モブ、踊る。
という事で、ルーク義兄様とダンスの練習会です。
国王陛下とダンス、もう笑うしかありませんね?
前回ヴィルヘルム様にも言われたけど、国王陛下と踊れる人間って数える程しか居ないわ、実母のラファエル義母様、妻であり王妃のエリザ義姉様、・・・・・・、ラファエル義母様とは多分踊る事は無いでしょうから実質はエリザ義姉様のみね。
あら、これ自体がルーク義兄様の嫌がらせじゃない?
いえ嫌がらせと言うと語弊があるのだけど、実際箔を付けるには最高位のものなのだけど
「国王と踊れる者など基本的には1人だけだ、大変だな?義妹よ」にやにや、まで見えたわ・・・
さて、ルーク義兄様と踊りながら
「国王と踊るなど王妃をおいて他には居ない、舞踏会以降どうなるだろうなリリアン?」
ほらね、ほらね!
「ルーク義兄様、いじわる・・・」
「はははっ、最高級の箔だぞ!存分に楽しむがいい」
この人本当にヤダー、最上級の恩を売りながら人を弄るのだもの!
「もう、他にもやりようがあったでしょうに」
「なんだ、いい案が有るなら教えてくれ」
「いえ、それは直ぐには思い付きませんが・・・」
「なんだリリアンは頭がいいからな、リリアンが思い付かないなら俺にも皆目見当がつかない」
本当になんなのこの人!人を上げながら下げるなんて私の手に負えないわ、ちょっとヴィルヘルム様助けて!
チラっとヴィルヘルム様を見ると、遠い目をしながら悟ったように首を横に振ってます。
あっ、無理なのね・・・
「ルーク、あまり構うと嫌われますわよ」
とエリザ義姉様から助け舟が、エリザ義姉様!ありが、
「リリアンはわたくしのものよ、ルークにはヴィルが居るでしょう」
たくない!おもちゃの取り合いのように人を言わないで!
この夫婦何なの!猫被ってましたね、これまで。
とんだ狸と狐じゃない、もー!
「エリザ義姉様、本音・・・」
「あら、ほほほほ!」
「しかしリリアンは器用だな、何でも出来る」
「器用貧乏ですわ、色々と興味を持っていたらこうなってました」
「十分だ、ダンスもこれだけ踊れるなら練習は必要無かったか」
いえ、それは心の準備が間に合わないので有難いです、私の心身の安定の為にも・・・
「小心者なので練習は助かりますわ」
「まあ、俺も楽しめたから無駄ではないか」
ええ、でしょうね・・・
がくりと肩を落とすリリアンであった。
私は休憩、ルーク義兄様は執務があるので帰って行きました、ヴィルヘルム様とエリザ義姉様のダンスを見学してみると、羨ましいわ・・・
ヴィルヘルム様の体格は言わずもがな、ガッシリした身体に高い身長、対してエリザ義姉様も身長高めで2人がダンスを踊ると画になるわね。
身長のバランスが良くて、本当に羨ましい
これまで出来る事は出来るだけ努力して来たけれど、身長ばかりはどうにもならないものね、ヴィルヘルム様とのバランスを考えると私もう少し身長伸びてくれないかしら?
ふぅ、とリリアンは小さなため息を吐いた。
「リリー」
帰りの馬車の中、ハッとしながらも何とか取り繕い
「ごめんなさい少しボーっとしてたわ、何、ヴィー」
婚約者の些細な変化を見逃すヴィルヘルムではない、いつもとは違う様子を見せるリリアンに聞く
「先程から、いや俺と義姉上が踊り始めた辺りから様子がおかしい、ため息も吐いていたな、何か気になる事があったのか?
それとも兄上と何か有って言えない事でもあったか、本人に言い難い事なら俺から言っても・・・」
「あ、違うの、ルーク義兄様は関係ないわ、ただ」
「ただ?」
「ヴィーとエリザ義姉様のダンスが画になるな、と思って、私、小さいから・・・」
ヴィルヘルムはどうやら深刻な問題ではないと安心するも、リリアン本人は気に病んでいる様子で気を緩める事は出来ない。
(悩みの重さは本人にしか分からない事もあるからな・・・)
「リリー」
「私、我儘ね、身長なんてどうにもならないのに」
「我儘なんて、」
「・・・」
「リリー、おいで」
「?、何?」
訝しげにしながらも距離を詰めようと近付いて来たリリアンをグッと抱き寄せるヴィルヘルム
「え、えっ?ヴィー?」
困惑気味に見上げて来るリリアンを腕の中に閉じ込める
「リリー、君が身長を気にする事は君自身が納得しなければ解決出来ない事だ、でも俺はなリリー、俺の腕の中に収まるリリーをとても愛しいと思っているんだ、いつまでも俺の腕の中に居て欲しい」
と俺は思っている、想いを伝える。
彼女は意外そうに目をぱちぱちと瞬くと
「うん、、、うん・・・、私もヴィーの腕の中が大好き、暖かくて、力強くて、安心するの、抱き締められるのが好き」
知ってた?と聞いてくる彼女に
「ああ、知ってた、リリーから良く抱き着いて来るからな」
「うん、私ね小さい頃、お母様に抱き着いて、胸の中でそのまま寝ちゃったり、お兄様に優しく撫でられながら抱き締められるのが本当に好きで・・・」
「ああ」
「ヴィーがそうしてくれるなら、このままでも良いかな、なんて」
ジッと見つめて来る彼女を愛しいと思わずにいられる訳がないヴィルヘルムは
「ああ、いくらでもそうするとも」
と、優しく抱き締める。
「ありがとう、ごめんなさい、こんな事で困らせて」
えへへ、と照れながら笑う彼女は、いつもとは違う珍しい歳相応の表情に少し驚く
「リリー、君は子供ではない、だがまだ大人でもない、いくらでも甘えていい、俺は頼れる旦那様だからな」
ニヤリと笑う。
「ふふ、ありがとう旦那様・・・」
穏やかな返事が来て安心する
暫く無言で抱き合っていると、静かに寝息が聞こえて来る
(ダンスの疲労と兄上との気疲れ、大人びていると言っても彼女はまだ13歳だ、ふとした時に不安が顔を出す時もあるだろう、俺が助けねばな)
ヴィルヘルムがリリアンを見つめる目は、どこまでも優しい目をしていた。




