『第1話 TAKE2』
森の中、アライグマとキツネがご挨拶。
まず、キツネから。
「おはようタヌ吉くん」
それから、アライグマ。
「おはよう。でもタヌキじゃないからな」
そんないつものやりとりで、アライグマとキツネは挨拶をします。
今日も二匹は、仲良くピクニックに出かけるみたい。
今日のピクニックはどこに行くのかな?
「よしキツネ! 今日は約束通りドングリ池に行くぞ!」
「ごめんアライグマくん、今日は野菜広場に行きたいんだ」
「なんだよ〜! まあ、いいけどさ」
そんな風にアライグマとキツネは話し合います。
今日は野菜のたくさんなっている、野菜広場へ行くみたい。
ピクニックの途中。
二匹はお空を見上げてお話しします。
「おい、キツネ見てみろよ! 珍しい逆さまの虹が架かっているぜ!」
そう、普通はまーるい橋のようにお空に架かる虹ですが、今日は逆さま。
にっこりしたお口みたいな形をしています。
キツネはロマンチックに返事をします。
「そうだね〜。いつもの形だとすべって落ちちゃいそうだから、こっちの形の方が良いかもね」
そんな話しをしながら歩いていると、二匹は野菜広場につきました。
野菜広場には、クマさんとリスくんがおりました。
クマさんとリスくんは、どうやらケンカをしているみたい。
でも、クマさんの方は、リスくんにされるがまま。
リスくんがクマさんに、ニンジンを投げたり、ゴボウで叩いたりして、イタズラをしています。
「えい! えい!」
「やめてよ〜、リスくんやめてよ〜」
クマさん、とっても痛そうです。
それを見て、キツネはアライグマに相談します。
「リスくんにイタズラをやめさせることは出来ないかな?」
「そんなの怒ってゲンコツすれば簡単だろう」
乱暴な答えを返すアライグマ。
キツネは言います。
「そんな乱暴じゃあダメだよ。どうしてリスくんはクマさんに、イタズラをしているのかな?」
「そりゃあ、かまってほしいからさ」
アライグマはそう答えます。
その答えを聞いて、キツネは目をまるくして驚きました。
「さすがタヌ吉くん、暴れん坊だから気持ちがわかるんだね」
「タヌキじゃねーし、ほめてないだろ!」
そんな相談をして、キツネはちょっと考えます。
そして、リスくんにイタズラされているクマさんにお話しをしにいきました。
「えい! えい!」
「やめてよ〜、リスくんやめてよ〜」
そんなリスくんとクマさんの間に入って、キツネは言いました。
「ねえクマさん、ちょっといいかな?」
「な~に~?」
「リスくんがイタズラしてきたら、リスくんをなでなでしてあげて欲しいんだ」
「え~、リスくんが怖くてそんなこと出来ないよ~」
「怖がっていたらリスくんはイタズラをやめないよ。
クマさんが弱い子ならボクも守ってあげたいけれど、クマさんは本当はとても強い子だから、クマさんにがんばって欲しいんだ」
「うん、わかった~」
そんな風に、キツネとクマさんは話し合うのでした。
さて、クマさんはキツネに言われた通り、リスくんをなでなですることにしました。
リスくんがイタズラしてきます。
「えい! えい!」
クマさん、リスくんをなでなで。
「リスくん、なでなで」
「なんだよ! やめろよ、きもちわるい!」
クマさんがリスくんをなでなで。
リスくんは嫌がりますが、クマさんの力はとっても強いので逆らえません。
でもよく見ると、リスくんちょっと嬉しそう。
それでも、なんとかクマさんから逃げたリスくんは、またイタズラを始めます。
「クマのくせに生意気だぞ!
よーし、今度はトマト攻撃だ!」
今度はリスくん。
クマさんにトマトを投げはじめました。
「やめてよ〜、リスくんやめてよ〜」
クマさんは目にもトマトが当たって、とっても苦しそう。
でもリスくんはトマトを投げるのをやめません。
「えい! えい!」
「やめてー! やめてー!」
クマさんはやめてほしくて、パーンとリスくんを叩こうとしました。
そこにキツネの声が飛んできます!
「クマさん、怖がらないでがんばって!
クマさんとっても力が強いから、叩いたらリスくんがつぶれちゃうよ」
そのキツネの声に、クマさんはリスくんを叩かないで、また、なでなでします。
「そうだった。なでなで、なでなで」
「なんだよ! やめろよ、きもちわるい!」
クマさんがリスくんをなでなで。
リスくんは嫌がりますが、クマさんの力はとっても強いので逆らえません。
でもよく見ると、リスくんちょっと嬉しそう。
「やめろよクマ、やめろ~、キャハ、キャハハ!」
だんだんリスくんは嬉しくなって、ついには笑い出しました。
クマさんとリスくんが仲良さそうにしています。
それを見てキツネはとっても嬉しそう。
「タヌ吉くん、ありがとう。君のおかげだよ」
「礼を言うならまず呼び方をなおせ! タヌキじゃねーし!」
二匹は嬉しくなって、今日のピクニックは帰ることにしました。
その夜。
悲しいおしらせが届きます。
飛べるはずのコマドリさんと、泳げるはずのヘビくんが、川で溺れて死んでしまったらしいのです……
次の朝。
キツネが朝起きてお空を見上げると、そこには逆さまの虹が架かっておりました。
「ボクはあと何度、あなたに会う日が来るのでしょうか?」
キツネはそんな風に、
お空の虹に話しかけるのでした。