『第3話 TAKE1』
森の中。
アライグマとキツネが挨拶をしています。
どうやら待ち合わせをしていたみたい。
キツネからご挨拶。
「おはようタヌ吉くん」
アライグマは答えます。
「タヌキじゃなくてアライグマだ!」
そんないつものやりとりで、アライグマとキツネは挨拶をします。
二匹はいつも仲良くピクニックに出かけています。
今日のピクニックはどこに行くのかな?
「よしキツネ! 今日は約束通りドングリ池に行くぞ!」
「ごめんアライグマくん、今日は根っこ広場に行きたいんだ」
「なんだよ〜! まあ、いいけどさ」
そんな風にアライグマとキツネは話し合いをします。
今日は木の根っこがたくさんある根っこ広場へ、二匹は向かうことに決めたようでした。
ピクニックの途中、
二匹はお空を見上げてお話しします。
「おい、キツネ見てみろよ! 珍しい逆さまの虹が架かっているぜ!」
そう、普通は上から赤、きいろ、青の色をした虹ですが、今日は逆さま。
赤い色が下に降りてくるように、お空に浮かんでいるのでした。
アライグマに言われて、キツネはロマンチックに返事をします。
「なんでだろう? ボクは逆さまの虹が珍しいと感じないんだ。毎日見てるような感じだよ」
そんな話しをしながら歩いていると、二匹は根っこ広場につきました。
根っこ広場に二匹が着くと、キレイな歌声が聞こえてきました。
「ヒン♪ カラカラ♪ ヒンカラリン♪」
コマドリさんが、木の枝の上で歌っているのです。
キツネはコマドリさんに挨拶します。
「おはよう、コマドリさん。今日もキレイな歌だねぇ」
コマドリさんは答えます。
「そうでしょう、そうでしょう。あたしの歌は森で一番よ」
キツネは聞きます。
「そうだね。だけどコマドリさん。最近歌ってばっかりで、羽づくろいをサボってないかい?」
「あら、よくわかったわね。でも、あたしは歌が好き。だから、羽づくろいをする暇がないわ」
「でも、もし水にぬれたら、飛べなくなってしまうよ」
「空を飛べるあたしが、水に落ちるなんて、ありえないわ」
コマドリさんは、そう答えるのでした。
キツネはアライグマに相談します。
「コマドリさんに、ちゃんと羽づくろいをしてもらいたいんだけど、どうしたらいいかな?」
「しなきゃいけないこと、なんだろう?」
「うん、そうしないとコマドリさんが困っちゃう」
「なら、何度も何度も叱ればいい」
そう言って、アライグマはコマドリさんを叱りにいきました。
「おい! コマドリ! 羽づくろいしろ!」
「うるさいわね、タヌキ!」
「誰がタヌキだ! お前のためだ、やれ!」
「ふん!」
コマドリさんは、言うことをききません。
そして、別の枝に飛んでいきます。
アライグマは、追いかけます。
コマドリさんを追いかけます。
「まて! コマドリ! 羽づくろいしろ!」
「うるさいわね、あたしがどうなろうと、あんたに関係ないでしょう!」
「そうだ、俺には関係ない。お前のためだ、やれ!」
「ふん!」
コマドリさんは、言うことをききません。
そして、別の枝に飛んでいきます。
アライグマは、追いかけます。
コマドリさんを追いかけます。
そんなことを繰り返していた時です。
思わぬことが起きました。
ポキッ。
コマドリさんのとまった枝が、ポキっと折れてしまったのです。
「あ……」
とっさのこと。
コマドリさんは飛ぼうとします。
でも、羽がひっかかって、ひらきません。
羽づくろいをサボったからです。
ゴツッ。
だから、コマドリさんは地面に落ちます。
そして、頭を打ちました。
頭を打ったコマドリさんは、赤い落ち葉のように、そこで動かなくなったのです。
悲しい顔でアライグマは言いました。
「言うことをきかないから……」
悲しい顔でキツネは言いました。
「叱るばかりじゃダメなんだ……」
二匹は悲しくなって、今日のピクニックは帰ることにしたのでした。
次の朝。
キツネが朝起きてお空を見上げると、そこには逆さまの虹が架かっておりました。
「美しい虹さん。今日であなたに会うのも最後だね」
キツネはそんな風に、
お空の虹に話しかけるのでした。




