モブの二年間、そして。
五歳になりました!
三歳の誕生日、家庭教師をお願いして
まだ早いと言われまして、直ぐには教師を付けて貰えなかったのですが
お兄様のお勉強の時間に無理矢理居座って
一緒に教えてもらいました。
読み書きはかなり怪しかったけど、現代日本の教育の記憶は素晴らしいもので
算数に於いては自重なくバリバリ計算してやりました!
その結果・・・
お兄様の家庭教師からお父様に報告が上がり
無事、私にも家庭教師が付く事になりました。
わー、ぱちぱちぱちー。
何でも
「読み書きは歳相応、何故か計算は最低でも学園四期相当の力があり、ご子息とご令嬢では勉強の進捗がチグハグの為、専属で家庭教師を付ける事をお勧めします」
との事です。
新しく来た家庭教師は、正にロッテンマイヤー先生然とした方でとても真面目で厳しい先生でした。
初めてお会いした時も、後ろにきっちり纏められた髪、眼鏡に、鋭い眼差し、第一印象で
(ロッテンマイヤー先生だ、絶対ロッテンマイヤー先生・・・)
なんて思っていたら
「初めまして、私はロッテ・マイヤール、通常の勉強を始める年齢より早いと言っても指導方針を変えたりしませんので、どうぞお覚悟を」
(完全にロッテンマイヤー先生だ!)
と、一瞬反応が遅れると
「挨拶をした相手に返事も出来ないのですか?」
更に鋭くなった眼差しが突き刺さる
「ッハ、、失礼致しました、マイケル・モブラック子爵が長女リリアン・モブラックです、どうぞよろしくお願い致します。」
カーテシーをしながら、背中に冷たい汗が流れる
「ふむ、まあ良いでしょう、何事も中途半端に投げ出さないように、貴方が諦めない限り私は力になりましょう」
お母様にカーテシーだけでも習っていて良かったわ・・・
とても厳しそうに見えるし、実際厳しい方でしょうけど
(諦めない限り力になる、なんて凄い殺し文句よね)
仲良く、、、は難しいかも知れないけど
良い関係は築けそうで良かった。
「はい、頑張ります!」
グッと拳を握り込むと
「淑女は握り拳など致しません、以後控える様に」
ピシャリと言われる
(うん・・・、頑張ろう私)
「はい、ロッテ先生、よろしくお願いします」
「リリアンお嬢様、マイヤールと」
「あ、はい・・・」
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因みに、学園は王都に在ります
12歳で入学、18歳で卒業の全六期を勉学に務める貴族学園です。
理想は入学前に六期分の勉強を終わらせたいですね
それなら学園に行く意味が無いように思われますが
貴族が集まる学園なので、将来も考えると「社交」も大切な要素です。
勉強に時間を割く必要が無いので、人間関係に専念出来ますし
何より本命は、空いた時間を子爵領運営に使いたいと思います。
正確には、お父様にちょっとした口出しと小金稼ぎですが
この二年間で知った我がモブラック子爵領、結構良い条件が揃っています。
国の端に位置し、自然豊かな田舎、だだっ広い草原が自慢!
一見、田舎オブ田舎と思われますが、ところがどっこい!
山が有ります、山から川が伸びています、広大な草原と森が有ります。
ええ、資源の山ですね。
何より水源を押さえているのが強いです
そんな資源が有るのに手付かずなのは、開発に回す資金が確保出来ないから
お父様は新しく事業を始めるのは不得意のようですが、現在安定して領地を治めている手腕は本当に素晴らしいです。
無難、普通、最高の誉め言葉だと思いますわ。
さし当たっては治水と街道整備を提案したいですね
川は数年に一度の周期で小規模に氾濫している為、放っておけません。
街道整備は現代でも最重要の課題、物流の安定と高速化の為です。
因みに私リリアン、今領地を出て王都、王城に来ています。
決して馬車の道程、乗り心地が最悪でお尻が痛くなったから、とかそういう理由ではありません!
ええ、お尻が擦れたとかそんな個人的な理由では、決して!
資金確保は割と上手く行く自信がありますので
今後、少しずつ実行して行きます。
取り敢えずは今、王城の用事を無事に乗り切りたいですね
実は貴族の子息令嬢は五歳になると、王城でお披露目兼顔合わせをする事になっています。
デビュタントは15歳なのに、不思議!
お披露目会、何事もなく終われば良いなあ・・・
これフラグかしら?
自分で立てたフラグに後悔するのは、この後直ぐである。
話、動きます。