『第1話 TAKE1』
森の中で、アライグマとキツネが挨拶をしています。
どうやら、二匹は待ち合わせをしていたみたいです。
キツネからご挨拶。
「おはようタヌ吉くん」
アライグマは答えます。
「タヌキじゃなくてアライグマだ!」
そんないつものやりとりで、アライグマとキツネは挨拶をしました。
二匹はいつもここで待ち合わせをして、ピクニックに出かけます。
今日のピクニックはどこに行くのかな?
「よしキツネ! 今日は約束通りドングリ池に行くぞ!」
「ごめんアライグマくん、今日は野菜広場に行きたいんだ」
「なんだよ〜! まあ、いいけどさ」
そんな風にアライグマとキツネは話し合いをします。
今日は野菜のたくさんなっている野菜広場へ、二匹は向かうことに決めたようでした。
ピクニックの途中で、二匹はお空を見上げてお話しします。
「おい、キツネ見てみろよ! 珍しい逆さまの虹が架かっているぜ!」
そう、普通はま~るい形の上の形をしている虹ですが、今日は逆さま。
ま~るい形の下の形で、お空に浮かんでいるのでした。
アライグマに言われて、キツネはロマンチックに返事をします。
「そうだね〜。虹は明日へ架かる橋だから、逆さまだと明日へ行けなくて、困っている動物もいるかもね」
そんな話しをしながら歩いていると、二匹は野菜広場につきました。
野菜広場には、クマさんとリスくんがおりました。
クマさんとリスくんは、どうやらケンカをしているみたい。
でも、クマさん。
リスくんにされるがままです!
リスくんがクマさんに、ニンジンを投げたり、ゴボウで叩いたりして、イタズラをしています。
「えい! えい!」
「やめてよ〜、リスくんやめてよ〜」
クマさん、とっても困ってます。
それを見て、キツネはアライグマに言いました。
「リスくんにクマさんへの、イタズラをやめさせることは出来ないかな?」
アライグマは答えます。
「そんなの怒ってゲンコツすれば簡単だろう」
「もう、君は乱暴だなぁ……」
さて、
アライグマは、リスくんにイタズラをやめさせようと、リスくんを怒りに行きました。
「えい! えい!」
「やめてよ〜、リスくんやめてよ〜」
そんなリスくんとクマさんの間に入って、アライグマは怒ります。
「リス! やめろ!」
ポカッ!
そして、ポカっとリスくんにゲンコツをしたのです。
すると、リスくん泣きだしました。
「うわ〜ん! うわ〜ん!」
リスくんを怒って、それからゲンコツをしたアライグマは、満足した顔でキツネのところに戻ります。
「どうだ? やめただろ?」
アライグマはそう言います。
でも、キツネは心配でした。
「どうなのかな……」
だから二匹は、リスくんとクマさんの様子を、しばらく見ることにしました。
しばらくして、泣きやんだリスくんが、また、クマさんにイタズラをします。
「お前のせいだ! お前のせいだ!」
「やめてよ〜、リスくんやめてよ〜」
そして今度はクマさんに、リスくんトマトを投げはじめたのです!
「えい! えい!」
「やめてよ〜、リスくんやめてよ〜」
クマさんは目にもトマトが当たって、とっても苦しそう。
でもリスくん、トマトを投げるのをやめません。
「お前のせいだ! お前のせいだ!」
「やめてー! やめてー!」
クマさんはやめてほしくて、パーンとリスくんを叩きます。
「うわー!!」
リスくんは叫びました。
クマさんの大きな手で叩かれたリスくんは、ペッチャンコになりました。
クマさんにつぶされちゃったリスくんは、トマトと一緒に、ケチャップになってしまったのです。
悲しい顔でアライグマは言いました。
「イタズラなんてするから……」
悲しい顔でキツネは言いました。
「怒ってゲンコツじゃダメなんだ……」
二匹は悲しくなって、今日のピクニックは帰ることにしたのでした。
次の朝。
キツネが朝起きてお空を見上げると、そこには逆さまの虹が架かっておりました。
「美しい虹さん。また、チャンスをくれてありがとう」
キツネはそんな風に、
お空の虹に話しかけるのでした。