モブ、ヒロイン対峙。
アリシア・ロック男爵令嬢、この世界の基となった乙女ゲームのヒロイン、に転生した方。
第二王子アーサー様の王子妃に運良くなのか、運悪くなのか収まった彼女はこれから苦労するでしょう、その苦労に私も巻き込まれるのですが、良くは思っていない相手と言えど、それなりに知っている同級生の人生を左右するとなれば私も気合いを入れて助ける他ありません。
その結果いかんでは彼女は終わります、それに携わる私としては彼女の人生の責任など背負いたくありません、いえ責任はルーク国王陛下とエリザベート王妃様が全て持つと仰いました。
しかしながら、心の中ではずっと引っ掛かり残る事でしょう、私は彼女を救えたのではないか他にやりようはあったのではないか、と。
正直に言って、そんなものを背負うのは御免です、私は気に病むでしょう、ヴィルヘルム様は自分が手を下して共に背負うと仰いましたがそれに対しても私は気に病むと容易に想像出来ます、そうなると幸せに笑えるなど無いです。
つまり、成功させて彼女を王子妃に据える迄、いえ取り敢えずエリザ義姉様に引き継ぐ所まで辿り着く事が私の勝利条件ですね、公爵夫人としての初仕事がコレとは中々重圧の掛かるものではありますが自分の今後の幸せの為に頑張りますよ!
アリシアさんの居住区に来ました
「何よ貴方、いえ、何処かで見たわね」
「こんにちはアリシアさん、私はリリアン・クロイツェル公爵夫人、貴女にはリリアン・モブラック子爵令嬢と名乗った方がいいかしら」
私が名乗ると彼女は
「ああ!同じクラスのモブ子ね、なあに何か用?」
ピクリと、血管が少しだけ浮き出た気がしますわぁ・・・
「アリシアさん、私は貴女の王子妃教育の教師として来ました」
「はあ?なんでモブ子が私の先生なのよ、同級生だし教わる事なんて無いわ」
「・・・」
この子殴ってイイかな?良いわよね、ね?
「アリシアさん、貴女は今どのような立場かはご理解していますか?」
「?、3年後に王子妃になって幸せに暮らすだけよ、他に何かある?」
今、と聞いているのに3年後の話、しかも既に王子妃になったつもりですか・・・
スーと息を深く吸い込み、
「アリシアさん貴女は今分岐点に居ます、生きるか死ぬかのです、貴女は今王子妃教育を受けられる水準に達しておりません、淑女教育学力向上、その為に私が来ましたが王子妃教育のみで言っても3年で修めるなど中々骨の折れる内容となっております、あのマリエル公爵令嬢様は5歳より以前にアーサー様と婚約を結び時間を掛けてそれら教育を修めて参りました、そう10年以上掛けてです、ですが王家は貴女に3年以上の猶予を与えるつもりはありません、つまり3年で王子に相応しい教養を身に付け、王子妃教育を受けて認められる必要が有ります、ここまではいいですね?」
一息で言い切ります。
「え、ええ」
にこりと微笑み続けます、こう言うのは相手と会話しても進みません、こちらの都合を全部言い切り、その後のお話に入りたい所ですね。
「宜しい、ならば今貴方がどれだけ困難な状況かはご理解したと判断します、貴女が3年で必要である水準まで達していなかった場合、貴女は死にます、公式には病死になると思います、貴女18歳で死にたく有りませんよね?私も失敗して貴女の死を背負いたくありません、なので死ぬ気で頑張って下さい、大丈夫本当に死ぬよりマシでしょう、少なくとも貴女が諦めない限り私は貴女に力を貸すと約束しましょう、これはゲームでも何でもありません、たったひとつの人生です、よろしくて?」
「よろしい、です・・・、って、えっ!?モブ子あんたまさか転生者なの!」
「違います、前世の記憶は有りますが、ほぼ他人事なので転生者ではありません」
「そんな事細かい事はどうでもいいのよ、日本人?ここは乙女ゲームの世界でしょ、私はヒロインであんたはモブ、モブ子が物語に出しゃばらないでよ」
やっぱりゲームの世界と思っていたのね、はあ・・・
「前世は日本人だったみたいね、基になったゲームは知らないけど、貴女の言う事が正しいなら物語はエンディングを迎えたのではなくて?
王宮舞踏会で断罪イベント発生しなかったから、まだ続いているとでも言うの?」
「それ知ってるって事はアンタが邪魔したのね!舞踏会で悪役令嬢を断罪してハッピーエンドだったのに」
流石に呆れます
「王宮舞踏会に関しては確かに私も介入したわ、でもね貴女はそれで命拾いしたし、悪役令嬢なんて存在しないし、これはれっきとした現実よ、ねえアリシアさん、貴女自分は死なないとでも?やり直しは効くとでも思っているの?
ふざけないで、仮に私達がモブとしても食事は摂るし、寝るし、怪我したら血を流すわ、貴女は自分がヒロインならモブは殺しても良いとでも思っているの?
ヴィル!来なさい!」
ガチャリと入って来るヴィルヘルム様、その目はとても厳しい、腰には剣。
静かに扉を閉じその前で仁王立ちになり、剣に手を添えカチャと鍔鳴り
「ひっ」
「ねえ、アリシアさん貴女で試してみますか?
セーブは出来た?いつ、どこで、やり方は、ロードは出来ました?リセットは?」
そう問うとアリシアさんは顔色を失う、言葉も無いようですね。
「そ、そん、な、じゃあ私っ・・・」
カタカタと傍目に見ても分かるほど震えています、どうやら現実を認識したようですね・・・、小さくため息を吐く。
「ヴィー、ありがとうここまでで良いわ、後は大丈夫」
「・・・、これだけで良いのか?」
「ええ、ごめんなさい、嫌な役をさせたわ・・・」
そう言いヴィルヘルム様に手を伸ばすと、彼は私の手を取り
「いや気にする事はない、必要な事だったのだろう?」
と、指先にキスをしてくる
「うん、ありがとう・・・」
そっと頬を撫でると優しく微笑み、そのまま部屋を出て行った。
「あんた、騙したわね!」
アリシアさんの怒声が部屋に響く。




