モブ、惚れる。
さてと、今後の詳細は学園に入学するまでに考える事にして
お披露目も進んではいるけど、まだまだね。
公爵家から始まって今は伯爵家
次が子爵家だけど、もう少し時間がありそう
しかしまあ、マリエル公爵令嬢とアーサー王子殿下が五歳で既に婚約って
多分だけど、生まれた時点で決まった政略結婚なのでしょうね。
前世日本の記憶がある身としては、理解は出来るけど、是か否かで聞かれたら、否よね
貴族の恩恵を受けて生活しているのに、と知っていて尚、否ね・・・
貴族の責務というのもあるし
血筋が最たるものでしょうけど、そういう責務や血筋は
爵位が高位であればある程に重いものでしょ
子爵家なら子爵家『なりの』責務ね
と言う理由で、私は政略的な事は勘弁して欲しいわ。
勿論、子爵家の人間として受けた恩恵は三倍くらいにして領地領民に返すから
「愛しい方に嫁ぐ」くらいは許して欲しい・・・
まあ、断わる事が出来ない高位貴族に婚約を申し込まれない限り
私の嫁ぎ先に関してお父様お母様達は、私の意志を尊重して下さると信じてるわ。
お兄様にしても、子爵家嫡男という縛りはあるものの、政略的に利益を求めるより
家庭の安定を第一とした、お相手になるのではないのかしら?
何より、お父様達が恋愛結婚なのだから。
突然、結婚や婚約に関して考えをまとめた事には理由があります
私リリアン・モブラック、見つけたかも知れません
未来の旦那様(仮)
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国王陛下達がいらっしゃる玉座横に控えている御方
遠目にも判ります、騎士制服を纏ったガッシリした体格
銀の髪に青い瞳の鋭い眼差し、腰に佩いている剣
見事な騎士の一枚絵のようです、好き!
リリアンは前世記憶によって、実年齢より精神年齢が高くなっている為
同年代は恋愛対象になりえません
少なくとも大人と言える落ち着きのある年齢が対象で
且つ、自分が現在五歳である事から
一般的に貴族令嬢が結婚する年齢15歳前後を目安にして、相手の年齢は20代と決めています。
書類上の話では結婚の年齢に下限が無い為
結婚は何時でも可能とされています。
年齢が幼過ぎて問題が起きる様にも思われますが、そこはそれ
婚約も婚姻も、王家と教会への書類が必要の為、守られている。
何はともあれ、リリアンは見た目ストライクの男性を見つけた
一目惚れである。
「お、ぉぉお、お父様、あの、国王陛下達の横に控えている銀の髪の騎士様は知っていますか!?」
「ん?興奮してどうしたんだいリリアン、・・・ああ、彼は近衛騎士団副団長、ヴィルヘルム・クロイツェル、」
「近衛騎士のヴィルヘルム様・・・」
ほう、と名前を呟き熱いため息を吐くが、父の続く言葉に固まる
「ルーク・ヒロイック国王陛下の弟だよ」
(はああああー!貴族を超えて王家じゃない!)
あまりの事実に絶句。
折角見つけたと思った男性が、出来るだけ避けようしている高位貴族どころか王家で凹むわ・・・
呆然として口をつく
「王弟、殿下・・・」
「王弟ではあるけど、殿下ではないよ、公爵閣下になるね」
「え!?どういう事ですか、お父様」
「前国王陛下が御病気で退位する時、ルーク様は当時王太子で、そのまま陛下の跡を継ぐ事になっていたけど、ヴィルヘルム閣下が」
『これを機に私は王位継承権を放棄して、臣籍に下る』
「と仰ったらしくてね、ルーク様が国王に向いている事もあるし、ヴィルヘルム様自身も自分は国王には向かないと考えていたが、年齢の近い兄弟が居ると何かと派閥争いが起きかねないとして、王権に関する全てを放棄して公爵位を賜り、今に至る」
それを聞いて疑問に思う
「わざわざ王権から遠ざかったのに、近衛騎士団の副騎士団長になっては新たな懸念があるのでは・・・、あと公爵位を賜るのではなく何処かに婿入りの話の方が良かったのでは?」
お父様は私の疑問に対し答える
「近衛騎士団の副騎士団長は二人居る、直接の命令系統はもう一人の副騎士団長で、閣下は命令系統に含まれていない、婿入りはやはり利用されかねないとの判断」
あとは解るね?と父。
ああ、近衛騎士団では顔役、象徴的な立ち位置なのね
「と、言うのが表向きの理由」
「はい?」
お父様はくつくつと笑いながら悪戯が成功したかのような表情を浮かべ、続ける
「実際は居なかったんだよ、相手」
どういう事?
「幾つか婿入りしても問題無いだろうと言われる家は有った、でも彼のあの容姿、見た目、当時からあの体格と目付きでね、いざ顔を合わせると令嬢が皆怯えてしまってね」
ええー!あんなに格好いいのに勿体無いわ・・・
この世界(国?)の感覚では強面で敬遠されるのかな
んん?思えば、お披露目していた公爵、侯爵家とか
当主様もその子供達も全員綺麗系の顔立ちだったけど
もしかして騎士然とした男らしい容姿は人気ないの!?
日本で言う、平安時代の美人と現代の美人の定義の違いなのかしら?
あら、という事は・・・
「お父様、ヴィルヘルム様に奥様やお付き合いされている方は・・・」
「結婚はしていないね、婚約の有無や恋人は分からないけども、、、リリアン?何を・・・」
「うふふ、お父様、私ヴィルヘルム様に一目惚れしました」
父のライフが大変な事に。