モブ、対面。
お兄ちゃんをあやしていると
「リリー!」
ヴィルヘルム様が凄い勢いで抱き、
「待ちなさい」
締められませんでした。
「シア?」
「良いから任せて、公爵様リリは今瀕死よ、1人産むだけでも命懸けでそれが3人、血も体力も失っているわ、激しいスキンシップは禁止よ、絶対安静、良いわね!?」
「ああ、分かったすまない・・・」
リリアンは気付いていなかったが、彼女の顔色は白く疲労の色は濃い、ヴィルヘルムも心配のあまり勢いのまま抱きつこうとした事を反省する。
冷静になったヴィルヘルムを確認するとアリシアは端に退ける。
「リリー、お疲れ様良くやった、ありがとう」
「ヴィー、泣いてるの?」
涙を拭おうとしますが、身体が泥のような鉛のようなで動かないです。
ベッドにクッションを重ねてそこに上半身を任せるままに背中を預けていますが、動けそうにありません。
「これは、安心と喜びの、っ、涙だ」
「そう、、ね、ヴィー赤ちゃん抱いてあげて」
動けないので、受け取ってくれるよう促します
「ああ、、これは小さくて、柔らかくて、、ど、どうすれば!」
「ふふっ、そのまま抱いてあげて」
横からアリシアさんが
「はい、リリにはお姉ちゃん」
と渡して来ましたので、受け取り顔をあげるとギョっとします
隣に赤ちゃんを抱いたデレッデレのラファエル様が!
「・・・」デレデレ
「・・・」デレデレ
「ラフィー義母様?」
「あっ、ご、ごめんなさい!わたくしばかり赤ちゃん抱いちゃって」
「いえ、手は足りないのでそれは良いのですが」
3人ですからね、私は1人でいっぱい、ヴィルヘルム様でも首が座るまでは2人は抱けないでしょう。
「リリアンちゃん、貴女本当に凄いわ、娘、いいえ性別なんて関係無いわ、3人も産んじゃうなんて、お疲れ様」
「あはは、本当に疲れました・・・」
ふう、人前でため息ははしたないですが、今ばかりは許して下さい。
「そうよね、1人ずつでも大変なのに3人なんて、はしゃぎ過ぎたわ、ごめんなさいすぐ出て行くから」
その様子を見ていたアリシアさんが
「リリ、一先ず1日ゆっくりしなさい、子供は大丈夫だから、これから1週間は大変よ」
「うん、お願い」
赤ちゃんを渡してベッドに横になります、ふう、本当に疲れました。
「ヴィー」
小さく呼ぶと、赤ちゃんを抱いたままのヴィルヘルム様が枕元に来てくれたので
「おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
笑顔のヴィルヘルム様とその腕の中の赤ちゃんを見たのを最後に記憶が途切れました。
その後はアリシアによる授乳教室が行われ
「3時間毎!?」
「乳母は居るが」
「その乳母は1週間以内に出産したの?」
「いや、だが半年・・・」
「ならダメよ、最初の母乳は特別なの、丸々1週間と言わなくても数日はあげたいのよ、それに出産したばかりの人を乳母として連れて来るなんてヒドイ事出来ないでしょう?」
「それは」
その通りである、立場を置き換えてみると、リリアンを今そのまま乳母として何処かに出すのか?と言う話である。
「だから・・・」
搾乳等その他色々な知識を授けたアリシアであった。
出来るだけ母親の母乳を飲ませる事、体調を見て決めるが間の3時間か6時間を乳母に任せてリリアンを休ませるようにするか、そうすればリリアンの負担も軽い、色々な案を出して説明する。
「良いこと?リリは今本当に瀕死だと思いなさい、彼女がこれからする行動は、寝る、食べる、授乳させる、以上!他の全ては侍女達に、屋敷内で手洗い、うがい、消毒の徹底!」
この世界に現代医療はない、何より怖いのは病気になる事、ならば病気にならないように徹底する。
三つ子の出産なんて本当に命を落とす可能性があった、帝王切開?無理だ、自分には出来ない、なら誰かに切らせるか、ダメだ、術後のケアが十分とは言えない環境で切る訳にはいかない、精密検査は出来ない、輸血も出来ない、抗生物質もない、必要な薬も作れない、子は助かってもリリアンは死ぬかもしれない、出産で体力は落ちる、感染症など発症してしまえば死ぬだろう。
アリシアは知っていた、リリアンのお腹の様子を探った時、お腹の大きさ、子の様子、もしかして2人以上居るかもしれないと、確信は無いが一度頭を過れば、その時になって「まさか」などあってはならないと。
準備はしていた、メス状のナイフ、消毒用アルコール、生理食塩水、針、糸、考えられるだけの手術道具、代替品、どうか出番がないことを祈って。
結局は子供が何事も無く生まれる事を願うしか出来なかった、リリアンと赤ちゃんの運と体力次第だった。
未熟児だったらどうする、上手くお腹から出て来れなかったら、嫌な事ばかり頭を過る。
そんな恐怖の中、無事に出産を乗り越えた地球を知るたった1人の友人をなくす訳にはいかない、生まれたばかりの子供から母を奪わせてはならない、絶対に元気なまま乗り越えてみせるとアリシアは心に決めていた。




