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モブのプロポーズ?

本日はヴィルヘルム・クロイツェル公爵様のお邸に招かれました。

公爵邸、凄いですね

我が子爵家と違って広大な敷地です

モブラック子爵家三杯分はあるのではないでしょうか


クロイツェル公爵邸の前に到着すると、なんとヴィルヘルム様御自らのお出迎えです。

馬車から下りる時もエスコートなさって下さいます

御本人がお出にならずとも、御者さんに任せて屋敷内で待っていても良い立場なのに・・・


「レディ、お手をどうぞ」


開幕から全力の紳士ですね

止めて下さいませ心臓が破裂してしまいますわ、もうドキドキで早くも顔が熱いです。

「ありがとうございます」

手を借りて下り、招待して頂いた御礼と自己紹介をします


「本日はお招き頂きありがとうございます、初めまして私はマイケル・モブラック子爵が長女リリアン・モブラックと申します、どうぞ宜しくお願い致します」


「これは御丁寧に、私はヴィルヘルム・クロイツェル公爵、どうぞ宜しくお願い致しますレディ」

リリアンとお呼びしても?

と続き、紹介の挨拶だけで私の器はいっぱいいっぱいよ!

今日生きて、このお屋敷から出られるのかしら

何とか「はい、よろしくお願いしますクロイツェル様」と返す。

私も本当はお名前でお呼びしたいものの、上の者の許しなくお名前呼びはマナー違反ですからね・・・


しかし、この様な紳士が令嬢に怯えられるなんて絶対嘘よ


実際は見た目通り、ゴリゴリの体格と鋭い眼差しで令嬢には怯えられる、口を開けば紳士的だが、口を開く前に令嬢が折れてしまう、リリアンにとってそれらは好ましいもので気付かない。

この世界は乙女ゲームの舞台であり、線の細い麗人が美形の定義、人気とされている為である。

尚、リリアンに掛かってしまえば「線の細い麗人」は「あんなひょろひょろの何が良いのか分からない」と一刀両断である。


――――――――――――――――――――――――――



御屋敷も造りや装飾、美術品、近くで拝見させて頂きたいのですが、恐ろしくて近寄れませんわ。


使用人の方々も所作がとても優雅です

使用人でさえ高位貴族ですか?と思える程です。


「初めましてリリアン様、私は執事のジェレミアです、どうぞお見知りおきを」


「初めまして、宜しくお願い致しますジェレミア様」


「様は不要でございます、滅多に女性が来ない屋敷ですので、使用人は皆リリアン様をお迎え出来る事を楽しみにしておりました、どうぞ遠慮なく何でもお申し付け下さいませ」


「あ、ありがとうございます、ではえっと、ジェレミアさん、と」

お互いにこりと笑顔を交わす

社交辞令でなく歓迎されている、のかな?



さてさて、お茶会です

二人きりです

側にクロイツェル家の侍女と私の侍女が控えていますが

それはそういうものでして

もう一度言います


二人きりです。


気の利いた話など出来ません

前世の記憶?

田中は30歳の魔法使いです、察して下さい(血涙)


紅茶おいしいわぁ、なんて現実逃避はいけませんわね

私から望んだお茶会ですから。

あ、そう言えば、お披露目の時に聞き逃した

お父様がどう言って国王陛下にクロイツェル様のご紹介を頂いたのか、結局教えてくれなかったのよね

クロイツェル様は何か聞いているかしら・・・


「あのクロイツェル様、今回のお茶会、国王陛下からの、その、ご紹介だと思うのですが、どういった経緯でこのような・・・、えと、そもそもはこちらからの希望だったのですが」

と、言葉にして気付く、何とまあ怪しい言動であろう。

(なんか最近は変な汗しかかいてない気がするわ!)


そんな怪しい言動も気にせず答えてくれる

「あ、ああ、その陛下からは、あー」


(?、歯切れ悪い?何故?いいえ、これは照れてる?)

よく見ると視線が微妙に合わない、顔も少し赤い?


「あー、その、リリアン嬢が、私の事をす、好い・・・、気にしていると」


(ぎゃあああ、何、どういう事、陛下、いいえ、お父様そのまま伝えたの!?)

赤い顔が更に真っ赤に染め上がる、耳まで見事なまでに。


実は、子爵から国王陛下、国王陛下から公爵へと話は通ったが

子爵からの話の段階で、リリアンの好意はそのまま伝わっており


更には国王陛下から公爵へと

「おいヴィー、お前の事好きな令嬢居るぞ、その目付きも体格も好ましいそうだ」

「は?」

「モブラック子爵令嬢、リリアンだ、結婚しろ」

「待って下さいルー兄、リリアン嬢とは」

「なんだ、お披露目の時に顔合わせて敬礼していただろ、あの顔を真っ赤にしていた令嬢だ」

「いえいえ、待って下さいよ、お披露目に居たという事は五歳ですよね、俺22ですよ何考えているんですか」

「何を考えるも何も、お前何時結婚するつもりだ、どうせ結婚するなら好意を持っている相手の方が良いだろ」

「結婚するにしても年齢差が大き過ぎますよ」

「お前の年代で結婚出来る奴なぞ残って居ないだろう、五歳とは言え、いや成人した令嬢でさえ顔合わせると駄目だったのに、五歳の娘が怯える所か好いているのだ、何の問題がある」

「う、しかし17歳差ですよ」

「10年後には15と32だ、余裕だな」

「いやしかし、見知らぬ者と突然結婚などと」

「なんだ、彼の令嬢はお互いを知ってから今後の事を、と言っていたそうだ、余程お前より大人ではないか?」

にやりと陛下が笑う。

「ぐ」

「決まりだな、取り敢えず交流を持って捕まえておけ、それに子爵家なら都合が良い、権力も欲してない中立派で、領地も長閑で良い土地だし、何より子爵夫妻は子供の幸せを第一に考えている」

「爵位の差はどうするのです、子爵と公爵では・・・」

「なんだ、そんなに『王命』が欲しいのか?仕方ない奴だな」

意地の悪い笑顔を浮かべる国王陛下

「もう、分かりましたよ・・・」


などという、まさか乙女ゲームも真っ青のストーリーが展開しているとは夢に思わない。

モブのプロポーズは既に終わっている事実

国王陛下兄と公爵弟は仲良し。

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