モブ、家族と家族。
それはララ達が公爵邸へ来る前の話。
私は完全にベッドの住人です。
「天使が天使を産んだ!!」
お父様は手と膝を付き歓喜しています、このポーズも久しぶりですね
「お父様・・・」
まだ私の事を天使って・・・、でもこの子達が天使なのは事実ですね!
「アン!無事?身体は?」
「わ、ップ、お母様!?」
お母様が私に抱き着いて、ペタペタと身体を確認する様に触って来ます。
「アンが3つ子を産んだと聞いて、ずっと心配していたんだよ」
「お兄様・・・」
やはり心配掛けてしまいましたか、こればかりはどうにもなりませんが
「アンが3人産んだと聞いた時は、貴女がタダでは済まないと覚悟したのですよ、でもその様子だとアンも子達も大丈夫そうね、良かった・・・」
ぎゅっと抱き締めてくるお母様、私に何かあれば今のんきに会っていられませんし、赤ちゃんに何かあれば私の様子もおかしくなりますからね。
「母上、アンの顔色はまだ悪いからあまり・・・」
「あ、ごめんなさい、アン身体は大丈夫?違和感や辛い所は?」
「お母様大丈夫です、ただ、とても疲れました・・・」
ふう、本当にため息しか出ませんね、この疲労感は。
「お疲れ様、アン」
ふわりと優しいハグをして、頭を撫でてくるお兄様
スっと耳元に顔を寄せてきて小声で
「母上、随分慌てていただろ?アレでも落ち着いたんだよ、アンが3つ子を出産したと聞いた途端に顔を真っ青にして取り乱していたからね、あんな母上見た事無かったからアンにも見せたかったよ」
お母様も頭を過ぎったのでしょうね、母体か子供かどちらか、もしくは両方に何かあるかも知れないと。
「反対に父上は喜んでいたからね、とても混沌とした空間だったよ」
お父様は、素直に初孫だー!ですね。
「心配掛けてしまいましたね」
「まあ、子供の人数なんて神のみぞ知るだから、結果論みんな無事で良かったじゃないか、ほら」
お兄様が指を指す先には、お父様とお母様が初孫に目尻を下げて笑っている所です。
「はい・・・」
「本当にお疲れ様」
ちゅ、とこめかみにキスをしてくるお兄様
「ふふ、お兄様、私こう見えても人妻で3人の子持ちなんですよ?」
冗談を飛ばすと
「おっと、ヴィルヘルム様に申し訳ないな、気を付けようアン」
にこりとおどけてみせるお兄様
クスクスと2人で笑っていると
「はいはい、兄妹が仲良いのは分かったから、そろそろリリを休ませてあげて」
「シア」
「君は・・・」
スっと目付きが変わるお兄様、えっ!?お兄様!?
「何故、此処に居るんだい?」
声低い!
そう言えばアリシアさんの事をまだ伝えていません!お兄様の中では私を下敷きにして怪我をさせた1人のままです、因みにライラの事は全て済ませてあります。
「お兄様待って、シアは、、えっと、友達になったの!」
「アン?」
「リリ・・・」
何か不穏な気配が一瞬止まった!今よ!
「シアからは謝罪を私はそれを受け入れたし今回無事に出産出来たのは彼女の助力があったからよ彼女はあの時の彼女ではないし人は変われるものよ何も問題ないわお兄様大丈夫!」
良し!言った!はあはあ・・・
う、一気にまくし立てたせいか半身を起こしたせいか、クラクラします・・・
フッと身体の力が抜けて雑にベッドに倒れるリリアン
「リリ!」「アン!」
「だ、、じょぶ、、目眩した、だけ」
「無理しちゃダメよ、産後に何かある事も十分考えられるのだからね!」
「うん・・・、ごめん・・・」
「アン、もう寝ているんだ顔色がさっきより悪い」
「お兄様、、シアは・・・」
言い募る私に
「分かったよ、アンが良いと言うなら何も言わない、さ、いい子だからね」
「うん・・・」
ありがとうお兄様、の言葉は出なかったけど、きっと伝わっている筈、だっていつものお兄様の笑顔だったから。
そのままゆっくりと寝入ったリリアンであった。
「・・・」
「ちょっといいかな?」
「ええ」
場所を移して
「君は・・・、いや、、アンの友達になったんだね?」
「ええ、謝罪して許して貰ったわ」
「そう・・・、分かっているとおもうけど」
「裏切ったりしないわよ、私にとっても命の恩人だし、詳しくは妹に聞いて」
「なら良いんだ、僕から言うことは無い」
「貴方、リリの前とそれ以外で随分違うのね、さっきもリリが随分驚いて居たようだけど」
「僕だって貴族の跡継ぎの端くれ、顔の1つや2つ持っているし、アンだって持っているし理解もしているさ。
ただ、これまでアンの前ではずっと兄で居ただけだ」
「そう、通りでリリの言うお兄様像と違いがあると思ったわ」
「・・・、アンはなんて、」
「優しくて穏やかで温かくて心地の良いお兄様」
後半は抱き心地の感想のような気もしてトーマスは苦笑する
「言っていた印象もただただ優しいって感じだったけど、あの子の兄だものね、並な筈がないか」
「僕は普通だよ、アンは別格さ」
「へえ、そういう事にしておいてあげる」
なんだかんだで破天荒な部類に入るリリアンに対して、平均的、普通な兄トーマスが足下をしっかり固めている様子が見て取れたアリシア。
多分、この兄が居たからこそリリアンは自由に出来たのでしょうね・・・
それを何となく察しているからリリアン本人も兄トーマスをあれだけ慕っている。
「君は・・・」
「アリシアよ、アリシア・ロック男爵令嬢」
「・・・、トーマス・モブラック子爵令息」
「これから宜しくね、親戚になるから」
「なんだって?」
微妙にイヤそうな顔をするトーマス
「貴方の妹は国王陛下の弟の妻、私は国王陛下の子の1人アーサー様の王子妃(予定)、親戚よね?」
「もう王族家系の親戚は要らないのだが・・・」
「あら?欲のない事、やろうと思えば何でも出来るでしょうに、例えばリリアンなら貴方の頼み事は断らないでしょ、そしてリリアンの頼みなら公爵様も断らない」
「僕はアンの兄、それだけだしこれからもそうさ、アリシア嬢、君こそアンを利用なんて・・・」
「しないわよ、私はただの友達、リリの事が好きだし、あの子も私の事を好きなら嬉しいわね、それだけよ」
「・・・」
ジッと探る様に見るトーマス、アリシアの言葉を信じたのか友達と言ったリリアンの言葉を信じたのか
「ふう、まあ何も無ければそれで良いよ、どうやらあの時とは違うようだし」
「リリが言っていたでしょう、人は変われるのよ、私の言葉は信じられなくても、リリの言葉は信じるのでしょう貴方は」
「言われるまでもないね」
不思議な縁が結ばれた、元ヒロインとモブ家で・・・




