。」
彩花が応えるように伝える。
しかし、現実は甘くない。
交じり合った儚い糸の片方が今。
ほつれ。そしてきれる。
―ピー。ピー。ピーーーーー。
今。光輝の。心拍計が止まった。
「えっ。」
「彩花ちゃん。。」
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!」
彩花は泣き叫ぶ。
「なんで!!戻ってきてよ!!!光輝!!!!!」
声が枯れるまで叫ぶ。
「彩花ちゃん。あなたは頑張ったわ。無理しないで。」
月姫花が彩花を抱きしめる。
「私は何のために。もう。わからない。」
交じり合った二つの儚い糸。
片方がほつれ切れることによって。
その交じり合いは終わりを告げる。
「恋は虹色に光輝く」第6話「終わり」
を読んでいただきありがとうございます。
作者の治崎龍也です。
※ネタバレを含みます。
すいません。光輝を殺してしまいました。
次回で最終回です。最後まで読んでくださると
幸いです。
投稿について。
一週間も投稿をサボってしまい
すいませんでした。様々な理由がありますが
一番大きいのは学業です。
私は今現役受験生ですので受験勉強のほうが忙しくなかなか更新することができませんでした。
受験勉強とかなにやらひと段落したら
一日、二、三本のペースで更新しますので
お許しください。
最後に。
本当に読んでくださってありがとうございます。
次回の最終話みなさまに響くものになってくださると幸いです。
ちざきりゅうやでした。